畑山敦子、後藤泰良
2016年5月10日05時03分
■子どもと貧困 頼れない親
昨年12月、北関東の女性(21)の携帯電話に母親から電話がかかってきた。
「車が壊れて、車検も切れちゃう。お金貸して」
女性は出産を控え、生活保護で一人で暮らしていた。「私もお金ないのわかってるの?」と言っても聞かない。金の無心は約3年前から繰り返されている。少しでも連絡が来なくなるならと、貯(た)めていた10万円を渡した。返済はない。
幼いころ両親が離婚。母親に引き取られた。精神疾患のある母からも、母の交際相手からも暴力を振るわれ続けた。転校先でなじめず、中3で教師を殴り、児童自立支援施設へ。進学を望んで退所したが、母は「金は出さない」。働きながら卒業する自信はなく、家にいるのも嫌で、数カ月間、公園で寝泊まりした。
児童相談所の紹介で16歳の時に自立援助ホームに入り、19歳で退所して居酒屋で働いた。母が金を要求してくるようになったのは収入が安定したころだ。しつこく迫られると諦めてしまう。生活費が足りず、風俗店でも働くようになった。
昨春妊娠し、仕事をやめた。結婚はせず、自立援助ホームの施設長だった男性が始めた支援団体のサポートを受けて、1月に生まれた長男を育てている。
ただ、母とのつながりは断てない。「助けないと、という思いもどこかにある」。元施設長は「どんなにひどい母親でもあの子には母親。金を渡すなとは踏み込めない」と悩む。
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