蹴球探訪
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【首都スポ】鈴木孝幸、見据えるは至高の金 パラリンピック男子競泳2016年5月10日 紙面から
パラリンピック男子競泳の北京大会50メートル平泳ぎ金メダリストの鈴木孝幸(29)=ゴールドウイン、早大出身=。アテネからロンドンまでの3大会で計5つのメダルを獲得した日本を代表するスイマーだ。今年のリオデジャネイロ大会も出場権を獲得し、4回目の夢舞台への準備を進めている。 (シドニー五輪競泳日本代表・萩原智子) 「表彰台での光景が忘れられない。初めに銅と銀(の国旗)が上がっていくのを見ている優越感っていうか。一番高い台に上がって。お客さんもいっぱいいて。満員の観客、それまでにない光景だったので。すごくうれしかったな、気持ち良かったなって」。そう懐かしむように、ほほ笑みながら話してくれた彼の名は鈴木孝幸、29歳だ。 鈴木は先天性の四肢欠損。腕や足の長さは左右に違いがあるが、実にバランス良く水に浮き、プールを真っすぐに進む。スイマーは無重力の水中で体を一定に保ち、バランスをとらなければならない。彼は右手足が左手足よりも短く左右非対称だ。その場合、手足が長い左の力が強くなるため、泳ぎはどうしても右側に曲がってしまう。 しかし、鈴木は、体の軸がブレず、真っすぐ気持ち良く泳ぐ。左右の力の入れ方を調整していて泳いでいるのかと聞いてみると「左右の力の入れ方ですか? 調整してないですよ。小さいころから目で見て調節しています。いつも腕も足も全力ですよ」と話してくれたが、私は彼の器用さに驚いた。スピードを上げても、目視の調整だけで左右のバランスを保ちながら泳ぐことは、相当な体幹の強さがなければ難しい。 鈴木を18歳から指導する峰村史世コーチによると、「幼少時代からの環境がすごく良かった。健常者と変わらない生活をしてきたから、今の体があるんですよ。あるものをしっかりと使っているし、研究熱心ですからね」。本人も“スイマー鈴木孝幸”のルーツをこう語る。 「高校までは、ほとんど車いすに乗っていなかったですし、サッカー、野球、縄跳びもしていました。工夫ですね、できないことが嫌なんですよ。常にどうやったら、自分でできるかなって。そういう影響だと思います。水泳にも生活にもつながっているんですね。ずっと健常者の中で生活をしていたので、自然と頭で考える前に体で動いていました」 現在、9月のリオパラリンピックへ向けて、強化の真っただ中だ。4大会連続出場となるリオの舞台を「ラストチャンス」と表現した。北京大会(予選)で出した50メートル平泳ぎの自己ベストタイム48秒49は、世界記録でもある。その更新とともに、もう一度、表彰台の真ん中を狙っている。 ただ、越えなければならない心の壁も自覚している。金メダリストとして臨んだ4年前のロンドン大会。「決勝のスタート台に立ったときに、金か銀だなって、ふと思ったんです。銀がちらついたんですよね。負けそうな気持ちが出ていたんです」。最近の試合でも「スタート台に立つときに負けることも予想してしまう」という。 「金メダルを取った時は、ちょっと違うんですよ。スタート台に立った時に、取れると思い込んでいるんです。今はメンタルを改善しないと。自分をどうやってスタート台に持っていけばいいのかって」 いわゆる、ゾーンと言われている領域に入り込めるのか否か。その答えを出すためにも新しいことにチャレンジしている。2年前から英国に留学、昨年からはノーザンブリア大に在学し、「必死ですよ」と、スポーツマネジメントの勉強と、練習に明け暮れている毎日だ。もちろん日本にいる峰村コーチとも積極的にコミュニケーションを取り合い、泳ぎを進化させている。 英国に留学して変化はあったのだろうか。峰村コーチは「体幹がしっかりしましたよね。あとは、細かいところまで考えるようになったかな」と教え子の成長を実感し、本人も「練習がしっかりできていますし、感覚も悪くない。リオは今のところ、いけそうな気がしているんです。ロンドンは銅だったから、リオは金がいけるんじゃないかって」とラストチャンスへ向けて、気持ちも徐々に高まっている。 4カ月後、リオ大会50メートル平泳ぎ決勝。彼はスタート台で何を思うのか。楽しみに待ちたい。 ◇ 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」面がトーチュウに誕生。連日、最終面で展開中 PR情報
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