これは僕が小学生だった頃のお話。
授業が終わり家に帰ったのだが、そこで体操服を持って帰るのを忘れた事に気が付く。
幸い、家は小学校からそれほど遠く無かった為、僕は教室に体操着を取りに戻る事にした。
教室に入ろうとすると誰かいる事に気が付く。
誰だろうと思い見てみると、それはクラスメイトのA君だった。
A君はキョロキョロと周りを見渡し、何やら警戒してるみたいだった。僕はどうしたのだろうと教室に入るのためらい、A君の様子を伺っていた。するとA君は、Yさんの机の前で立ちどりまり、何やら考え込んでいた。
時間にして15秒くらいだっただろうか。A君はおもむろにYさんのリコーダーを手に取る。
ま、まさか・・・。いや、A君に限ってそんな事・・・。
と、受け入れがたい現実を拒否しようとした矢先、彼は衝撃の行動をした。
そんな馬鹿な・・・
これはド
ドの音を奏でている。
それも自分のリコーダーではなく、Yさんのリコーダーを使ってドの音を奏でている。
彼はYさんの事が好きだったのか。衝撃の事実だ。
そんなそぶり一切見せて居なかったはず。僕は友人の恋愛関係は把握していたはずだったが、情報網から漏れていたのか。もう一度、近辺の再調査をしなればならないと、そう思っていると、A君は再び行動を開始する。そしてNさんの机の前で立ち止まる。
ま、まさか・・・。
いや、いくらなんでもそんな事起こり得るはずが・・・
ドだ
彼は再びドの音を奏でている。
しかも今度はNさんのリコーダーを使ってドの音を奏でている。
なんということだ・・・
彼は・・・
リコーダーマニアだったのだ。
それも中古のリコーダーマニア。
なんという衝撃の事実。
僕はこれからどうやって彼に接すればいいと言うのだ。むしろこの事実をYさんとNさんに打ち明けるべきか?いや、そんな事をすれば彼は確実にハブられてしまう。下手をすればいじめに発展しかねない。じゃあ彼自身に打ち明けるべきか?
僕「YO!女の子のリコーダーで奏でるドの音は最高か???」
いや、駄目だ。そんな事をすれば彼の心を粉々に打ち砕いてしまう。下手をすれば不登校に発展しかねない。
廊下に隠れて彼が帰った後も僕は悩んでいた。いったいどうすればいいのか。この事を打ち明けることはできない。かといって、このまま翌朝彼女たちがリコーダーを使ってしまうのも心が痛む。
そこで僕は彼女たちのリコーダーを水道水で洗う事にした。要はコップと一緒なのだ。誰かが使っても、洗いさえすれば違う人が使える。だから僕は彼女達のリコーダーを一生懸命洗って、元に戻しておいた。
僕は、帰り道の途中で、いつもは大人しいA君の衝撃の事実をどう受け止めればいいのか、明日以降どう彼に接すればいいのか、本当に皆にこの事を言わなくて良いのか、様々な思いが交錯する中、当時小学生だった僕はふと思ったのだ。
名探偵コナンの連載はきっと中々終わらないだろうな・・・と
小学校のクラスメイトが同級生の女の子のリコーダーを吹いていた話
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