長野県のニュース

妙高の火打山 守れ、ライチョウ 「植物」除去も

 国特別天然記念物ライチョウ繁殖地の火打山(新潟県妙高市、2462メートル)で植生が変化し、ライチョウの生息が脅かされているとして、環境省長野自然環境事務所(長野市)と妙高市が一部植物の試験的な除去も視野に山頂周辺の植生調査を行うことが8日、分かった。同省によると、一帯は長野、新潟両県にまたがる妙高戸隠連山国立公園の特別保護地区で、植物の採取が厳しく規制されている。同事務所によると、植物の除去を含めた人為的な保護が実施された場合、全国的にも珍しい取り組みになる。

 同事務所によると、ライチョウは温暖化による植生変化の影響を受けやすいとされており、今回の取り組みを長野県内での保護活動などにも生かす方針。

 同省などによると、火打山は日本最北のライチョウの繁殖地とされる。近年、ライチョウの餌になるコケモモなどの背丈の低い植物が広がっていた採食地に背の高いイネ科の植物などが繁茂。コケモモなどに光が当たらず生育に支障が出てきているという。

 同事務所によると、特別保護地区内の山頂一帯で雪解け後、5メートル四方の調査区域を10カ所ほど設けて植生を調べる。1985(昭和60)年に一帯で調査した記録と結果を比べ、採食地を脅かす植物の繁茂が科学的に明らかになれば試験的な除去を含めた対策を検討する意向だ。

 同事務所の福田真・自然保護官は「植生変化がライチョウの生息に悪影響を及ぼしていることは確実とみているが、特別保護地区なので慎重に進める必要がある。手を入れるとしても試験的に除去する」とする。

 同事務所などは、信州大名誉教授で中村浩志国際鳥類研究所(長野市)代表理事の中村浩志さん(69)を含めた専門家らにも近く意見を聞く予定という。

 中村さんの2004年調査では、火打山のライチョウ生息数は推定21羽で、集団としては国内最小。中村さんは火打山の環境について「他の繁殖地に比べて標高が低く、温暖化の影響が出て植生が変化しやすい」とする。その上で、「ライチョウ保護には人為的にイネ科の植物などを除去することが必要。試験的に除去しコケモモなどが実を付けるようになるか数年かけて確かめることが必要になる」とみている。

(5月9日)

長野県のニュース(5月9日)