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アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と- 作者:一星

第三章 里での生活

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七話 魔法

 暖かい太陽の日差しを浴びながら、俺とポッポちゃんは村近くの草原に座り込み、魔法技能の訓練をしている。
 イヴリンの街で会ったランドルが、マジックグローブと言っていた球体のこの装置は、手を添えて中に入っている黒い粉みたいな物をマナを消費して動かす事で、魔法技能の訓練が行える。

 街から帰ってきてからは毎日の様に魔法技能の訓練を行い、昨日やっとレベルが一になった。レベルが一になった所で大した違いは無いのだが、若干マジックグローブの操作がうまくなった気はする。

 この世界でレベル一のスキルとは、入門や駆け出しと言った具合で、有ると無いとでは確かに違いがある。もし剣術スキルが無い者が、レベル一の剣術スキルを持つ者と対決した場合、同レベルなら九割はスキルを持つ方が勝つ。残りの一割の勝因は運と言った感じだ。

 同レベル同スキル値の場合は経験が物を言う。スキルの熟練度はその者の経験に値するので、高ければ高いほど良いのだが、これは訓練内容によっては覆る場合があるらしい。
 例を言えば何かに特化して訓練した場合だ。例えば剣を使う相手に特化して訓練をしていた場合は、当然その相手には強くなれる。逆に槍などを使われた場合は、対処方法が分から無い為、不利になると言ったスキル何て関係も無い理由だ。

 ただ、実際の戦いでは相手の強さが分からない上、レベルの違いや他の所持するスキルの違いで、絶対はあり得ないらしい。
 この世界で敵に勝つ為に一番簡単な方法は、レベルを上げてスキルを上げろって事なんだろう。

 これはこの村に帰ってきてから、街に移動する時に一緒の馬車でお世話になった、この村の冒険者ギルドの職員であるマグさんから追加の講習を受けた。正直もっと早く教えて貰えていれば、酔っぱらい相手に聞き出す事なんてしなくても良かったのでは無いかと思ったが、まあそれは言っても仕方が無い事か。

 また、他にもこの国の税に関して話を受けた。
 この世界の大半の国では、成人するまでは基本的に納税の義務は発生しないのだが、ギルドに入って収入がある場合は大人の半分の納税が必要になる。
 これはその国家に所属している場合と、していない場合で違うのだが、その国に所属しているのであれば一括で年、金貨二枚の支払いが必要らしい。

 普通の農民や町人の税が年金貨四枚で、この国での低所得層である農家の年収が大金貨一枚なので、大体四十%の税率と言えるのだろうか。この税は貧富の差なしに一律らしいので、収入が少ない農家には痛い出費と言えそうだ。
 この世界は王族や貴族等も存在して、貧富の激しい状態みたいだが、そんなものは地球でも幾らでもあったので、この世界がおかしいと言う訳では無いだろう。

 ちなみにこの税を払えない場合は、身売りをするか他の国に逃げるしか無いらしい。村であれば人と人との距離も近い事もあり、事情があれば協力して金を出し合う事もするらしいが、二度目は無いらしく、この村でも数年前には一人の男性が奴隷として炭鉱に送られたそうだ。

 冒険者が国家に所属しないのであれば、一回ごとの依頼から税が徴収されていく。自分が所属するクラスによって一月に受けなくてはならない依頼の数があり、ランクが低いほど多くの依頼を受ける必要がある。
 一番下のブロンズでは、月に十回以上の依頼を達成する事が必要があり、上に上がる度に必要回数は減っていく。プラチナクラスからは税の免除がある。
 これは強力な冒険者を確保する為の国の措置だろう。
 月に十回の依頼は大変そうであるが、依頼内容によっては二回分に相当する物や、お使い程度の仕事もあるので、月に半分ほど働けば問題ないらしい。これも成人前の子供は半分で良いらしい。

 これらの依頼達成の義務は当然金で解決できるので、俺は事前に半年分に相当する金額をギルドに支払った。この期間に依頼を達成すれば繰り越してくれるらしいのだが、別の国に行った場合はその国の税を納めなければいけないらしいので気を付ける様言われた。

 さて、面倒くさい話は良いとして、そろそろ今日のメインイベントである魔法を覚える事にする。

 魔法の知識書を読み大体の事は理解したこの世界の魔法とは、体内のマナを使い、この世界の万物を構成するエーテルを操作して、火水風土の四大エネルギーに現象を起こさせる技能だ。

 この技能を使い、火を発生させ、形状を操作して、力の方向を与えれば、一般的な魔法であるファイヤーアローやファイヤーランスになり、これに爆発の現象を加えればファイアボールになる。
 これらの魔法は、大気中に存在するエーテルから火のエネルギーを取り出し発生させたもので、自然に存在している土や水などを使用してその属性に合った魔法を使えば、より効率よく魔法を使う事が出来る。

 魔法の覚え方だが、これには二通りある。
 一つ目は自分で作り出す事だ。魔法技能のレベルが一ならば、それに応じた威力の魔法を作り出せる。だがこれは、試してみたいのだが、恐ろしく難しい。
 感覚的に言えば、目隠しをして操作の分からない乗り物を動かして、数十メートル先の駐車場へ止めろと言う感じだ。
 魔法技能のレベルが低いからか、火を起こしてみようと思っただけでこれである。初歩の魔法と呼ばれる、ファイヤーアローを使えるまでに、どれ程の年月が掛かるか分かった物じゃない。

 だが、これを解決する方法が存在する。それはスクロールだ。
 このスクロールとは、使用する事で書かれた内容の魔法を発動できるマジックアイテムで、マナの使用から魔法の発動までを自動で行ってくれる。
 一度使えば大抵の人間は、その魔法を覚える事が出来ると言う優れものなのだ。これが発明される以前は、魔法はかなり限られた人間が、口伝で伝える事しかできず、まさに伝説の技だったらしい。

 兎も角早速使ってみよう。
 羊皮紙で出来たスクロールの中心には丸の中に五芒星が描かれていて、その中に力の言葉が書いてある。意識を集中して力の言葉を読むと体から多少のマナが抜けるのが分かる。
 その直後、俺の体の先には四十センチほどの火の矢が発生して、そのまま真っ直ぐに飛んで行った。
 大体二十五メートルほど先まで飛んで行っただろうか、地面に落ちる事なくその炎は姿を消した。

「うおぉ……うぉおおおおおおおおすげえええええ」

 流石にこれには大声で叫んでしまった。スクロールの力を借りているとはいえ、俺の体の中に有るマナを使って魔法が使えたのだ。そしてその発動方法が今では理解できている。誰だってこれを叫ばずにはいられないだろう。
 ましてや俺は、元はこの世界の住人では無い。魔法とはゲームや漫画、映画などでしか見られない絶対に起こりえない現象なのだ。それを自分が行使できたなんて正に夢の様である。

「ふふふ……ふははははは。もっとだ! もっと撃ってやる!」

 面白すぎて俺のテンションが、最高潮に達している事が自分でもわかる。ポッポちゃんが「怖わぁ……」とか言いながら、鳩なのに器用に半目で俺を見てくるが気にしない!

 一度撃てた事で、もうやり方は分かった。次は全て自分でやってみようと思い、まずは火の矢を発生させる事にした。
 意識を集中して目の前に火の矢を出す事を考える。

 ファイアーアロー……ファイヤーアロー……、お願いします出てください。火の矢。火熱い。火すごい。火の矢長い。凄い。熱い。

 イメージだけを考えて、先程のスクロールから得られた、エーテル操作を行っていく。すると、俺の視線の先に最初はちょろちょろと揺れる小さな火が浮き上がったと思ったら、次の瞬間には先程の火の矢の一・五倍近い大きさの火の矢が現れた。

「うおっ!?」

 思った以上に大きい火の矢が出た事にビックリして、思わずそのまま火の矢を飛ばしてしまった。これも先程のより速い速度で距離も長く飛び、地面に落ちる前に炎は消えた。

「何だあれ……、どうなってんだ?」

 今放ったファイアアローは、威力が先程スクロールを用いて放ったファイアアローより威力が高かった。買ったスクロールはこの魔法を開発した、初代より受け継がれている物で、この世界のどこで買っても同じものだと、街の魔法屋のロロットちゃんは言っていた。
 そのスクロールから学んだ俺のファイアアローは、本来ならば先程の物と一緒の威力にならないとおかしいはずなのだ。

 試しにもう一発放って見ても、威力は高いままだった。何かの原因があるのかと考えていると、ふと頭に一つの考えが浮かんだ。

 「あっ、あれか!?」

 そう思い俺は久しぶりにステータスを開いた。最近は上がる要素も無かったので全く見る事は無かったのだが、一つ思い当たる節があるので確認のために見てみる。

【名前】ゼン 【年齢】10 【種族】人族
【レベル】 39 【状態】――
【H P】 741/741 【M P】 135/145

【スキル】
・投擲術Lv3(245・6/300)・槍術Lv0(45・5/50)
・格闘術Lv2(2・1/200)・魔法技能Lv1(1・5/100)
・鑑定Lv3(20・8/300)・料理Lv2(73・3/200)
・鍛冶Lv2(182・3/200)・錬金Lv0(48・3/50)
・大工Lv1(30・3/100)・裁縫Lv0(20・8/50)
・伐採Lv1(6・4/100)・採掘Lv3(258・9/300)
・探知Lv3(194・1/300)・隠密Lv1(39・7/100)
・調教Lv2(21・3/200)

【加護】・技能神の加護 ・医術と魔法の神の加護 ・*******

 思い当たる節とは、俺がダンジョンボスを倒して貰った加護である、医術と魔法の神の加護だ。

―――
医術と魔法の神の加護‥加護の対象者に、医術と魔法の神の加護より、使用する魔法の効果を高める効果を与えられる。また、回復系魔法の効果を倍増する。
―――

 改めて見てみるとやはりそうだ。魔法の威力を高める加護だから、威力が上昇しているのだろう。スクロールは決められた結果を出すアイテムなので、俺が実行した魔法とは威力が違うって事か。

 ……んっ?

 そう言えば回復系魔法の強化もか、もしかしたらこれポッポちゃんの羽を直せるんじゃ……。
 ヒール系の魔法は魔法技能のレベルが三だったはず。これはこれから毎日魔法技能の鍛錬が必要になるな。

 思わぬ希望が出てきた事に、嬉しくなりポッポちゃんを抱きかかえながら、ファイアアローを空に向かって連発した。
 数発でもうコツは掴め、一発のマナ消費も五と少ないので数多く打てる。
 ポッポちゃんも喜んでくれているみたいで、俺の腕の中で羽をバタバタと羽ばたかせている。

 え? 熱いって? あぁ、火の粉が飛んで来てたのか。
 ごめんねポッポちゃん!

 ファイアアローを十発ほど撃った後に、ポッポちゃんにはお詫びとして数々の穀物を捧げ、食事中ずっと撫で続ける事で許してもらった。

 その後は、今使える他の魔法を覚えて家に帰った。

「キャス姉、見て見て、この魔法!」

 家のリビングで、俺が街で買ってきたワインを薄めた物を飲んでいたキャスに、今日覚えた魔法の一つであるプロテクションを掛けてみると、キャスが自分に掛った魔法を試す為にか、腕を机の角にぶつけている。
 ちゃんと機能しているのか、ぶつけた腕は痛くない様で、その場所を確かめるように見つめていたキャスが、急に俺を見つめて呪いを掛ける様に呟いてきた。

「うらやましい。うらやましい。うらやましい。うらやましい」
「ちょっと、怖いんだけど……」
「ゼン君ずるいよおお、ちょっと魔法練習する奴だして!」

 仕方が無いのでマジックグローブを出してやると、机の上に置いて一心不乱に操作しようとしていた。俺は一休みしようとポッポちゃんと部屋に戻ろうとしたのだが、一向にマジックグローブを動かせないらしく、無理やり膝に座らされ練習に付き合わされた。



 初めてファイアアローを使ってから一週間がたった。
 あの後は午前中に狩りか、投擲術と槍術の訓練を行い、午後は主に魔法技能の訓練に当てた。
 そのお蔭で槍術と錬金はレベル1に上がった。レベル1では肉体的、精神的な強化は得られないが、槍捌きや調合スピードなどがわずかに強化され、俺のやる気に火をつけてくれる。
 改めてこのシステムは面白いと感じさせてくれた。

 俺の槍の相手は、纏まった金が入って働かなくなったキャスが勤めていてくれたのだが、スキルレベルが同じになった為か、上昇効率が落ちて来てる。
 槍術は投擲術と同じく、生きた相手が居た方が効率よくスキルが上がる様なので、毎日一人で訓練するぐらいなら、数日間隔でも他者と打ち合った方が効率が良いのだ。
 レベル0の段階でレベル差からか、既に俺の相手では無かったのだが、レベルが上がって尚更顕著になった為、そろそろ他の相手を探さないといけないのだが、その伝手は今のところないので、当分はキャスを相手に頑張ろうと思う。

 キャスはキャスで俺と打ち合うと、効率よく熟練度が上がっているらしい。同レベルになった今だと、はたしてどちらが先生なのか分からない状態だ。

 魔法に関しては魔法技能の他にも今は、瞑想と言うスキルと魔法抵抗と言うスキルを訓練している。
 瞑想はその名の通り瞑想するスキルなのだが、その効果はマナの回復速度を上げると言う、魔法を使う者には極めて効果的なスキルだ。
 まだ覚えたばかりで、そこまでの恩恵は受けてはいないのだが、スキルレベルが上がれば瞑想を行っていなくとも、マナ回復の効率が上がるので是非とも欲しいスキルなのだ。

 魔法抵抗もその名の通りのスキルで、魔法に抵抗できる壁みたいな物を張れるスキルだ。
 自分に向かってくる魔法に対して壁を張る事で、その威力を下げたりレベルによっては無効化も可能だと言うので、マジックグローブを使っての魔法技能上げに飽きた時に、空に向かってウォーターアローを放ち、落ちてきた水の矢に対してこのスキルを使って上げている。
 恐ろしく効率は悪いのだが、これ以外の方法が考え付いていないので仕方が無いのだ。

 また、ここ最近は午前中に狩りもする事もあり、森に入って食べる為に動物を狩るついでに、俺に向かってきた亜人も狩って、地味に冒険者ギルドで小銭を稼いでいる。
 常時出ている亜人狩りでも実績が付くらしいので、食べ物確保も兼ねる事が出来て楽しくやっている。
 金に困っていないので、冒険者ギルドで依頼を受ける気は無いのだが、面白そうな依頼があれば気分転換にでも、受けてもいいかもしれないな。

 そんな日々を過ごしていたある日、俺が冒険者ギルドにゴブリンと、二足歩行のハイエナの様な容姿を持つノールという亜人の耳を、換金してからギルドを出ると、一人の女の子に声を掛けられた。

「そこの貴方。少し良いかしら?」

 そこに居たのは、俺と同じ位の年の女の子だった。美しい金髪の髪をポニーテルで纏め、眼光鋭く腕を組み、仁王立ちでこちらを向いている。表情は厳しいのだが、その顔立ちはとても可愛らしく、もう少し成長すればかなりの美人になる事、間違い無しだ。

 もう少し年が上ならば俺も尻尾を振って、お話を聞いて上げたいのだが、如何せん子供過ぎる。今日はこの後に魔法の訓練をするので、一応は予定があるのだ。しかも、俺の帰りをポッポちゃんも待ってるからね。

「何か用?」

 俺が少しぶっきらぼうに対応すると、彼女は急に無い胸を反らせ俺に一言、言い放った。

「私にスキルを教えなさい!」

 いきなり現れた彼女が言った言葉の意味を、俺は繰り返し考え出たのだが、出た答えはこの一言だった。

「めんどくさ!」
+注意+
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