口が臭いと悩んでいる人は、とても多いです。中には「口が臭い」と思い込んでいるだけで、実際には臭くない場合も。口が臭いことで仕事に影響したり、対人関係がうまくできない事で引きこもりなど、社会生活が難しくなってしまうこともあります。
口臭の原因は様々ですが、実は口の中が乾き、痛みなど様々な症状が現れるドライマウスでも、口が臭い場合があります。ドライマウスについて原因や症状、改善法をお伝えします。
ドライマウスとは
口の中が乾いている状態です。成人では一日におよそ1.5㍑分の量が分泌されている唾液が、口の中の潤いを保っています。何らかの原因で唾液の量が減ると、口の中が乾燥して痛みや違和感などが現れます。口臭が気になる人も少なくありません。
中高年を中心にドライマウスに悩んでいる人が増加しており、全体の8割~9割を女性が占めています。
ドライマウスは口臭や虫歯が起きやすい
唾液には口の中の細菌の増殖を抑える働き(抗菌作用)があります。唾液が減るとカンジダというカビの一種の真菌だけでなく、細菌も増加し、口臭が強くなったり虫歯になりやすくなったりします。
虫歯もトラブルのひとつ
悪化するまで自覚症状が乏しい虫歯は、ドライマウスの症状としてはあまりあげられませんが、ドライマウスによるトラブルの一つです。唾液の減少は、虫歯になりやすい環境を作ります。
唾液には抗菌作用の他にも、
- 食べかすや歯垢を洗い流す
- 口の中の酸を中和して虫歯を予防する
- 歯の表面を修復する再石灰化作用
などの働きがあるからです。
自分でできるドライマウスの改善法
ドライマウスの症状の緩和には、
- 人工唾液
- マウスピースの装着
- 市販のケア用品の使用
- 唾液腺の刺激
などが効果的です。自分でできる改善法は
- ドライマウス用のケア用品を使う方法
- 日常生活でできること
を行ないます。
ケア用品
- マスク: 唾液の蒸発を防ぐ
- スプレーやジェル: 口の中に潤いを補給する(外出時にはスプレーが便利)
- マウスウオッシュ(洗口液): 刺激が少なく保湿剤が配合されている
などをシーン毎に使い分けると便利です。
ジェルの効果的な使い方
ジェルは唾液腺を意識して使いましょう。主な唾液腺は
- 耳下腺(耳の付け根辺り)
- 顎下腺(下顎の後方)
- 舌下腺(舌の下)
- その他、唇の内側や頬の内側などにも小さな唾液腺が分泌しています
以下の手順で、3分間ほどかけて口の中にしっかりと塗りこむと、舌下腺などの唾液腺を刺激するので、粘膜を丈夫で滑らかにする効果が期待できます。
①舌に塗る
手の指にジェルをとり、舌の奥から手前に向かってジグザグに動かす。次に奥から手前に向かってたてに指を動かす
②口蓋に塗る
指を左右に動かしたり、歯茎の裏側を撫でるようにして動かし、口蓋の粘膜にジェルを塗る
③舌の下に塗る
舌を持ち上げて、舌の下の粘膜を優しく刺激し、舌下腺を刺激する
※舌下腺は唾液腺の中で最も大きく、唾液を分泌する能力が高いので高い効果を得られる
④頬の内側に塗る
反対の手を頬に添え、指で頬の内側の粘膜を、上の歯茎から下の歯茎にかけて大きくなで、口の中の小さな唾液腺を刺激する
⑤唇と歯茎の境目に塗る
唇と歯茎の境目を指で撫でながらジェルを塗り、唾液の分泌を促す
注意:顎下腺は誤って頸動脈を刺激してしまうことがあるので、刺激しない。
日常生活でできること
顎を動かすことも唾液腺の刺激になるので、食事は硬いものをしっかり噛んで食べることを心がけます。「入れ歯があわなくて硬いものが食べられない」場合は、歯科でしっかり噛める入れ歯を作ってもらいましょう。
自律神経のバランスを整えることも有効です。唾液腺は自律神経によって分泌調整されています。リラックスすることを心がけたり、規則正しい生活を送ることも大切です。
ドライマウスの症状と原因
自覚症状で最も多いのは
- 口やのどの乾燥
です。その他に
- 痛み
- ネバネバ感
- 違和感
- 味覚障害
- 口臭
などがあります。
原因には
- 口腔カンジダ症(痛みの原因)
- 唾液の蒸発
- 唾液の分泌低下
などがあります。
唾液腺分泌量に影響するものには、年齢、性別、唾液腺の炎症や腫瘍、シェーグレン症候群、糖尿病などの代謝性疾患、栄養障害、薬物の服用、情緒的因子などがあげられます。
口腔カンジダ症
カンジダはカビの一種で、誰の口の中にも存在している真菌です。普段は問題を起こすことはありませんが、唾液が減少するとカンジダが増加し、粘膜に炎症が起こりやすくなって下や粘膜が赤くなります。
口の中の「ヒリヒリ」「ピリピリ」する痛みは抗真菌薬の内服で治療できます。口の中の痛み、下や粘膜が赤くなる、と言った症状がある場合は、歯科や口腔外科を受診してください。
唾液の蒸発
口呼吸をしていませんか。唾液が蒸発しやすく、口の中が乾きます。口呼吸の主な原因には
- 鼻の病気(鼻炎、慢性副鼻腔炎など)
- いびき
- 歯ぎしり
などがあります。いびきや歯ぎしりがある場合は、歯科で口蓋(口腔内の上の壁)を覆う形のマウスピースを作ってもらうと良いでしょう。歯ぎしりや口の中の乾燥を防止するためのもので、口蓋に装着します。口蓋から分泌される唾液の蒸発を抑えます。7~8割の人にドライマウスの改善が見られます。
唾液の分泌低下
- 加齢
- 病気
が原因で唾液の分泌が低下しても口の中が乾きます。
【加齢】
主な原因が加齢です。唾液を分泌する細胞も少しずつ減少してくるために、唾液の量が減ってきます。
- 強いストレスを受けている時
- 更年期
には自律神経の働きが乱れることから、唾液の分泌が減ります。
【病気】
- 抗うつ薬や抗アレルギー薬、降圧薬などの副作用
- シェーグレン症候群*の症状
として唾液の分泌が減ることがあります。
病気などが原因の場合は、薬の量と種類の調整、病気の治療でドライマウスが改善することもあります。
*シェーグレン症候群は自己免疫疾患で、難病に指定されています。ドライマウスと同じような症状が現れますが、シェーグレン症候群の診断には、膠原病内科、眼科、あるいは口腔外科を受診し、血液検査、唾液・涙液分泌量計測、シンチグラフィ、病理組織検査など色々な検査を受ける必要があります。
公益財団法人 難病情報センター | シェーグレン症候群
泡状の唾液
唾液が泡立つようなネバネバした感じがある場合は、注意が必要です。唾液が出てくるというより むしろ減少し、唾液の性状が変わってきたのかもしれません。
唾液を分泌する組織は大きなもので3つあります。耳下腺、顎下腺、舌下腺で、それぞれ分泌される唾液の性状は異なります。
- 耳下腺からはさらさらとしたもの
- 顎下腺からはわりと粘稠なもの
- 舌下腺からは最も粘稠な唾液
が出てきます。また、最も多く分泌されるのは耳下腺、少ないのは舌下腺です。
唾液腺は自律神経(交感神経、副交感神経)によって分泌調整されています。興奮したり、食事の時は唾液の分泌量は増加しさらさらした唾液になり、寝ている時は分泌量は減少し粘稠なものになります。
なんらかの原因で耳下腺からの唾液分泌が減少すると、顎下腺、舌下腺からの粘稠な唾液成分が多くなり、唾液の流れが悪く、泡状になってきます。
食事の時や会話している時のように、交感神経優位になっている時は、耳下腺からの唾液分泌が増加し、さらさらの唾液になると考えられます。
まとめ
多くの人が悩んでいる口臭。口臭予防のケア用品なども様々な商品が市販されています。口臭の原因は様々ですが、あまり知られていないのがドライマウスによる口の臭い。口が乾燥する、ピリピリするなどの症状があったら、歯科や口腔外科を受診しましょう。
加齢のほかに、ストレスや喫煙、アルコールなども原因となります。口が乾き、口臭が気になるときは、生活習慣も見なおすことが大切です。
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