食品ロス 地域や学校から削減を
2020年度までの「第3次食育推進基本計画」が今年度から始まった。重点課題として、伝統的な食文化の継承などとともに「食品ロス」の削減を掲げた点が目新しい。食べ物を粗末にするのは、世界の貧困や飢餓につながる重い問題でもある。一人一人が関心を持ち、身近なところから取り組みたい。
食べられるのに捨てられる食べ物は、農林水産省の推計によると国内で年間642万トン(2012年度)。飢餓の解消に向けた世界の食料援助量を大きく上回っている。
食べ残しや賞味期限切れなどによる廃棄が積もり積もった結果だが、スーパーやコンビニ、外食産業だけが発生源ではない。食品ロスの半分は家庭から出ているのが実情だ。
京都市が過去に家庭の生ゴミを調べたところ、手つかずの食品が22%もあった。そのうちの4分の1は賞味期限前の食品で、賞味期限後1週間以内も約2割あった。パンや菓子、調味料などが多かった。
こうした状況を変えようと、基本計画は「食品ロスの削減に何らかの行動をしている人」を直近の7割弱から5年間で8割以上にする数値目標を掲げた。機運を高めるには、関連する業界だけでなく、地域や学校、家庭の役割が欠かせない。
参考にしたい事例がある。
環境省は、昨年度から学校給食の食べ残しを減らす事業を始めた。全国調査で小中学校の給食での食べ残しは児童・生徒1人1食当たり約35グラムと、外食の倍以上もあるとわかったからだ。札幌市や長野県松本市などをモデル地区に指定し、食育・環境教育が、食べ残しや意識に変化をもたらすかどうかを検証した。
授業で途上国での食料不足や食のリサイクルなどを学んだり、みそ作りをしたりした成果は、予想外に大きかった。食べ残しが3割減った学校があったほか、「食べ物への感謝の気持ちがわいた」「家族と話し合い、食品ロス削減を心がけている」といった反応もあったという。
福井県が全国に先駆けて10年前に始めた「おいしいふくい 食べきり運動」も興味深い。
県内の飲食店など1000店以上の協力を得て、「小盛りできます」との表示や、食べ残した料理の持ち帰りへの積極的な対応をしてもらっている。また、企業やホテルなどに「宴会では開始30分、終了10分など、席を立たずにしっかり食べる時間を作ろう」と呼びかけるなど、さまざまな場面での意識付けを促している。
食べ物の廃棄に、私たちはつい無意識になりがちだ。だが、裏返せば改めるのは難しくないということでもある。できることはないか、そう考えることから始めたい。