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四話 情報と魔法店
「おじさん、このお酒飲んでください」
「はぁ? 坊主いったい何言ってんだ?」
「お母さんがこのお酒捨てて来いって。お父さんが飲んだくれるからだって。でも勿体ないからおじさん飲んでよ。ここお酒飲む場所でしょ?」
「がはは、よーし俺が飲んでやるぞ! 坊主何か食うか? がははは」
昼から飲んだくれてる男に俺は酒樽を持って話しかけた。
男は鎧を着て剣を下げている。だが、この街の警備や軍などでは無いだろう。そんな仕事をしている奴が昼間から飲んでいられる程、この街のモラルは低くなさそうだからだ。
いや、まさか本当にこの街の兵とかじゃないよな?
「おじさんは冒険者だよね?」
「おう、そうだぞ! 坊主は冒険者になりたいのか?」
良かったちゃんと目的の人物だった。使いこまれた武器防具、見た目から漂う熟練の冒険者の雰囲気から選んでみたのだが、大丈夫だったようだ。
「おじさんお酒好きなんでしょ? 僕が注いであげるから一杯飲んでね」
「がははは、良い子だ坊主。ほら空いたぞ注いでくれ。がはははは」
すっげえ飲むなこのおっさん。元から赤かった顔が更に赤くなって来てるぞ。
「ねえおじさん、僕スキルの事とか知りたいんだけど教えてくれる?」
「いいぞー何でも教えてやるぞ!」
「おじさんて剣使うんでしょ? 剣術のスキル幾つ?」
「ん……。坊主、それは幾らなんでも教えられねえな」
「そうなんだ、ごめんなさい。僕も剣を使いたいから、おじさん見たいに、カッコイイ人は剣術のレベル幾つなんだろうと思ったんだー」
「がははは、かっこいいか! 他の事なら教えてやるぞ」
「じゃあ――」
「おじさん、もうお酒の樽が空になりそうだよ。すごいね!」
「そう……だろ。ウップ。俺は……かっこ……いからな」
「あっ、コップが空だ! はい飲んで」
「ヒッック。そう……だな」
「ねえ、おじさんの剣術のスキルって幾つ?」
「剣……術は……レベル三……」
「じゃあ、今のレベルは?」
「三十……、ヒッック」
うむ、今ならこのおっさんをお持ち帰りが出来るな。
飲ませすぎて完璧にベロンベロンな状態で、アルコール中毒になりそうで怖い。もう大体話も聞いたし解放してあげよう。
「あーもう帰らないと! おじさんありがとうね!」
「おう、気……を付けてか……えるんだ……ぞ」
おっさんはそこで力尽きたみたいで、テーブルにつっぱして寝てしまった。俺はその場から素早く立ち去った。
結構長い時間いた気がするが、ちょくちょく何かを頼んでいたので店員も俺の事なんて気にせずにいてくれて上手くいったわ。
次の目標はっと――
「あぁ、そうだ! 魔道は一日にしてならずなんだ!」
「そうなんだー、ささ飲んでお兄さん」
「おう! 悪いな僕。お父さんが可愛そうだが仕方ないな! ははは」
この兄ちゃんは見るからに魔法を使いそうだったので。酒を飲ませて喋らせる作戦を仕掛けて見たのだが、まんまと嵌ってくれる。
一人で居る奴らは話し相手が欲しいんだろう、簡単に俺の誘いに乗ってくれる。ボッチの悲しい習性なんだろうか?
「んで、魔法の覚え方だけど――」
ランドル君二十一歳はゴールドランクの冒険者で、元は貴族の五男だったらしい。家督争いに参加することも無く、子供の頃から開花した魔法の技能を使って冒険者として生きていて、最近は同じパーティーの女冒険者に恋心を抱いているらしい。
十歳児に女の落とし方を聞くのはどうかと思うけど、相手は戦士らしいのでさっきキャスの剣を買った、あの店にでも誘ってみたらどうだとアドバイスしてみると「その手があったか……」何て言っていた。
顔も良いし金ももってそうだから、彼は良い物件だと思う。彼の恋の成功を祈りながら、酔い潰れたランドル君を店の人に任せて俺は店から出て行った。
魔法使いで尚且つ、予想外の高ランク者の話が聞けて、物凄く幸運だった。
俺が知りたいと思っていた事の大部分は知る事が出来たし、もしかしたら俺が今一番望んでいる事の糸口が見えた気がした。
とても有意義な情報を得られた事を喜びながら宿屋に戻る。
既に陽が暮れていて空は茜色に染まっていた。宿屋への道中では各家庭からの料理の匂いが漂ってきて、酒屋でちょびちょび食べていたのに腹が減ってきた。
地球でも子供の頃はこんな感じだったなと懐かしく思いながら宿屋へ戻ると、一階ではキャスが椅子に座って宿屋の女将さんのネリー
さんと話をしていた。
「あっ、おかえりゼン君」
「おかえり坊や」
「ただいまー」
「何してきたの?」
「情報収集だよ」
そんな簡単なやり取りをして俺も椅子に座り、夕飯を出してもらう事にした。キャスもまだ食べていなかったので、一緒に今日の夕飯のグランドボアーの煮込みを頂いた。
今迄食べていたイノシシとは違い、臭みが余り無くとても美味い。そう言えば森で食べていたあのイノシシはなんだったのか気になり、キャスに聞いてみるとチャージボアーと言う種類らしい。確かに何時も突っ込んでくるだけして死んでたな。
夕飯を食べ部屋に戻る。キャスはまた今日買った剣を眺めているので、俺は女将さんに用意してもらった湯で体を拭いていく。
この値段帯の宿屋でも風呂は無いので、湯で濡らしたタオルで体を拭くのが普通らしい。金もあるし明日は一泊位風呂がある所に泊まるかな。
一通り拭き終わり桶を返しに行こうと思ったのだが、キャスはまだ剣を眺めてニヤついていた。
「キャス姉、お湯が冷めるよ」
俺が忠告してやるとキャスは、あらそうね何て言っていきなり服を脱ぎだした。一気に上半身裸になったキャスに思わず目が釘付けになるが、俺がめちゃくちゃ凝視している事に気付いたキャスは流石に恥ずかしくなったのか「あっち向いて」と赤くなりながら言ってきた。
いや~良い物を拝ませてもらった。危うく手を叩いて拝む所だったわ。
俺はお礼にキャスの桶も持って行ってやろうと思い、キャスに背を向けて体を拭き終わるのを待った。程なくすると、拭き終わったのか、良いわよと言われて振り返ると、もう寝る気なのだろう下着だけになっていた。
当然ブラジャーなんかは無くて、タンクトップ見たいな物だが、それでもクルものがある。自分の体が子供で良かったのか、悪かったのか考えながら桶を返しに行き、部屋に戻ってくるとキャスはもうベッドに入って寝る体制になっていた。
「ゼン君明日は如何するの? 私は友達の所とか行きたいんだけど来る?」
「キャス姉って、俺が一人で行動しても何も言わないんだね」
「えぇー! だって君、私より強いじゃない。それに行動も子供っぽくないし、もう心配するだけ損な気がしてるのよ」
まあ、これだけ好き勝手してたらそうなるか。
「明日は俺も色々回るから別行動にしよ。あっ、明日さ、お風呂ある宿に泊まりたいんだけど、どこか知ってる?」
「高……、お金はあるのよね……。領主の館の方にあるらしいけど、私は行った事は無いし詳しくは分からないわ。この部屋出るの?」
「いや、明日一日だけだよ。キャス姉も来るでしょ? お金は出すし」
「っ! 当然行くわ! この宿の事は任せて。ネリーさんには話しておくわ」
清々しいほど素直な反応だ。面倒が無くて素晴らしい。
その後、キャスと待ち合わせ場所等を、相談してこの日は終わった。
◆
今日は午前中からウキウキ買い物タイムだ。道中で見かけた獣人に目を奪われながら、目的地まで歩いていく。
昨日来た職人街から少し歩いた所にあるこの場所は、同じく職人街なのだが物静かな雰囲気で、ガラス窓から中を見てみると机に向かって作業をしている事が多い場所だ。
数ある店の中から、まず俺が目指したのはこの店だ。
「すみません、靴ください」
ダンジョン初日に失って以来、素足で生活してきた俺なんだが、村に着いても靴屋は無かったので、やっとこの街で手に入れる事が出来る。
村の人を見た感じ大多数の人はボロボロでも靴を履いていたが、二割ほどは素足だった。特に子供は殆ど靴など履いていない。
俺も数カ月の素足生活とレベルアップのお蔭か、今なら釘を踏んでも大丈夫なんじゃないかと思う程、足の裏が強そうだ。
それでも日本で数十年靴に慣れ親しんだからか、他の人が靴を履いているのに自分は素足の状態に落ち着かない事があったのだ。
店の中を見てみると、少ないが展示してある靴がある。素材は全部革で作られている様に見える。
俺が展示してある靴を見ていると、店の奥から白髭の爺ちゃんが出てきた。
「おう坊主、靴が欲しいって金あるのか?」
この世界、高確率でこのセリフ言われる気がするな。まあ、高い物じゃないし、子供が一人で買いに来るものでもないからか。
俺はマジックバッグから大銀貨を取り出して、人差し指と中指で掴み、恰好よく出してみた。俺の事はお客様と呼べ!
「貴族の坊ちゃんか? よーし、足見せて見ろ」
そう言って俺の足を掴むと、サイズを測って欲しい靴の形を選ばされた。俺は展示してあったスニーカーの様な紐で結ぶタイプの足首まである靴を選んで、お爺ちゃんに作成を依頼した。
この世界の新品は基本オーダーメイドなので、服もそうだが割高で出来上がるまでに時間が掛かるのが当たり前っぽい。今回の靴作成も、二日の作成時間と大銀貨二枚が飛んで行った。質は良さそうなので値段は良いんだけどね。
この店に来る途中にも靴屋はあって、大量の在庫を抱えていた所もあったのだが、店の看板に中古の文字があったので辞めておいた。
俺は潔癖症な訳じゃない。ただ怖かっただけなのだ、水虫が……。
注文も済み次の店に向かう。これから行く店はお土産購入を兼ねた情報収集をするつもりだ。スキル的には大工と細工が必要になりそうなこの店には主に木工製品が置かれている。
ほとんどが家具なのだが、小物なんかも置いてあって、お土産にこの辺の物を少し買っていこうと思っている。
皿や器、箱と小物入れ。目に付いた物を手に取りカウンターへ運んでいく。店員の姉ちゃんの大丈夫か、という視線を無視して欲しい物が粗方無くなった所で話しかけてみた。
「これください、あと色の付いた格好いい食器とかないですか?」
「色の付いたかー、木製品は殆ど素材の色だからね。ペンキなら塗って上げるけどそれでいい?」
「ペンキ以外ので色着かないんですか? ペンキって何か臭そうでいやです。黒い木の食器とか赤い木の食器って無いんですか?」
「ペンキを使わないでそんな色の食器何て見た事ないわよ。それ本当に木製品なの?」
なるほど、この世界にはあれは無いか。それなら計画は進めてみよう。
その後、お姉さんにもう少し木材の事を聞いて見ようと質問をしてみると、奥で作業していたオッサンがこちらに来て何故か丁寧に教えてくれた。子供の姿ってお得だね。いや、結構買ったからか?
買い物も情報得られ満足して店を出て、次は今日の買い物のメインイベントである魔法店に向かう事にした。
ランドル君が教えてくれたお店は、大型店では無いが質の良い品を置いている隠れ名店みたいな感じだと言う。だが、ランドル君が通っていた一番の理由は、店員の姉ちゃんが可愛いのだと言う。
ベロンベロンに酔っぱらっての話なので、詳しい事は分からないが、兎に角行って見る価値はある。美女や美少女を見ながら買い物が出来るなんてすばらしいじゃないか!
程なくして着いたその店はレンガ造りの古い佇まいながら、窓ガラスの向こう側は綺麗に整理された品物が並ぶ、こじんまりとした店だった。
俺がドアを開けて店に入ると、カウンターに居た女性がこちらに向かって声を掛けてくる。
「いらっしゃいませー」
「ッ! エ……エルッ! エロフッ!」
「いや、エルフだけどー?」
カウンターに座っている女性の容姿に、俺は驚き戸惑ってしまった。
金髪の髪、色白の肌、そして長い耳。その全ての特徴が、オーク等にエロいことをされちゃう宿命の種族エルフだと俺に告げていた。
獣人がいた事からこの町でも見かけるかと思っていたのだが、とんだ不意打ちを食らってしまった。流石エルフ……。
「君はエルフを見るの初めてなのかな? 怖くないよー」
一六歳位に見えるエルフが、驚き身を引いている俺に、カウンターに乗り出す様にこちらに向かって手を振っている。可愛い。
「すみません。初めて見たので驚いてしまいました」
「確かにこの国じゃ少ないしねー」
そうだ、買い物に来たんだった。危うくエルフの魅力でやられるところだった。
「えっと、欲しい物があるんですが。まず魔法の練習で使う風車は幾らですか?」
この風車とは魔力を込めると回るという単純な物なのだが、込めた魔力が全て回転として消費されるので、魔法技能の練習としてポピュラーな物らしい。正直エネルギー勿体ねえと思ったのだが、充電系のアイテムで練習すると、込めたのを一々消費してからじゃないと次の練習が出来ないので不便らしい。
「うちじゃー、風車は無いのよ。でもそれ以上に良い物があるわよー」
そう言ってカウンターから離れれると、俺の方へ向かってくる。だが、そのまま通り過ぎると、俺の後ろにあった棚から黒い台に水晶玉が乗った物を取り上げるとカウンターへ戻って行った。
「これはねー新しい練習用の道具でね、中に入ってる黒いの分かる? 魔力を込めるとこれを動かせるのよ。しかもスキルレベルが上がっても、動かし方を変えれば長く使えるの。風車より高いけどお得なのよー」
お店に行ったら新しいの出てましたって奴か、これって良い方悪い方どちらに転がる事が多いんだっけ? まあ、風車は無いって言うし仕方ないか。
「じゃあ、コレ下さい。幾らですか?」
「これはー大金貨一枚と金貨三枚よ。高いけど買えるかなー?」
たっけええええ、おいおい、これ一個で軽の新車を買えるじゃねえか。入門用じゃねえのかよこれ。しかもこのエルフ絶対買えねえだろ、見たいな顔してやがる!
「この道具すごい高いのですが、練習用でこの値段なんですか? 後、風車って幾らするんですか?」
「マジックアイテムだし値段は高いわよー。風車だってうちで出してた時は金貨九枚で売ってたわ」
糞っ、高すぎる。ぼったくりの可能性あるんじゃねえのか? 可愛い顔して、ガキ相手にえげつねえ事する気か!?
俺がぐぬぬと唸りながら、出された水晶を睨んでいるとエルフがこんな事を言い出す。
「私も子供の頃は魔法使いに憧れたからねー、坊やの気持ちはわかるわー。坊やも大きくなったらお金を稼いでまた来なさいね」
そういってエルフは水晶玉を棚に戻そうとしている。
あれ? ぼったくりじゃねえのか? いや、そもそもこんな子供が金持ってるとは思わねえか。そうだ、こんな可愛いエルフが子供をだますはずない。だって可愛いんだし。
「買います!」
「えっ?」
「その水晶買います!」
俺は大金貨二枚を取り出して、カウンターへと気合を入れてなるべく優しく置いた。だって、叩きつけたら嫌な客だと思われちゃうじゃん。
「へっ?」
エルフがカウンターに置かれた大金貨を見て、変な声を上げている。驚いた顔も良いな。
「ま……ま、まいどありっー」
ふはははは、まさか本当に買うとは思ってもみなかっただろ! その慌てた顔もまた可愛いな!
一通りエルフを堪能した所で、水晶以外にも欲しい物を買っていく。
まずはスクロール。
「スクロールの説明はいるー?」
「一応お願いします」
「いいわよー、何でも教えちゃからねー。スクロールは正しくはマジックスクロールね。これは魔法を使用する際の魔力の構築を自動でしてくれる物よー。一度使ったら使えなくなるけど、魔法技能のレベルが足りなければ、発動しないからねー。それと、普通の人ならば一度スクロールを使用出来れば大体はその魔法を使えるようになるわー」
酔っぱらったランドル君に聞いていた内容とほぼ同じだな。いやしかし、金の力は偉大である。楽しそうに説明してくれるな。
次は魔法知識の本だ。
「これはー、魔法の基礎が掛かれている本ねー。魔法を使うだけならば必要ないけれどー、魔法使いにとって知識は力よー、私は絶対に読んでおいた方が良いと思うわー」
そこまで厚くは無いが、少し中を見た所この世界で使われる魔法の種類などが書いてあった。一般的にはスクロールを使って魔法の使い方を覚えるそうだが、知識としてどんな魔法か知るにはこの本は最高である。
ちなみにこの本手書きで書かれていた。もしかして木版印刷とかも無いのか?
最後に魔法の杖だ。これはランドル君曰く要らないらしいが、魔法使いは持ってる人が多いらしい。酔っぱらいすぎて理由が聞けなかったので、エルフちゃんに聞いてみよ。
「杖ってどうなんですか? 要らないって聞いたのですが」
「そうねー、練習だけなら要らないわ。ただ魔法を使って戦うのであれば、持たない方がおかしいわ」
「具体的にはどういう理由で?」
「杖には魔力を強化する力があるわー。普通の棒じゃ駄目よ? ちゃんとした素材と魔石を組み込んだ物が、魔法使いが使う杖と呼ばれるのよー」
「魔石ってなんですか? 後、杖の素材ってなんですかね?」
「魔石はエーテル結晶体を加工した物の事ねー。用途が多すぎて全部は説明は出来ないけれど、杖では魔力の強化をする為の加工をするわー。杖の素材は殆どがトレントと言う魔物から作られるわー」
なるほどー、為になるわーって口調移るわ!
話を聞く限り魔石は総称みたいだな。エーテル結晶体の使い道が分かってお得な気分だな。
そう言えば俺エルダートレントの木材持ってたな、あれってどうなんだろう。
「エルダートレントで作った杖ってどうなんですか?」
「結構良い方よー、中級って所かしらねー。ただ、入手が難しいからうちではおいてないわー。うちは杖って余り扱ってないのよねー」
ほうほう良いこと聞いたな。素材として売れるんじゃねえのか?
「もしエルダートレントの木材あったら買います?」
「うちでは作るのが難しいからいらないわー。でも他に持って行けば売れるわよー」
宝石売れば金になるし当分売るのはいいか。まあ杖は要らないって言うしいいか、まだ魔法使えないんだし。それより、すげえ気になる物を発見したぞ。
「エルフのお姉さん、この指輪なんですか?」
「私の事はロロットって呼んでねー、この指輪はマジックアイテムよー」
「見た感じミスリルみたいですね。どんな力があるんですか?」
「これは防火の効果があるわー。そうねー、初級のマジックボールぐらいなら三度は防ぐわねー。」
魔法の指輪とかファンタジー過ぎる……欲しい……、いとしいしと……。そしてロロットちゃん、名前も可愛い。
しかし、マジックボールってどの程度だ? 初級って言うぐらいだから大した事無さそうだけどなあ。
あっ俺あるじゃん食らった事!
「ロロットさん、キマイラの吐く奴ってあれ魔法ですよね? あれがマジックボールですか?」
あれを三度も防げるなら、かなり使えるじゃん。買えるなら絶対欲しい。
「キマイラの炎は如何かしらー。たぶん一度で壊れちゃうわよー」
ぐっ、一度とか微妙な効果過ぎて買う気が失せてくる。考えたらあんな奴二度と会いたくねえしな。まあいいか、取り敢えず今日はこの辺で終わりでいいか、他にもいく場所あるしな。
ロロットちゃんによる説明でかなりの知識が得られた。結構長居をしてしまったが、他の客が来なかった所を見ると余り儲かって無さそうな感じだな。
俺はカウンターで全ての会計を済まそうと、置いてあった硬貨を差し出しお釣りをもらうとした所、ふと視線に一冊の本が目に入った。
「これ何の本ですか?」
「これは、植物図鑑なのー。私が書いたんだけど中々売れなくてねー。エルフの知恵が詰まってるからお得なのよー」
手に取って中身を見てみると、数々の植物の説明や形状が書かれている。特に絵で花の形や葉の形が書かれていて、非常に分かりやすい。パラパラと数枚めくって行くと、俺が良く知っている雫草の事も書かれていた。
「これも買います」
「ま……ま、まいどありっー」
二度目のまいどあり頂きました。
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