日銀の審議委員に4月1日付で就任した桜井真氏=東京都中央区(飯田耕司撮影)

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 9日発売の週刊ポストは、日銀の桜井真審議委員について日銀のホームページ(HP)上で「博士課程修了」と記載されているにもかかわらず、博士論文の存在が確認できない−と指摘した。

 日銀広報課は「博士課程の規定の単位を取得したことを示しており、学歴詐称には当たらない」との立場だ。

 審議委員は、日銀の最高意思決定機関である政策委員会のメンバー。同委員会は総裁と副総裁2人、審議委員6人の計9人で構成されている。

 日銀のHPによると、4月1日に就任したばかりの桜井氏と岩田規久男副総裁の学歴は、いずれも「東京大学大学院経済学研究科博士課程修了」となっている。しかし、博士課程で必要な単位を取得したものの、博士論文の審査を経て学位を取ることのないまま退学したという。

 日銀はこれまで、本人の申請に基づき、博士号を取得している委員の経歴には「経済学博士」などと明記し、単位取得退学の場合は「博士課程修了」と記載してきたという。

 文部科学省は大学院設置基準で、論文審査と試験の合格を博士課程修了の要件としている。今回のケースでは「単位取得退学」などとするのが適切としている。

 ただ、日本の文系学科では博士課程を終えても博士号をもらえないケースが多く、同省の平成27年度調査では、理工系の単位取得退学は2割程度にとどまるのに対し、社会科学では45%、人文科学では60%にのぼる。このため、慣例的に博士課程修了と記す場合も多かったという。

 菅義偉官房長官は9日の記者会見で、「表現の正確性についての事柄。日銀において適切に対応していくと思う」と述べる一方、桜井氏については「国内外の経済金融政策で高い識見を有していることに変わりはない」と擁護した。

 実は、日銀の原田泰審議委員についても、HPの英語版では「博士号取得」と明記しているが、日本語版では触れておらず、首尾一貫していない面もある。

 週刊ポストは、「大蔵省(現財務省)財政金融研究室特別研究員」の経歴も同省の職員録では確認できないとも指摘した。

 桜井氏は日本輸出入銀行(現国際協力銀行)からの出向で同省に在籍したが、官庁が受け入れる出向者は非常に多く、政府関係者からは「名簿に記載がなくても不自然ではない」との声も上がる。

 日銀は、経歴の表記を変更するかどうかについて「現時点ではコメントできない」としている。

 インターネット上では、「公職にある分ショーンKより罪が重い」といった書き込みがある一方、「経歴なんてどうでもいいから今の仕事をしっかりやってほしい」、「日本の景気のほうが大切だ」との声も相次いだ。