【萬物相】科学的根拠に欠ける「犯罪者タイプの顔」

【萬物相】科学的根拠に欠ける「犯罪者タイプの顔」

 2009年、韓国で女性7人を殺害した容疑でカン・ホスンが逮捕されたとき、人々は二度驚いた。犠牲者たちの首を絞めて殺し、遺棄した残忍さに驚愕し、善良そうな顔立ちにまたしてもぞっとした。公開された写真の中の彼は割と整ったルックスで、犬を抱いて朗らかに笑っていた。殺人劇を終えると彼は平凡な30代の青年に戻り、家畜を育て、スポーツマッサージ師としての仕事をこなしていた。隣人たちは「親切でまじめな人だった」と口をそろえた。誰も彼の悪魔のような一面に気付くことができなかった。

 カン・ホスンを見て、人々は「貴公子タイプの連続殺人魔」テッド・バンディを思い浮かべた。ハンサムなルックスを利用し、1970年代に米国で30人以上の女性を殺害した殺人犯だ。大学を出た彼はけが人を装って女性に近づき、関心を引いた上で次々と息の根を止めた。刑務所から逃亡したり、収監中に自身を慕う女性と結婚したりもした。だが結局は電気いすに座って生涯を閉じた。韓国でも大きく報じられた「やさしい顔の悪魔」だった。

 先日逮捕され、実名や身元が公開された京畿道安山市・大阜島バラバラ殺人事件の容疑者、チョ・ソンホも端正な顔立ちをした30歳の青年だった。ハンマーで人を殴り殺し、遺体を切断するという残忍な行為をしたとは信じ難いほど純粋そうに見える、近所にいそうな青年だ。対人関係も円満で、一時はドッグカフェをまじめに経営していたという。彼は犯行後にも交流サイト「フェイスブック」に10年間の人生プランを投稿し、平凡な男を装った。収支計画と共に「こんな感じなら10年で3億(3億ウォン=約2700万円)可能だろう」とも書き込んだ。

 連続殺人犯や凶悪犯の最も恐ろしい特徴は、平凡な社会の一員のように見えることだ。残忍な犯行を行うため、そうして信頼を得ようとしているのだ。1978年に逮捕され、米国社会に衝撃を与えた「殺人ピエロ」ジョン・ゲイシーもそうだった。ピエロに扮して子どもたちを楽しませるボランティア活動をしていたが、その実は男児や青少年33人を殺した殺人魔だった。

 私たちは「犯罪者タイプの顔」という言葉をよく使う。実際、過去には外見から犯罪者タイプの人間を見分けようとする研究もあった。犯罪学の創始者と呼ばれるイタリアの法医学者、チェーザレ・ロンブローゾは犯罪者の顔立ち、すなわち人相が異なると主張した。囚人の身体的特徴を観察し、大きな耳、突き出たひたいとほお骨、長い腕が犯罪者の特徴だと分析した。凶悪犯罪担当の刑事の中にもこうしたことを信じる人がいるが、どう見ても科学的根拠に欠ける。ひょっとすると、平凡さの中に潜む「悪」の方がもっと恐ろしく、残忍なのかもしれない。

崔源奎(チェ・ウォンギュ)論説委員
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