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WASTE OF POPS 80s-90s

2016年05月08日

ドラマ主題歌の件、もうちょい深堀りしてみました。
「ドラマ主題歌・挿入歌に抜擢されることで一般への認知を広め、歌番組等に出演することで露出が高まりヒットして、そのヒットの結果その後の継続的な活動への道筋を付ける」というずっと一般的であったプロモーション・パターン、一般的にあったのはどうも2005年か2006年までっぽい感じです。

当然既に一般的認知を持ったミュージシャンが主題歌を担当し、ドラマとミュージシャンの知名度の相乗効果で双方のヒットを狙うという事例も当然その頃からたくさんあったのですが、今回は「デビューしてはいたものの大きなヒットに恵まれず一般的に認知されているとは言いにくい」「デビュー(メジャーデビュー)にあたって一気に一般認知を獲得したい」立場だったミュージシャンのそれに限って。

2005/1C:D-51 / NO MORE CRY「ごくせん」
2005/2C:クレイジーケンバンド / タイガー&ドラゴン「タイガー&ドラゴン」
2005/3C:サンボマスター / 世界はそれを愛と呼ぶんだぜ「電車男」
2005/4C:レミオロメン / 粉雪「1リットルの涙」
2005/4C:Def Tech / My Way「ブラザー☆ビート」

2006/1C:MONKEY MAJIK / Around The World「西遊記」
2006/1C:絢香 / I believe「輪舞曲」
2006/2C:AI / Believe「医龍」


ここまで。この2006年第2クール以降そういう例がふっつりとなくなります。
それ以降ドラマ発と呼んでいいのは2008年の第1クール、「エジソンの母」の主題歌になってヒットしたSuperflyの『愛をこめて花束を』が最後。
2010年第1クールには「泣かないと決めた日」の主題歌としてmiwaが『don't cry anymore』をヒットさせていますが、彼女の場合はデビューにあたっての諸々のプロモーションの一環としてのドラマ主題歌でもあるため、ちょっと微妙かもしれません。

で、ふっつり途切れた2005-2006年頃に何があったかというと、想像できちゃうと思いますが「着うた発のヒット」の登場です。

2005年、最も売れた着うたは「恋のマイアヒ」。発端が2ちゃんねるのFLASHであり認知が急激に広まったこと、元曲がルーマニアだったことで権利や制作の諸々もあったでしょう、真っ当なCDシングルが出ないまま着うたのみでまず一般流通し、後追いでCDがリリースされたという当時では特異な事例ですが、それがきっかけになって「着うたから仕掛ける」というパターンがここから一般化します。

そして同時に「CDチャートと着うたチャートの乖離」も始まります。以下は2005年着うたチャート(後ろのカッコ内はオリコンシングルチャートの年間順位)。

01:オゾン / 恋のマイアヒ(N/A)
02:REIRA starring YUNA ITO / ENDLESS STORY(20)
03:大塚愛 / プラネタリウム(35)
04:BENNIE K / Dreamland(18)
05:コブクロ / ここにしか咲かない花(15)
06:ORANGE RANGE / ラヴ・パレード(8)
07:ORANGE RANGE / キズナ(12)
08:中島美嘉 / GLAMOROUS SKY(10)
09:ORANGE RANGE / 花(21)
10:Crystal Kay / 恋におちたら(30)


もちろんオリコンチャートは上の方に、過去から現在に至るまで真っ当な形でネット配信しないジャニ系とかもいますし、当時はネット配信しない組ももう少しいて、CDよりも遅らせて配信開始するというパターンもあり。その多少限られた環境も相まって2005年から特異なチャートにはなっていたわけですね。
そして2006年は以下のような感じ。

01:コブクロ / 桜(30)
02:SEAMO / マタアイマショウ(59)
03:絢香 / 三日月(49)
04:Kaoru Amane / タイヨウのうた(10)
05:倖田來未 / 恋のつぼみ(28)
06:DJ OZMA / アゲ♂アゲ♂EVERY☆騎士(41)
07:伊藤由奈 / Precious(42)
08:Aqua Timez / 決意の朝に(48)
09:大塚愛 / プラネタリウム(99)
10:BONNIE PINK / A Perfect Sky(72)


CDチャートとの乖離がよりはっきりしてきました。特にSEAMO。この曲のタイアップは『ビートたけしのTVタックル』エンディングテーマであり、「なくてもあんまり変わらない」レベルのそれですから、正味これが日本初の「着うた発の大ヒット曲」と捉えていいのではないかと思います。2005年のENDLESS STORYは映画、Dreamlandはコカ・コーラのCMという「元」がありましたので。

つまり2006年のここで新旧の「ヒット曲の構造」が入れ替わったと言えるのではないかと。

ただ、当時の人たちはこの時点では気付いていなかったと思うのですが、この新しい構造には大きな欠陥がありました。従前から言うていることの繰り返しにはなりますが、着うたはヒット曲は生めてもスターは生めない、ヒット曲を生んだ人の人気が次の曲、次の次の曲まで続かない。「人気が人に付かずその曲にしか付かない」点です。

着うた発のヒットを出した人をこれ以降挙げていくと、

2007:RSP / Lifetime Respect−女編−
2007:SoulJa feat.青山テルマ / ここにいるよ
2008:青山テルマ feat.SoulJa / そばにいるね
2008:Spontania feat.JUJU / 君のすべてに
2008:清水翔太 / HOME
2008:Lil'B / キミに歌ったラブソング
2009:JUJU with JAY'ED / 明日がくるなら
2009:ヒルクライム / 春夏秋冬
2010:西野カナ / 会いたくて 会いたくて
2011:ソナーポケット / 好きだよ。〜100回の後悔〜
2011:Rake / 100万回の「I love you」
2012:シェネル / ビリーヴ
2012:Ms.OOJA / Be...


こんな感じになるわけで、誰がとは申し上げませんが死屍累々でございます。
ヒットに浮付かずガッチリ本格派路線に舵を切っていったJUJUと、当時から出す曲出す曲着うたヒットしていたため、着うた界隈で唯一「人に付かない」地獄から逃れていて、かつ現在完全に別路線で勝ち切った感のある西野カナは別格ですが。

果たして結果としてこういうことになったのは、プロモーションとしてはドラマのタイアップと全盛期の着うたサイトで目立つところ押さえるのと、どこまでコストがかかってどうこうということを知りませんので何とも判断できないのですが、ミュージシャンにとってよかったのか悪かったのかと言えば、正味あんまりよくなかったんちゃうかとも思います。

ただこれも従前から言うていますが、レーベルの販促担当やA&Rの方々、近年その多くが単年度の契約社員と聞いていますので、そりゃ一発で当てていかないと如何ともし難いという状況もあり、そうせざるを得ないということも薄々わかっています。

そういう環境で現状どうなっているかというと、1から育てていっては間に合いませんから、既にインディーズで活動してそれなりに結果を出し始めているバンド、既にそれなりのファン層を持って活動しているアイドルグループ、認知は限定的にせよ再生数や固定層をきちんとつかまえているボカロPや歌い手さんあたりに群がってメジャー契約し、とりあえずその元々あるファン層中心に回しながら、どかんと大ヒットさせるチャネルはもうないに等しいので、ちょこちょこ施策を投下しては少しずつファンを増やしていくという方針。

ナタリーが人気サイトになった背景にはそのスタイルがちょうどその時欲されていた「ちょこちょこ施策」にマッチしていたからだよなあとも思ったりもします。

何かちょっとのつもりでぼんやり書き進めていったらどんどん話が長く大きくなっていっている気がするのでここで切ります。
まあ、日本の大衆音楽、全体的にはそんな感じだと思っているんですよ。

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そうだ、閉店したタワレコがギニア湾沖に漂流しがちな件については、お答えをいただきました。
この地点はグリニッジ標準時と赤道が交わる場所、要するに経度0度と緯度0度の交点。店舗情報を削除すると位置情報もリセットされるのでここに来てしまうと。
ここまで明解に合点がいったのは久しぶりなのですが、明解すぎて面白くない気もするのでやっぱり閉店したタワレコの怨念が集まる魔の海域ということにしておきます。