『うどんなんてどこで食べても同じでしょ?っていうかソバの方が美味しくない?』
断言しよう。あなたはマジで旨いうどんを食べたことがない。
県の名前すらうどんに変えてしまった愛すべきキチガイ国家香川。なんと県内だけで700件近くにも及ぶうどん屋があるという。おまけにその殆どは車でないと行けないような郊外にあったりと、正直うどん県の人達もう少し中央集権化しようよと言いたくなるぐらいに不便。極めつけは何故かはわからないが、駅近くにあるうどん屋はあまり美味しくないという事で、んーうどん県、そういうツンデレっぽいところ俺嫌いじゃないよ?
前置きが長くなった。本当は俺とマジで旨いうどんの出会いについてのエピソードを筆圧たっぷりと書き上げていきたいところなのだけど、断腸の思いでそれを切り上げてオススメ店リストを上げていく事にする。
1.出汁系
上原屋 本店
な、なんじゃこの旨すぎる出汁は~( ゚Д゚)
香川うどんが他のうどんと比べて極めて特異的なのは、出汁に上質なイリコをふんだんに使用している事があげられる。
関東暮らしが長かった僕は、それまで出汁のうどんというとカツオもしくは昆布から取られた出汁でうどんを食べる事が多く、食べるたびに『いや、太い麺に淡白なカツオと昆布の出汁って合わないよね?』と思っていた。それが香川で初めてイリコ出汁を味わい、文字通り震え上がるほどの感動を覚えた。い、イリコ・・・てめえなかなかやるじゃねえか。
しょぱなから取り上げる上原屋総本店は、基本的には平凡なレベルの店しかない香川の中央地区に位置する店だ(香川の名店は基本的には車でないといけない郊外にしかない)。しかしその出汁のうまさは唯一無二といっても過言ではない。
香川うどんの面白い機材の一つに、各自が蛇口をひねって器に出汁をジョボジョボ入れるための道具がある。どういうものか思い浮かべられない人は、ビールサーバーみたいなものを思いうがべてもらえば大体は合ってる。香川のビールサーバーは捻ると出汁が出てくるのだ。それも一流料亭顔負けの極上のが、だ。
僕は香川に出かけると、まずは一杯のかけうどんを食べる。どんぶりイッパイに出汁を入れ、ズズっと口の中に澄んだそれをほおばった瞬間といったら。なんか変な薬でも入ってんじゃねえかと言いたくなるぐらいに旨い。いや本当に。
出汁系ならば他には松岡も素晴らしい。麺と出汁の調和という意味では、香川でも随一の店といえる。
他に上戸もオススメ。ちょっと中央から遠いのが難点だけど、車を飛ばして行く価値は十分にある。
2.麺系
なかむら
ゆで上げられたはずのこの麺の不思議なコシ。誤解を恐れずに言えばグミそのものである。
なかむらはかの村上春樹が有名にした店である。当初は地元のタクシードライバーですら『こんなところにうどん屋があるだなんて知らなかったよ』と言っていた店で、文字通り畑の真ん中にポツンと立っていたという店だ(余談だが香川には今でもそんな店が結構ある。そしてそういう店に限って何故か美味しい)
かつてのなかむらを有名にした伝説のエピソードがある。ある日、客がネギがなくなった事を店員に伝えると
『その辺の畑に生えてる奴を勝手に抜いてきてくれ』
と言われたという。なんだその超・自遊空間。その面白エピソードが村上春樹に紹介された事から、なかむらは香川うどんで一躍スターダムに押し込まれた。
さてそんな一見イロモノのなかむらだが、変な場所にあるだとか村上春樹が取り上げただとか、そういいう話抜きに香川でも極めてユニークな一軒である。
何が凄いって?麺がグミなのだ。ためしに口に含んで少し引っ張ってみるといい。グーンと伸びるから。
蕎麦のシャキッとしたコシと似たような触感のうどんを出す店は香川にも結構ある。水でしっかりと〆られたうどんは、駅構内にあるスタンド蕎麦屋で出されるうどんとは一線を画した旨さがある。稲庭うどんなんかもその系統だし、大阪のうどんも基本的にはこの系統だ。これはこれでマジで旨い。
ただなかむらの麺はそういうものともまた違う。誤解を恐れずに言えば、なんか変なのだ。基本的にはうどんは暖かくするとコシが消えるのだけど、なかむらの麺は水で〆ようがお湯で温めなおそうが、いつも変わらずグミである。僕は結構うどんを食べ歩いてきた方だけど、未だになかむらのような麺を出す店を知らない。
なかむらは出汁も旨いのでかけうどんも捨てがたいのだけど、麺のうまみを味わうという意味でもざるか醤油うどんでぜひ食べてみて欲しい。かまたまにするのも悪くない。つけあわせにちくわの天ぷらでも合わせて食べれば申し分ないだろう。
難点は超超行列に並ばないと食べられない事だろうか。GWなどの繁忙期は2時間待ちは覚悟しなくてはいけない。とはいえその価値はあると断言しよう。
その他の麺系の美味しいお店だが、基本的に麺系の美味しいお店は有名店に集中してしまうのである程度の行列は覚悟して欲しい。
まずは日の出製麺所を外す事はできないだろう。一日1時間しか営業しないというこの店は、製麺所が経営する店だけあって麺の旨さは極め付けだ。ぶっかけや冷やかけがオススメ。ちなみにネギは机の上にゴムで縛っておいてあり、これを各自ハサミで切って取るという方式を採用している。
これまた有名店で恐縮なのだが、谷川米穀店も麺の旨さでは卓越した一店だ。
店は山の奥にあり、味付けは醤油しかないという、どう考えても流行る要素のない店だが、全国のうどん好きがその麺を味わいに続々と訪れるという奇跡のような店である。
おかわりシステムという香川でも極めてユニークなシステムを採用しており、一杯食べ終わってまた食べたくなったら行列に並びなおさずに店員にもう一杯欲しい旨を伝えれば、麺をまたどんぶりに入れてくれる。僕の知り合いの猛者は7回おかわりしたらしい(-_-;)
メニューは冷たい麺か暖かい麺かの二つの選択肢しかない。おかわり可能なので両方とも食べてもらいたいが、オススメは暖かい方である。あつあつの麺に醤油を垂らして食べると、小麦の香ばしさが醤油で際立ち芳醇な旨みが口の中を駆け巡る。しばらくしたら卓上にある唐辛子の佃煮を入れて食べると、またキリッとした味わいがして一興だ。
3.釜揚げうどん
こ、こいつはヤバすぎるぅぅぅぅ( ;∀;)
かつて香川には『西の長田うどん、東のわら屋』という伝承があった。香川には釜揚げうどんというジャンルがあり(平たく言えば暖かいざる蕎麦、つけ麺のあつ盛りのようなもの)、その二大巨頭が長田うどんとわら屋という店だった。
そのうち長田うどんはお家騒動でひと悶着あり分裂。近くに長田in香の香という喧嘩別れ当然の形で出店した店にボコボコに打ち負かされ、長い間『最近あそこ不味くなったよね』という評価を甘んじて受け入れていた。
しかし近年では心を入れ替えたからかその味は著しく向上。素晴らしき名店の一つとして再びその地位を取り戻すことに成功した。
釜揚げうどんとは、暖かく茹でられた麺をざる蕎麦のツユのようなものに浸して食べるものなのだが、特徴的なのはその深いイリコの出汁である。醤油とみりんで濃く味付けがなされたそれは、それ単体で飲んでも酒のつまみになるほどの強烈な旨みを有しており、正直これが東京にまだ持ち込まれないのは日本の国益を著しく棄損しているとすら思っている。それぐらいは旨い。
真の釜揚げうどんを出す店は本場香川といえど数少ないのだが、その数少ない店が長田うどんと長田in香の香である。
ただ長田in香の香は食べログ評価が香川で1位で、そのせいか恐ろしく並ばないと食べられないのが難点であった。
その点、長田うどんはかつての評判が尾を引いているのか、それなりに容易に食べられるのがありがたい。その出汁のあまりの旨さに高須賀もおもわず首ったけである。
4. カレーうどん
五右衛門
くっ・・・悔しい・・・か、カレーうどんでこんなに感じちゃうだなんて。
カレーうどん、それは一晩たったカレーを食べた後で余ったルーを食べるための方法であり、まあ美味しいっちゃ美味しいけど所詮外道だよね。
そう思っていた。少なくともグルメな一品ではないと思っていた。五右衛門に行く前までは。
香川のうどん屋は基本的には昼のみの営業であり、夜やっている店はほとんどない。少なくとも有名店で深夜営業しているような店は一軒もない。しかし何故か面白いことに、高松市内ではカレーうどんの店が複数夜に営業しているのである。
僕は正直、初めは食指が動かなかった。どうせ昼営業して勝てないから夜にカレーで売ってるんでしょ?そう思っていた。ただ食べないまま批判するのも何だから、食べてから批判してやろう。そう思い五右衛門のドアを開いた先で高須賀はうどんの新境地をみた。
( ゚∀゚)アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒゴッ!!!ゴホッ!ゴホッオエェェェー!!!
か、カレーうどん旨っ
認めたくないものだな・・・若さゆえの過ちというものは・・・
さてそんな人類の新天地を作り出している五右衛門だが、和風カレーと洋風カレーの二種類のうどんを提供している。正直かなり甲乙つけがたいのだが、強いて言えば和風がオススメだ。昼間に散々うどんを食べ飽きてきたあなたも『うどん( ゚Д゚)オイチイ』となるのは必至である。
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いかがだっただろうか。これを読んだあなた。特にうどんが美味しくないと思っているあなた。つべこべいわずに香川へGoである。
食わずに死ねるか!そう言いたくなる何かが香川にはある。
うどん県と名乗る覚悟は伊達じゃねえ。