旅立ちのラダトーム
「アレフガルド」というこのアレレな国の名前を口にだすだけでもう、私は冒険に出ている気持ちになるほど、この国が好きである。浅いのか深いのかわからない海の向こうにあっけなくも目的地、竜王の城が見えてしまう、このラダトーム城はただなんとなく国の真ん中にあり、たただたのどかで本当に世界に危機が訪れているのかすらわからなくなる。
「経験値稼ぎからはじめましょう」
というと、MPを無料で回復してくれるラダトーム城の老人は微笑した。お好きなように、という合図らしい。
宝物庫のあれこれを持っていきたいところだが、勇者が高名な武器を片手にスライムを数千匹殺すのもバランス上良くないことであろう。だが、ここから始まるドラゴンクエストの世界で唯一、ひのきのぼうもぬののふくも着ていない、丸裸で勇者は城から放り出される。城でもらった手付金の120Gを握りしめ、勇者はラダトームの町へ向かう。
ちなみに、70Gでかわのふくを買うよりも、ぬののふくと道具屋でりゅうのうろこを装備するほうが防御力が高くなるのは記憶にとどめたい。攻撃力2のたけざおでしばらく我慢しどうのつるぎを買う人と、とりあえず小銭をためてすぐこんぼうに買い変えるかで勇者の金銭感覚が問われる。が、よくよく考えればラダトームの町のすぐ北には小さいながらも森があるではないか。こんぼうやたけざおを買う理由がみつからぬ。
余談ながら、こんぼう、漢字では棍棒というのはただ木や獣の骨を程よい長さに切っただけの武器である。同一材質でできたものは単体棍棒、幾つかの素材を組み合わせて作ったものを複合棍棒と言う。こんぼうの頭部に金属部品などをくみつけた複合棍棒が以降「メイス」などに発展していくのだがここでは触れない。
買い物を終えた勇者はラダトーム城のまわりをうろつきながらスライムやスライムベスと戦いながら経験値とお金を得ていく。もちろん遠出をすることもできるが城から少し離れると「ドラキー」なる悪魔系モンスターが出るので注意が必要である。
以前、ラダトーム周辺でドラキーが頻繁に出る森の横を通りがかったことがある。アレフガルドにはドラキーが出没する森など無数にあるが、ラダトームの町を出てすぐの森が針葉樹であったのにくらべ、ロトの洞窟周辺の森は広葉樹であった。そう言われるとラダトームの近くのドラキーのしっぽの形状が尖っているのは森が針葉樹であることが関係があるかもしれないが、それが奇説であったとしてもアレフガルドという神秘の国の一つの動物の生態としてまばゆいほどの輝きをもつのである。
さて、そろそろラダトームを出てロトの洞窟に向かわなくてはならない。
つづく
参考資料「街道をゆく」司馬遼太郎
久しぶりにあの記事にブコメを頂いた。日々書くブログに陽が当たるのはもちろん嬉しいけど、過去記事にコメントなどをいただくとそれもまた嬉しい。嬉しさついでにこんなものを書いてしまったが…次がいつになるかは未定。