新しいエネルギー「マグナ」により隆盛しつつも、その「マグナ」のために民衆を労働に駆り立て、他国への侵攻を謀る小国ベリエルグ。その架空の国を舞台に、支配層の実行組織メンバーであるイリヤが、革命を目指す地下組織「ウィンドウォーカーズ」の美女フラルとともに闘うことを選ぶという話。
しかし民衆が搾取的な労働を強いられているだとか、自動機械による監視によって生活が圧迫されているといった革命を目指す動機となる描写がほとんど省かれており、空疎な言葉だけが踊っている。これでは彼らが弱者への共感や労りからではなく、革命というヒロイックな自己実現のために動いているのではないかと訝しんでしまう。
そのため作中のクライマックスで「誰かが心から流した一滴の悲しい涙の方が〜」という作品紹介にある決めセリフが出てきても、え、本当に悲しいの? と思ってしまった。
そもそも反資本主義をテーマにした作品なのに強力な国が国民の労働を管理しているだとか、張り巡らされる監視の目とかまるで共産主義国家を描いているのはどういうことだろう?
あとがきにはなんら具体性を伴わない、まるで中学生のような社会批判。本編の薄さも頷ける。