政府は4日、日本銀行政策委員会の審議委員で3月31日任期満了の白井さゆり氏の後任に、桜井真サクライ・アソシエイト国際金融研究センター代表(70)を起用する人事案を衆参両院の議院運営委員会理事会に提示した。国会の同意を経て任命される。任期は5年。議院運営委の資料で分かった。

  1970年中央大学経済学部卒の桜井氏は、76年に日本輸出入銀行に入行して89年まで在籍。大蔵省財政金融研究所特別研究員、経済企画庁経済研究所客員研究員や大正海上基礎研究所主席研究員を歴任した。三井海上投資顧問取締役を経て2007年からサクライ・アソシエイト国際金融研究センター代表。主な著書に「日本戦略宣言-シビリアン大国をめざして」、「日本経済-知の処方箋」がある。

  市場での知名度は高くないが、桜井氏は黒田東彦日銀総裁の路線を支持するとの見方が出ている。日銀は1月29日の金融政策決定会合でマイナス金利による追加緩和を5対4の賛成多数で決めたが、この時に白井氏は反対したうちの1人だった。この白井氏が桜井氏に入れ替わる。白井氏の前任、前々任は女性だった。日銀最高意思決定機関の政策委定員は正副総裁3人と審議委員6人の計9人。

  自民党の山本幸三衆院議員は桜井氏について「親友だ。世の中に知られていないけど、経済学の学識といい見識といい日本有数の人だ」と評価した。桜井氏は基本的に黒田日銀の路線と方向が同じだとして「どんどん追加緩和というより、よく見てタイミングが良ければやるべきだ」との考えの持ち主であることを示した。また浜田宏一内閣官房参与と同じ「トービンの愛弟子だ」ともした。

黒田総裁サポート

  日銀出身で日本経済研究センターの竹内淳主任研究員は桜井氏について「知らない。全く聞いたことがない」と話した。三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長も「桜井氏については何も知らない」とした上で「安倍政権による人事の提示なので、黒田東彦総裁をサポートするに違いない」と述べた。

  政策委では昨年6月に退任した森本宜久審議委員の後任にトヨタ自動車相談役の布野幸利氏、昨年3月に退任した宮尾龍蔵前審議委員の後任にリフレ派エコノミストの原田泰元早稲田大学教授がそれぞれ就任している。原田、布野両委員と黒田総裁、岩田規久男、中曽宏両副総裁がマイナス金利に賛成した。反対は白井氏の他、石田浩二、木内登英、佐藤健裕各委員だった。石田氏も6月29日に任期満了を迎える。

  衆院議運の河村建夫委員長は4日、石田氏後任はまだ最終調整はできなかったと政府から説明があったことを明らかにした。人事漏洩の指摘もあったが、それが原因ではないとも語った。4日付の日経新聞朝刊は、日銀審議委員に新生銀行執行役員の政井貴子氏が起用される、と報じていた。