北朝鮮・平壌で36年ぶりとなる朝鮮労働党大会が開かれた。

 前回当時といまの北朝鮮とを比べれば、国勢の凋落(ちょうらく)は明らかだ。かつては韓国と体制の優位さを競ったが、いまや経済の豊かさは完全に逆転し、もう南の同胞の背中すら見えない。

 前回の大会には100を超える国の代表団が列席した。韓国政府によると、今回、主要国の来賓は確認されていない。

 金日成(キムイルソン)主席から3代にわたった異常な独裁体制は結局、国際社会での孤立化を招いたのだ。それが、この久しぶりの党大会を取り巻く現実である。

 ところが金正恩(キムジョンウン)氏は、まったくそんな事実を直視することなく、「実績」を語った。その演説で改めて浮き彫りになったのは、過ちを改める考えはないという独善である。

 「責任ある核保有国」を自称し、自主権が侵されない限り、先に核兵器を使わないことや、核拡散を防ぐ義務を守って世界の非核化に努めると強調した。

 どれだけ巧妙な文言で正当化しようとしても、北朝鮮の核保有を容認する国など存在しない。国際社会が求めるのは、前提条件なしの核放棄である。

 正恩氏は、核開発と経済発展の両方を進める並進路線を「恒久的に堅持する」として、自らが衛星打ち上げとする事実上の長距離弾道ミサイルや核兵器の開発強化を訴えた。2020年までの「国家経済発展5カ年戦略」も打ち出した。

 しかし、核・ミサイル開発の代償として、国連安保理から厳しい経済制裁が科されたばかりだ。最大の後ろ盾である中国も制裁には賛同しており、正恩氏の暴走に警告を出している。

 危うい行動が改まらない限り制裁は緩まない。自力で経済を立て直す力がない以上、核と経済再建を両立させる並進路線は、およそ実現性のない詭弁(きべん)にすぎないのである。

 強硬論を繰り返す一方、正恩氏は米国に対して平和協定の締結を、韓国には軍事当局者協議を呼びかけた。

 いつもの硬軟両様とりまぜた戦術であり、米韓両政府とも、協議をすんなり受け入れがたいのは理解できる。とはいえ、このまま無言の対立を長引かせても、アジア太平洋地域にとって利益とならないのも確かだ。

 最終的に北朝鮮に核放棄させねばならないことは当然だが、その目標を実現するためにも、核・ミサイル開発を中断させる道筋を探るしかない。米韓は、北朝鮮の動向を慎重に見極めつつ、対話の席に戻す努力を尽くしてほしい。