米規制当局はニューヨークやその他の数都市のタクシー業者に融資する信用組合の財務状況を綿密に調査している。ウーバーによる混乱がタクシー業界の垣根を越えて広がっているためだ。
ここ数日で提出された文書によると、延滞債権は、メルローズ・クレジット・ユニオンで今年の最初の3カ月で2倍以上となり、それより小規模の金融業者であるロムトでは3倍以上となった。
■配車アプリ台頭、金融機関に打撃
ニューヨークのタクシーは、シカゴなどの他の都市と同様に「メダリオン」と呼ばれる営業許可証の取得が義務付けられている。
ほんの3年前はニューヨークのメダリオンは1件100万ドル以上で取引されていた。だが、ウーバーやリフトといったタクシー配車アプリの台頭がその取引価格に打撃を与えており、現在は50万ドルで売られていることもある。
この価格の下落で、数千のタクシー業者にメダリオンの購入資金を融資している金融機関が打撃を受けている。
最も大きな影響を受けているのは信用組合、つまり預金を受け入れて融資を行う協同組合方式の金融機関だ。また、銀行も数行が同様の問題を抱えている。全米信用組合庁(NCUA)の調査部門の副ディレクター、ティム・セガーソン氏は、NCUAは状況を注意深く監視していると述べた。同氏は限られた金融機関がこうした融資案件を大量に保有していると話す。
同氏は「こうした金融機関はこれまでリスク低減よりもローンの供与に注力してきた」とした上で、「これから起こると思うのは、これらの金融機関がタクシー業者への融資から生じうるすべての損失を最小限に抑えることに再び集中することだ」と語った。
メルローズ・クレジット・ユニオンの報告義務がある延滞債権額は12月末時点の1億5500万ドルから3月末時点には3億7100万ドルに急増した。1年前は570万ドルだった。ロムトの延滞額は第1四半期に640万ドルから2240万ドルに膨れ上がった。1年前はわずか280万ドルだった。
メルローズやロムトなどは、不当な競争で業界が「壊滅的な損害」を受けたとして、ニューヨーク市タクシー・リムジン委員会などの当局を相手取って訴訟を起こしている。
メルローズとロムトにコメントを求めたが、回答は得られなかった。
By Alistair Gray
(2016年5月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.