ビキニ事件 周辺で操業の元乗組員などが国を提訴

ビキニ事件 周辺で操業の元乗組員などが国を提訴
k10010513551_201605091611_201605091612.mp4
62年前のアメリカの水爆実験で日本の漁船の乗組員が被爆したいわゆる「ビキニ事件」で、周辺の海域で操業していた漁船の元乗組員などが、被爆した可能性があるのに国が放射線量の検査を行わなかったなどとして、損害賠償を求める訴えを高知地方裁判所に起こしました。
訴えを起こしたのは、アメリカが昭和29年に太平洋のビキニ環礁で水爆実験を行った際に周辺の海域で操業していた漁船の元乗組員やその遺族など45人です。この水爆実験では、静岡県の漁船「第五福竜丸」の乗組員23人が被爆し、半年後に1人が死亡しました。
訴えなどによりますと、当時、周辺の海域には、およそ1000隻の船が操業していましたが、周辺の海域にいた元乗組員については、第五福竜丸の乗組員の被爆が明らかになったあとも国が放射線量の検査を行わなかったなどとしています。
このため、高知県などの元乗組員や遺族など45人は、国に対して元乗組員1人当たり200万円の賠償を求める訴えを、9日午後、高知地方裁判所に起こしました。「ビキニ事件」で国に賠償を求める訴えを起こすのはこれが初めてです。
今回の提訴について厚生労働省は「訴状を確認していないのでコメントできない」と話しています。
「ビキニ事件」を巡っては、国は第五福竜丸以外の一部の漁船の乗組員からも通常より高い放射線量が検出されていたという当時の測定結果を、おととし9月に開示しています。厚生労働省は、これらの資料を分析する研究班を立ち上げ、被爆線量の評価などについて今後、見解を示すことにしています。

訴えの内容は

今回の訴えでは、第五福竜丸の乗組員の被爆が明らかになったあと、周辺の海域にいた元乗組員に対する放射線量の検査などを行わなかったこととともに、国による被爆に関する記録の開示の在り方も問うています。
元乗組員や支援団体などは、被爆に関する記録について国にたびたび開示を求めてきたということですが、国が記録を開示したのは事件から60年後のおととし9月でした。
国が開示した記録には、第五福竜丸以外の12隻の漁船の一部の乗組員から、通常自然界で被ばくする年間の放射線量のおよそ2倍に当たる4ミリシーベルトを超える放射線量が検出されたことが記載されていました。
原告らは、国が長年にわたって記録を開示しなかったことで元乗組員らの被爆の実態解明が遅れたほか、アメリカに対して賠償を請求する機会が失われ、精神的な被害を受けたと訴えています。このため原告らは、国に元乗組員1人当たり200万円の賠償を求めています。