セダクティブ・ルック
1
エピローグ



煌くシャンデリアに美しく盛り付けられた料理。
教育の行き届いたウエイターが細部にまで目を凝らし、ライブキッチンでは数人のシェフが腕を振るう。

高校の卒業祝賀会にしては豪華すぎる会場で、華やかな装いの面々が手にグラスを持ちながら立食パーティーを楽しんでいる。
半数ほどは物珍しさに浮足立っているが、残りは高校を卒業したばかりとは思えないほど場慣れしており、育ちの良さが窺える。

「深見くん来ないのかなー」
「そういえば答辞読んだら直ぐに帰っちゃったよね……」
「あの噂本当なのかな……」

卒業式の後、この為に着飾ったのだろう、イブニングドレスの女子にタキシードやスーツの男子。そしてその倍はいる保護者達は、落ち着いた礼装で談笑している。

名門と呼ばれる学校なだけあり有力者も多く参加している。その為、純粋に子供の卒業を祝うというよりも、コネクションを作る場として活発に人々が動いていた。

「聞きました? あの深見彰人に番が出来たとか……」
「冗談でしょう。まだαだと公言して日が浅い」
「いや、うちのΩの親戚をどうかと打診していたのですが、先日深見様から正式にお断りがあって――」

老若男女様々な声が囁くのは、最近番が出来たと噂の極上のαについて。

「遠藤とか坂内があんなタイミングで転校するとかオカシイよな……」
「その前から篠原も学校来なくなったしなぁ。まぁ篠原は卒業者のリストに入ってたけど」
「遠藤って一年の時は篠原にべったりだったじゃん。やっぱ深見の逆鱗に触れたんだよ」
「だから篠原には絡まない方がいいって言われてたのになぁ」

事態を静観していた一部の者達は、事の顛末を淡々と受け止める。
αに追従すべきβの中でも、αと近い場所にいる者達だ。全てを理解せずとも、それが彰人にとって必要ならば沿うべきであると知っている。だからこそ余計なこともせず、田邉や遠藤達の目に余る言動すら、彰人が何もアクションを起こさないことを察し、静観することを選んでいた。

そして更にαに近いポジションにいる有力者達は、核心に近い情報を交換する。

「だいぶそのΩを大事にされてるらしいですよ。ついこの間もそれ絡みで、生徒が複数粛清されたとか……」
「運命の番と聞きましたよ。αの方々にとっては唯一無二の存在ですからね。ちょっとでも察しのきいた者なら子供でも手を出していいかわかりそうなものなのに……。その子のご両親達も自分の子供の不始末に首が飛んでから気付いたのでしょうね。ご愁傷さまです」
「深見様のご子息が随分前から、大事な方の為に周囲を整えられているというのは噂に聞いてましたからね。傍に置いている者がそうかもしれない、なんて、そこそこ地位のある者の子供なら言い含められていますよ。実際うちの子も見当をつけていたようで、静観しておいて正解だったと言ってました」

     

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