閣下と吸血鬼の婚活シリーズ
閣下と呼ばれる高圧的な女性と吸血鬼を自称する男性の書き手のお見合い体験記が面白い。すでにかなり続いていたようなのだけど、見つけられた中での最古は3ヶ月目。もう1個前がありそうなのよね。
閣下:見合い相手。婚活初心者。すっごいえらそうなので閣下。でもすっごいえらそうな態度ではないとの本人談。
吸血鬼:書き手。婚活ベテラン。紹介者から初心者向けとか男嫌い向けとか人嫌い向けとか思われてる疑惑。
婚活体験記と言えば色々な異性に出会いと別れと繰り返していくのが定番なのだけど、ずっと同じ人と「合わない」と言い合いながら付き合い続けているのが珍しい。
不安って何ぞ、と思ったので言うように促すが、どうにも言い渋る。
言い渋る理由を尋ねると、俺が彼女に一切ダメ出しをしないのに、彼女が俺にダメ出ししてばかりいる形になるからだ、との事。
とは言えそこで「うんそうわかったじゃあね~」で帰るのも不実なので、大丈夫!ボクは気にしないよ!言ってごらん!さあさあ!と、受け止めるレシーブ姿勢を見せた。
そしたらまあ。
堰を切ったように。
出てくること出てくること。
閣下に対して色々と思うことがありつつ、閣下からもさんざんのダメ出しをされる。吸血鬼氏の視点からのみ書かれているので、ある種の「信頼出来ない書き手」になっているのだけど、言われるようなことはしていたのだろう。
ダメ出しを真に受けて行動する
・言われた通り、車を買い替えた(預金が豪快に吹き飛んだ)
・言われた通り、ダイエットに励んだ(膝が痛んで洞窟歩きに適さなくなった)
吸血鬼氏がすごいのは、結局はそのアドバイス通りに行動してしまうこと。閣下は電車男のスレ住人を兼ねている。
閣下「財布がボロいから買い替えろ」(余計なお世話です閣下)
閣下「レシート入れないで捨てろ」(本当に余計なお世話です閣下) 閣下「カード類はまとめておいて使うものだけ財布入れろ」(それはあなた独自のやり方であって従う理由はありません閣下) 閣下「マックの壁によっかかんな」(あなたに洞窟歩かされて疲れたからです閣下)
それで、どんどん目についたことを言われるようになる。婚活っぽい場で会った人のことを考えると、ちょっと合わないと思われたら黙って関係がきれてしまう前提なので珍しい。「少なくとも目の前の人はそう思っている」という意味でもダメ出しの機会は貴重だったりもするのだけど「お前に言われたくない」となる感じもわかる。
恋愛とは理不尽をアクティブスキルで突破する苦行ではない
閣下のバックグラウンドは発言の節々から見えてくるのだけど、現実はラノベではないし、だから仕方がないという話ではない。逆に吸血鬼氏のバックグラウンドはあまり見えてこないのだけど、地方に在住しており、「先生」と呼ばれる仕事であるという発言があるため、おそろくクライアントの理不尽な要求に見下しつつも応えていくことが日常化しているように思われる。
「車とか財布とかなぜ買うのかがわからない」(貴女が買えって強制したようなものでしょう閣下)
「何で相手から言われた通りにしてしまうのかわからない」(貴女と仲良くしようとしているからなんですが閣下)
「はいはい言われていたら流されている気分になる」(いいえという選択肢ないじゃないですか王様)
それで、相手の要求に対してほいほいと行動すること自体が逆鱗に触れる。相手の要求に応えるための行動こそが恋愛であると思えてくることもあるのだけど、実際にはそういうものではなくて、大抵はパッシブスキルをに現れてくる。気力や体力を消費するアクティブスキルで要求に応じようとしていることがわかると逆に気を使うし、ずっとは続かないことが見えてくる。努力や行動への見返りや罪悪感で相手をコントロールしようとし始めたら終わりだ。
なんてことを言いつつも、この関係は続いていくように思われる。僕自身もクライアントの理不尽に応える仕事が長いし、自分から「別れよう」ということがまずない人間なので、相手も自分から別れないタイプならズルズルと続いてしまうことが分かる。現状、あるべき姿、課題、原因、解決策。その先にあるものは分からないけれど、なるべくであれば疲れない関係性を目指したいと個人的には思う。6ヶ月目の報告も楽しみにしたい。
- 作者: 元木 一朗
- 出版社/メーカー: ブックマン社
- 発売日: 2011/12/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 23回
- この商品を含むブログ (2件) を見る