[PR]

 被爆地の願いがようやく届いた。71年前に広島、長崎に原爆を投下し、いまも約7千発の核兵器を持つ米国。その現職大統領バラク・オバマ氏が27日、初めて広島を訪問することが決まった。「核兵器なき世界をめざす」としたプラハ演説から7年。核廃絶の動きがしぼむ中、オバマ氏はヒロシマからどんなメッセージを発するのか。

 「決断を歓迎したい」。広島で被爆した土屋圭示さん(88)=岡山県笠岡市=は、オバマ大統領が広島訪問を決めたことを素直に喜んだ。

 米軍のB29爆撃機が原爆を投下した1945年8月6日の朝、土屋さんは陸軍の水上特攻隊の訓練中だった。敵艦に突っ込んで失うかもしれなかった命はつないだ一方で、米国への憎しみも募った。

 12年前に急性肝炎やがんを患った。「助かった命を無駄にせず、子や孫たちの役に立ちたい」。土屋さんは核不拡散条約(NPT)の再検討会議などに合わせて米国へ計4回渡り、被爆体験を語ってきた。

 オバマ大統領が広島でどう行動し、何を語るのかは分からない。「キノコ雲の下で何が起きたのか。その脅威を肌で感じ、ノーベル平和賞の受賞者にふさわしい宣言を世界に発信してほしい」。土屋さんは願う。