熊本城修復 福島から「城の恩返し」
福島・会津若松の鶴ケ城、白河の小峰城跡関係者が助言
熊本地震で大きく損傷した熊本城の修復に向け、福島県会津若松市の鶴ケ城と同県白河市の小峰城跡の関係者が募金活動や修復への助言を通じた支援をしている。二つの城はいずれも幕末の戦火や東日本大震災(2011年)など苦難を乗り越えた経験があり「城の復活は復興のシンボルとなる。少しでも恩返しできれば」と願う。
鶴ケ城を管理する一般財団法人「会津若松観光ビューロー」は4月中旬、天守閣と観光案内所に熊本城への募金箱を設けた。茨城県牛久市から観光で訪れた宮瀬小夜子さん(81)は「熊本城の今の姿は見るに忍びない」と募金に協力した。地震で熊本在住の親戚が避難したという。
鶴ケ城は、戊辰戦争時、新政府軍の砲撃で壊滅的な被害を受け、石垣を残して取り壊された。往時の姿を取り戻そうと市民からの寄付などで1965年、現在の天守閣が落成し、観光客でにぎわうようになった。
しかし、福島第1原発事故による風評被害で観光客は激減。2013年のNHK大河ドラマ「八重の桜」で再び注目され、客足が戻りつつある。「熊本城が戊辰戦争後の鶴ケ城の姿と重なり、どうしても力になりたい」とビューローの担当者。募金は6月7日にいったん締め切り、熊本市に届ける。
国史跡・小峰城跡は東日本大震災で10カ所の石垣が崩れ、築石(つきいし)約7000個が落下した。11年12月から50億円をかけて修復作業が進んでいる。熊本地震直後、小峰城跡を管理する白河市に熊本市の担当者から「どうしたらいいでしょうか」と電話があった。白河市の担当者は経験を踏まえ「余震が落ち着いたら、崩落など被害状況を丁寧に記録することが後の修復に役立つ」と助言。その後も熊本市から被害状況を聞いて支援策を検討している。
小峰城跡の修復には市の呼び掛けに応じた個人や観光客などから1億8000万円以上の寄付金が集まった。鈴木功・市都市政策室長は「今度は福島が支える番」と協力を惜しまないつもりだ。
小峰城跡の修復に携わり、熊本城の保存などに関する熊本市の委員も務める東北芸術工科大の北野博司教授(考古学)は「城は地元の人にとって日常の一部だ。大災害を経験した福島の人が熊本を支援することは意義深く、心強い」と話している。【岸慶太】