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【いま読む日本国憲法】

(7)第13条 人権の大きな土台 自民草案では表現弱める

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 国家権力から個人の権利を守るという理念に立った日本国憲法は、思想及び良心の自由、学問の自由、奴隷的拘束からの自由など、さまざまな人権を定めています。その大きなよりどころと言えるのが一三条。憲法の根幹であり、最も大切な条文だという人は少なくありません。

 「すべて国民は、個人として尊重される」という文章は、考え方も生き方も違う人たちが互いに個性を認め合い、一人一人がかけがえのない存在として尊重される社会を目指そう、という宣言にほかなりません。その土台となる包括的な人権規定として、生命、自由と幸福を追求する権利を挙げ、「最大の尊重」を求めたのがこの条文です。

 自民党の改憲草案では、「個人」が「人」に変わっています。大差がないように見えますが、この変更には、現行憲法は個人主義を助長しているからよくないという視点があります。多様性を大切にする個人主義より、国家や国益を重視する考え方と言えます。

 また、草案は一二条と同じく「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に変えました。社会の秩序を守るという名目で、国家が人権を制限できる余地を残したように読めます。「最大の尊重」を「最大限に尊重」に変えたのも、弱い表現に後退したように見えます。

 一三条は、「新しい人権」と呼ばれるプライバシーの権利や環境権などを憲法に加える「加憲」論でも、よく引き合いに出されます。

 加憲を主張する人たちは「新しい人権は、一三条の幸福追求権にも含まれない」として新たに規定するよう求めていますが、加憲に慎重な人たちは「プライバシー権や環境権は、幸福追求権を根拠に認めることができる」と訴えています。

◆自民党改憲草案の関連表記

 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

 《用語解説》

 プライバシーの権利=安心して暮らすため、自分の個人情報をコントロールする権利

 環境権=人間らしい生活に必要な環境を維持するための権利

 

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