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第359回(2016年5月9日)

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3.切り札

トランプと言えば、日本人は遊びの「トランプ」を連想します。英語圏では「プレイングカード」と呼ばれています。

英語の「トランプ」の本来の意味はゲームの「切り札」。明治時代、西洋人がカードゲームをしながら「トランプ(切り札)」と発言するのを聞いて、ゲームの名前と勘違いしたのが名前の由来だそうです。

余談ですが、トランプ(カードゲーム)の起源はエジプト説、中国説など諸説ありますが、現在では中国説が有力。

古代中国に「葉子」というトランプの一種があり、これが欧州に伝わったとする説。中国からイスラム圏に伝来し、復員十字軍兵士等によって欧州に伝えられたようです。

日本伝来は室町時代末期。鉄砲等とともにポルトガルから伝来。ポルトガル語の「カルタ(英語のカード)」を音写して「かるた」。つまり「カルタ」は元々「トランプ」でしたが、やがて「和製かるた」に進化。

「カルタ」は賭け事(ギャンブル)として認識され、江戸幕府は「カルタ」を禁止。代わって登場したのが「花札」。本質的には同じ遊びですが、規制逃れのために変化しました。

明治時代に入ると禁止令が廃止され、欧米文化の象徴であるトランプは大流行。この頃から「カルタ」ではなく「トランプ」と呼ばれるようになったそうです。

余談は終わりますが、株価や日本経済の「切り札」になるはずだったマイナス金利。手持ちの「切り札」をゲームの対戦相手である市場に見透かされています。

マイナス金利付き量的・質的金融緩和を「近代の中央銀行の歴史上、最強の金融緩和スキーム」と自画自賛して憚らない黒田総裁。「効果を見極めるまでに3ヶ月から半年必要」と言っていましたが、既に3ヶ月。さて「切り札」の効果は如何に。

日銀の次の一手として、無秩序に日銀券や政府紙幣をばらまくヘリコプターマネーも話題になっています。こんなことが話題になること自体、末期的。「切り札」が「最後のカード」にならないことを祈ります。

株高を支えていた有力プレーヤーであった海外マクロ系ヘッジファンドの日本市場からの撤退も本格化。マクロ系ヘッジファンドとは、経済動向や金融政策を分析して株や為替の先物の短期売買を中心に行う外国証券会社等の投機筋。

4月28日の金融政策決定会合前は買い越し基調でしたが、追加緩和見送りが判明すると、即座に株高、円安方向のポジション解消に動いています。

そう言えば、日銀審議委員の「切り札」として就任した某氏。今日の週刊誌で学歴詐称が報道されています。情けないことです。

日頃、醜聞報道にはあまり関心がない方ですが、しかし、今回はそうはいかないかもしれません。某氏が東大に提出した修士論文(学生証番号5005)のコピーを見ましたが、あまりにも酷い。

タイトルは「ケインズ的経済成長の動学的性格、物価変動と貨幣的経済成長」ともっともらしいですが、本文は400字詰め原稿用紙4枚(80行)。

目次で6行使っています。「1.経済成長理論の問題点」「2.ケインズ的短期モデル」「3.経済成長の動学的過程」「4.問題点と今後の研究計画」。タイトルと目次だけ読むとマトモに思えますが、中身には絶句。作文にもなっていません。

「切り札」が効かない日銀の「切り札」審議委員が東大修士号取得の「切り札」とした原稿用紙4枚の作文。この作文で東大が修士号を授与しているとした場合、国立大学としての東大の責任も問われます。

「切り札」が学歴や理論を騙る(かたる)「カルタ(ギャンブル)」のような人材では洒落になりません。

こういう人物が跳梁跋扈することも「日本病」の病根です。自ら身を処すという「切り札」もありますので、「切り札」の「切り札」を期待しましょう。

(了)

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