増えすぎた情報、意思決定プロセスの複雑化、チャネルの多様化、コンタクトポイントの煩雑さなどマーケターを悩ます事象は事欠かなくなった昨今のデジタルマーケティング界隈ですが、結局のところ商品やサービスの値下げをして広告を打った方が手法としてシンプルですし、利益が上がるのではないかという事です。ただし問題は、顧客にとっては安く商品が手に入りますが、企業にとっては、利益とブランドの毀損にもなりかねません。
では、どうすれば顧客にとっても、企業にとっても良好な関係を築くことができるのでしょうか。その答えがカスタマージャーニーにあるのではないでしょうか。カスタマージャーニーを机上の空論だけでなく現実的な施策実行を行う事においては、ほとんどの企業が実行できていないのではないでしょうか?
そこには、下記のような多くの疑問や問題が存在しています。
- 効果が想定できないので、結局リスティング広告やバナー広告に終始する
- プロジェクト化してみたが、最初のペルソナ設計の段階でつまづく
- 構築したカスタマージャーニーにリアリティがあるのかないのか判断できない
- そもそも本当に、カスタマージャーニーが必要なのか
このように、マーケティング施策の最適解を見つけられず、カスタマージャーニーを設計する上で、重要なことが抜けているような気持ちが拭えない方も多いでのはないでしょうか?
本稿では、まずはカスタマージャーニーを定義し、どのように設計するのか、そしてカスタマージャーニーの構築と運用について解説します。
カスタマージャニーの定義
あるプロジェクトでは、顧客を理解し価値提供の時間、場所を最適化していくための手段としました。
カスタマージャーニーの概念は新しくとても広いので、各マーケッターが独自に解釈してることが多く、議論していても食い違ってしまいことが多々ありました。『プロジェクトにカスタマージャニーとは』を、プロジェクトチームですり合わせる必要がありました。企業によっては、カスタマージャーニー自体がそもそも必要なのかという議論すらおきました。
カスタマージャニーを『顧客を理解し価値提供の時間、場所を最適化していくための手段」としたプロジェクトでは、
さらにポイントとして
サービスや商品の情報を整理しました。
- For Who 顧客の明確化 誰のためのサービスか
- For What 顧客はなんのためにその商品、サービスを購入するのか
- For When 顧客はいつ欲しいのか
その上で
- When 顧客はいつで、その商品、サービスが欲しくなるのか
- Where 顧客はどこで、その商品、サービスが欲しくなるのか
- How 顧客はどうやって、その商品、サービスの情報を手に入れるのか
を精査しました。
カスタマーのジャーニーを設計するのに、顧客(カスタマー)と設計(ジャーニー)する理由がどこか捉えきれていなかったのかも知れません。
カスタマージャーニーの設計
また、カスタマージャーニーの定義は設計運用の目的をも内包するので、当たり前のことかもしれませんが、言語化しプロジェクトチームの共通認識をする工程を経ないと、全員が同じ方向性でプロジェクトが進まなかったのだと思います。
しかし、カスタマージャーニーの設計の上でも問題は生じます。
- 分析に時間がかかりすぎる
- タッチポイントが整理できない
- カスタマージャニー自体のROIの判定が難しい
オンライン、オフラインを含めると無数のタッチポイント、カスタマージャーニー上のマイルストーンがあります。既存の顧客、新規顧客、戦略的に拡大したい顧客など、ターゲットを分けるとさらに複雑になっていきます。これらを全て把握し、カスタマージャーニーを設計するのは非常に時間がかかり、そうこうしているうちに、外的要因は日々一刻と変化してしまいます。
よって、検証可能な既存の顧客データをクレンジングして、既存のカスタマージャーニーを可視化します。実は、すでに、どんな企業でもカスタマージャーニーらしきものは存在していて、それを意図的に目的に沿って設計できていない場合が多いように感じます。機能しているタッチポイントを整理してターゲットごとにベストなジャーニーは何のかを設計するだけでも、無駄な部分に余計な予算を投下せずに済むこともあります。
しかし、現状では、カスタマージャーニーのそれ自体のROIの判定は非常に難しいのではないかと感じています。それぞれのタッチポイントでの検証はできますが、カスタマージャーニーそのものが、効果が高いものかどうかは、すべてのタッチポイントでの数字を総合的に判断し、売上が上がったのか?ブランド体験を効果的に提供できているのか?などのKPIを個別に設定し検証していく必要があります。
カスタマージャーニーに基づくマーケティング施策の実装と運用
設計ができたら、次は実装と運用です。ここでは、かなり緻密で、細かい作業が必要になります。
リスティング広告を一例にあげてみます。
リスティング広告では、GoogleとYahoo!の広告ネットワークであればポータルサイトやブログ含めて多様なサイトへ広告を配信することができます。顧客が普段閲覧しているブログやサイトの仮説を立て検証整理して、ピンポイントで広告を配信します。
SEO対策ならば、顧客が検索するであろうワードをピックアップしジャーニーマップ上のどのタイミングでどう言った言葉で検索するかを一つ一つ設定し、それにあったランディングページを作成することもあります。
これに、Emailマーケティング、SNSマーケティング、WEBサイトの運用、さらにオフラインも入って来れば作業は膨大です。これら、一つひとつにKPIを設定しPDCAを回すことは難しい状況です。
マーケティングオートメーションツールの導入により、以前に比べはるかに運営管理がシンプルになりました。
これからは、新たなアプリケーションへの対応とオフラインとのコネクトが課題になってくるだろうと考えています。
著者プロフィール
小曽根 裕之
プロジェクトマネージャー
Pierry Software 米国本社にて米国・日本におけるマーケティングオートメーションの導入
Google Analytics 個人資格(GAIQ)認定。