2016-05-11
■全てのエンジニアはこれを読んで泣け! 
今日は出張である。
京都に出張して副知事のだれそれという方に会うのである。
向かう車内で、昨日から読み始めた本を読んで、あまりにもアツいので途中ではあるが、あまりにもアツい一節を引用する
彼は東京帝国大学の航空学科出身で、戦争中は中島飛行機のエンジン設計者だった。戦闘機は人を殺す道具ではあったが、そのジレンマに目をつぶれば、もっともすぐれた機械をつくっているというエンジニアとしての自負心を満足させることができた。彼はクロガネにいたとき、最後の一、ニ年は設計責任者として四輪車も手がけたが、結局量産するには至らず、あとは不格好なオート三輪をつくっただけであった。彼はクロガネで働いているときから自動車レースにあこがれていた。レーシングカーには、飛行機に似た無駄を一切取り払った機能美があると思っていた。
彼はいろいろ考えたすえに、本田宗一郎の面接を受けることにした。しかし彼はオートバイだけのホンダなら入社するつもりはなかった。彼があこがれていたのは四輪の自動車レースだった。彼は面接の席で本田宗一郎にたずねた。
「ホンダは四輪をおやりになる気はありますか?」
「あるよ」
と本田宗一郎は言った。
「それでは、F1をおやりになる気はありますか?」
本田宗一郎は目の前の無礼な男の顔をみてしばらく考えこみ、やがてぶっきらぼうな調子でいった。
「できるかできないか知らんが、おれはやりたいよ」
中村良夫はほどなくしてホンダの四輪研究開発舞台の責任者になった。ホンダには、他に四輪自動車のことを知っている人間がいなかったからである。
F1への挑戦は目の前に迫っていた。
ホンダがF1に挑戦する、まさにその瞬間のできごとである。
正直に言うと僕はレースに興味が無い。どの車が速いだとか、誰がうまく運転するかとか、そういうことには全く興味が湧かない。
そしてホンダの車にも興味が無い。いいとも悪いとも思わない。ただし、ホンダのチャレンジ精神だけは、いつも同じエンジニア出身の経営者として(と、言うのもおこがましいが)、胸をアツくさせるものを感じる。
もうひとつ引用しよう。
ホンダがオートバイレース最高峰のマン島ツーリングトロフィーレースで一位から五位を独占するという快挙を成し遂げた時の英国デイリー・ミラー誌の記事の引用である。
日の昇る国ジャパンは、マン島ツーリング・トロフィーレースで125cc、250ccとも一位から五位までを獲得し、その輝かしい成績をT・Tレースの歴史の上に残した。マン島ではたった三度しか出場したことのない日本のメーカーが、いかにしておどろくべき成功をなしとげたのか?
われわれは日本の車をバラしてみた。われわれはおどろいた。車は腕時計のように作られていた。そしてそれは、何もののコピーでもなかった。
当時、日本の工業製品はコピー天国である。
今は名だたるメーカーとなっている会社も、海外製品のデッドコピーを作り、安かろう悪かろうが横行していた時代。
日本の自動車メーカーも例外ではなく、エンジンもシャーシもまるごと海外製品のデッドコピーの自動車を平気で売っていた。
しかし、ホンダだけは違った。
本田宗一郎な文字通り叩き上げられた久米是志や川本信彦は、くちをそろえていっている。
「おやじさんは、人と同じものをつくるのを徹底していやがった。いつも独自のもをつくって、おれっちのつくったものはよそのとはちがうと誇示したがった」
つねに新しいものへの興味と冒険心に満ちあふれていたのである。そのために彼は成功もし、失敗もするのであるが、その個性を最初に発揮してホンダを成功に導いたのはオートバイのエンジンを2サイクルエンジンから4サイクルエンジンに転換したことであった。1951年のことである。
さらにホンダは、摩擦ロスを減らすため、当時単気筒か2気筒が常識だったオートバイのエンジンを多気筒に増やすという大胆な決断をする。
しかしあまりに複雑な機構のため、国内レースで海外メーカーのデッドコピーを作る他の国内メーカーに負けてしまう。それでも本田宗一郎は考えを変えなかった。
「当社のオートバイは、すべてホンダ独自の研究と開発から生み出されたものであり、この積み上げた貴重な財産は必ず花の開くときがくる。他メーカーで先進外国製品のフルコピーに近いものがあるが、当社では絶対に他の模倣はしない。どんなに苦しくとも、自分たちの手で世界一をめざすつもりだ」
本田宗一郎の弁である。
そしてホンダがついにマン島レースに初出場したとき、久米是志はこう回想している
「外国のバイクはだいたい4サイクルがおもでしたが、みんなどでかい単気筒か2気筒で、うちみたいな精巧な多気筒型のエンジンはどこにもなかった。外国の連中はうちのエンジンをみて、みんなオートバイで4気筒なんて、そんなバカなものはみたことがないという顔をしていた」
そしてホンダは出場三回目にして1位から5位を2クラスで独占するという世界初の快挙を遂げるのである。
アツいなあ。どこをとってもアツい。
そしてこういうアツさが、本来、いまの世界の最先端であるコンピュータに関わるエンジニアにももっとあるべきでないか。
元気がいいのは國光くらいで、彼は起業家であってエンジニアではない。もっとエンジニアがアツくなるべきだし、もっと胸を焦がすような仕事をみんなでやるべきだ。
海外勢を打倒し、世界一を目指す。
エンジニアとして、それほど誇らしい仕事があるだろうか。
とにかく、あまりにも面白いのでぜひ読んで欲しい。
- 作者: 海老沢泰久
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