2016年5月9日21時14分
大阪府警の捜査協力者だった被告が、拳銃と実弾の所持容疑で奈良県警に逮捕され、銃刀法違反(加重所持)の罪に問われた裁判で、奈良地裁葛城支部は9日、被告に懲役4年(求刑懲役7年)の実刑判決を言い渡した。被告は拳銃の泳がせ捜査に協力中で無罪だと主張していたが、五十嵐常之(じょうじ)裁判長は「拳銃所持に府警の承認があったとは認められない」と退けた。
判決によると、住所不定で無職の中西知已(ともみ)被告(54)は2014年5月、大阪市浪速区の当時の自宅で、拳銃3丁と適合する実弾45発を所持した。携帯電話の履歴などから、被告が府警の警部に所持を知らせた可能性はあるが、被告の供述の変遷などから「信用できない」と結論づけた。
一方、五十嵐裁判長は、被告が所持する以前に拳銃と実弾の取引を仲介し、府警に情報提供したとする供述を「信用できる」と判断。取引後、買い手から拳銃と実弾を預かり、逮捕されるまでの約2カ月間、被告と警部の間で取引が話題に上らなかったとする府警側の主張は「説得力に欠ける」と指摘した。府警の対応を「拳銃の拡散防止の観点から、どこまで迅速かつ組織的に対応したかが見いだしがたい」と疑問視し、所持に至る経緯で「ただちに被告のみを責められない側面もある」と述べた。
公判で検察側は、府警がこれまで被告に捜査協力費約計130万円を払ったと認めた。この日の判決も、刑の減軽理由の一つに「情報提供などで犯罪捜査に一定の貢献をした」点を挙げた。
府警刑事総務課の宮田雅博課長は「判決内容についてはコメントを控えるが、引き続き適正な捜査に努めてまいりたい」との談話を出した。
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〈元最高検検事で弁護士の土屋真一氏の話〉 公になっていない捜査協力者と警察の関係が問題となった注目すべき判決だ。裁判所は、警察が拳銃所持を承認したという被告の主張を否定する一方、警察は所持を知っていた可能性があるのに、必要な対応をとっていなかったのではないかと捜査に疑問を呈している。捜査協力者の利用は捜査に有効だが、協力者が警察の黙認を期待して法を犯す危険もある。米連邦捜査局(FBI)のように、協力者の選別や綿密な指導監督の仕組みが必要だ。
〈渡辺修・甲南大学法科大学院教授(刑事訴訟法)の話〉 捜査協力を求めるなら、拳銃の保管と取引の対応を綿密に打ち合わせるべきだが、被告に任せきりにしていた疑いがある。裁判所が刑期に算入する勾留日数(490日)を含め、法定刑の下限(懲役3年)に近い量刑としたのは警察の情報提供者の運用が不透明であることへの批判を含んでいるとみられる。密行捜査が協力者の「冤罪(えんざい)」を生んだり、生命を危険にさらしたりしない手続きのあり方を、検察庁も交えて検討すべきだ。
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朝日新聞社会部
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