※下記はベンチャー通信62号(2016年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
役職や年齢に関係なく変革を進められる風土
― ニトリには創業から48年の歴史があります。それをすべて否定するようなアイデアを出しても、抵抗が大きいのではありませんか。
いいえ。そんなことはありません。アイデアを出したヒトの役職や年齢に関係なく、「それはお客さまのためになることなのか」「住まいの豊かさを世界の人々に提供するというロマンの実現に近づくことなのか」だけを基準に判断される風土があるからです。
ニトリには、「担当者」「マネジャー」「経営層」という3つの階層しかありません。そして役職や年齢にかかわらず、お互いを「さん」づけで呼ぶ。体制的にも風土的にもきわめてフラットな組織になっています。
もっとも、私だけは「社長」と呼ばれる。べつに私が偉いわけじゃない。社員が「にとりさん」というと、自分の勤務先を「さん」づけしているみたいで、おかしいから(笑)。
― そうしたフラットな組織をつくりあげた裏にある、似鳥さんの経営哲学を聞かせてください。
「なによりもお客さまのために尽くす」。その一念です。硬直的な組織では、お客さまよりも社内のことを気にするケースが出てきてしまうもの。私自身、商売を始めたころは、毎月の売上や利益を前年同月より増やせるかどうか、そればかりを気にしていました。でも、そんな思いはお客さまに伝わってしまう。
お客さまが店に来て、商品や接客を見る。それだけで「この店は客のことなどあまり考えていないな」とわかってしまう。なにも買う気になれないし、たとえ買ってもらえてもリピートは絶対にありえないでしょう。
だから業績が伸びず、「もはや倒産か」と追い込まれ、自殺すら考えた時期もあったんです。でも、そこで米国視察ツアーに参加する機会を得て、会社を大きく発展させる原動力となるロマンをもつことができた。運がよかったんですね。そこから業績を伸ばすことができました。
― そこで得たものはなんでしたか。
「唯一の正義は、お客さまの不平・不満・不便を発見して、解決すること」です。価格なのか、品質なのか、機能なのか。なにかひとつでもいいから問題を解決し、誰もやったことがない新機軸を打ち出して、お客さまにトクをさせる。自分がもうけるより前に、お客さまにもうけさせれば、お客さまは自然と来店してくれるようになる。私はこれを「ブーメラン現象」と呼んでいます。
伸びしろの大きな組織でケタ違いの成長を体感しよう
― 最後に、進路に悩む学生にメッセージをお願いします。
伸びしろの大きな組織を選んでほしい。硬直的な組織では、会社を2倍・3倍に大きくすることは困難です。それに対して、伸びしろの大きなベンチャー企業や、大規模であっても柔軟性の高い組織であれば、10倍・100倍に発展させることができます。そうしたダイナミックな成長の過程を経験することで、人もまた飛躍的な成長を遂げることができます。
挑戦意欲のある若い人には、ぜひケタ違いの成長を味わって、大きく羽ばたいてほしいですね。
■ 似鳥 昭雄(にとり あきお)
1944年、樺太(現:サハリン)生まれ。北海道で育つ。1966年に北海学園大学経済学部を卒業後、父親が経営するコンクリート会社に入社するが間もなく退社。1967年に家具店を札幌市に開店。1972年に似鳥家具卸センター株式会社(現:株式会社ニトリホールディングス)を設立。同年に米国を訪問、「欧米の住まいの豊かさを日本に提供する」というロマン(志)を確立。チェーン展開を加速し、1989年に札幌証券取引所に上場、2002年に東証一部上場。2010年に持ち株会社へ移行。アジアを中心とする世界の学生を支援する似鳥国際奨学財団の代表理事を務める。著書に『運は創るもの』(日本経済新聞出版社)。
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プロフィール
- お名前似鳥 昭雄
- お名前(ふりがな)にとり あきお