先日、日本の熊本県で震度7の非常に強い地震が立て続けに発生し、数十人の犠牲者が出て今なお数千人が避難所で暮らしている。韓国から近い九州の中心都市の一つで、このように大規模な地震が発生したことは非常に心が痛い。ちなみに熊本県は日本で剣聖として知られる伝説の武士、宮本武蔵(1584-1645)ゆかりの地だ。武蔵は戦国時代の末期に生まれ、江戸などを転々としていたが、57歳となった1645年に熊本城主の細川忠利に招かれ、この地で5年住んだ後に死んだ。武蔵は晩年に熊本市近郊、金峰山の岩戸で『五輪書』を執筆して日本の武士道を完成させたことや、また長短2本の刀を同時に使う「二天一流」と呼ばれる兵法を築いたことなどでも知られている。
大韓民国の検事たちも本当の武士を夢見るのであれば、武蔵のように長短2本の刀を正確に使い分けてほしいものだ。絶対に許すことのできない巨悪は大きな刀で厳しく断罪し、何らかの事情があれば小さい刀で正確に患部だけを切り取らねばならない。小さな犯罪に大きな刀を振り下ろせば庶民は耐えられないし、大きな犯罪に小さな刀を使えば法の秩序が崩壊するだろう。
武蔵は一生の間、60回以上も真剣勝負をしたそうだが、1回も負けたことはなかった。もちろん刀の扱いに優れているだけで必ずしも勝てるとは限らない。武蔵も戦うべきでない状況では戦わなかったし、戦うときは事前に周囲の地形や環境を正確に把握し、有利な立ち位置を先に確保するなど、完璧な準備をしたからこそ勝ち続けることができた。検察による捜査も同じだ。事前に緻密な情報収集と内偵を行って事実関係を正確に把握し、証拠をしっかりと確保あるいは検討するなどして、捜査を必ず成功に導かねばならない。いったん始めれば短期間で終わらせるのがよく、もし操作を行っても容疑があいまいな場合は直ちに中断しなければらない。
武蔵は死の1週間前、自らの生涯を振り返って反省し、これを21の教訓として『独行道』という短い文章にまとめて弟子に与えた。その中には例えば「自分中心の心を捨て、世の中のことを深く考えるように」「生涯、欲深いことを考えてはならない」「命が危険な状況でも名誉と誇りを失ってはならない」といった教えがある。ただ一人、孤独に人生を歩みながら武蔵が求めてきた武士としての真実の道。その生涯の結実とも言える言葉には、今の時代を生きるわれわれの心にも大きく響くものが幾つもある。