発達障害は、脳機能の発達が関係する生まれつきの障害です。発達障害がある人は、コミュニケーションや対人関係をつくるのが苦手です。また、その行動や態度は「自分勝手」とか「変わった人」「困った人」と誤解され、敬遠されることも少なくありません。それが、親のしつけや教育の問題ではなく、脳機能の障害によるものだと理解すれば、周囲の人の接し方も変わってくるのではないでしょうか。
ここでは、発達障害のある人を理解するために、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害など、主な発達障害の特徴を紹介します。なお、発達障害は、複数の障害が重なって現われることもありますし、障害の程度や年齢(発達段階)、生活環境などによっても症状は違ってきます。発達障害は多様であることをご理解ください。
コミュニケーション能力や社会性に関連する脳の領域に関係する発達障害の総称です。 自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害を含みます。
自閉症
自閉症は、「言葉の発達の遅れ」「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、こだわり」などの特徴をもつ障害です。最近では、自閉症スペクトラムと呼ばれることもあります。
Aちゃんの例
自閉症のAちゃんは、急に予定が変わったり、初めての場所に行ったりすると不安になり、動けなくなることがよくあります。そんなとき、周りの人が促すと、余計に不安が高まって突然大きな声を出してしまうことがあります。周りの人から、「どうしてそんなに不安になるのか分からないので、何をしてあげたらよいか分からない」と言われてしまいます。でも、よく知っている場所では、一生懸命、活動に取り組むことができます。
アスペルガー症候群
アスペルガー症候群は広い意味での「自閉症」に含まれる一つのタイプで、「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、興味・関心のかたより」があります。自閉症のように、幼児期に言葉の発達の遅れがないため、障害があることが分かりにくいのですが、成長とともに不器用さがはっきりすることが特徴です。
Bくんの例
友だちと話しているときに、自分のことばかり話してしまって、相手の人にはっきりと「もう終わりにしてください」と言われないと、止まらないことがよくあります。周りの人から「相手の気持ちが分からない自分勝手でわがままな子」と言われてしまいます。でも、大好きな電車のことになると専門家顔負けの知識をもっていて、友だちに感心されます。
注意欠陥多動性障害(AD/HD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、「集中できない(不注意)」「じっとしていられない(多動・多弁)」「考えるよりも先に動く(衝動的な行動)」などを特徴する発達障害です。
Cさんの例
AD/HDのCさんは大事な仕事の予定を忘れたり、大切な書類を置き忘れたりすることがよくあります。周囲の人にはあきれられ、「何回言っても忘れてしまう人」と言われてしまいます。でも、気配り名人で、困っている人がいればだれよりも早く気づいて手助けすることができます。
学習障害(LD:Learning DisordersまたはLearning Disabilities)とは、全般的な知的発達に遅れはないのに、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力を学んだり、行ったりすることに著しい困難を示すさまざまな状態をいいます。
Dさんの例
会議で大事なことを忘れまいとメモをとりますが、本当はメモをとることが苦手なので、書くことに必死になりすぎて、会議の内容が分からなくなることがあります。後で、会議の内容を周りの人に聞くので、「もっと要領よくメモをとればいいのに」と言われてしまいます。でも、苦手なことを少しでも楽にできるように、ボイスレコーダーを使いこなしたりと、ほかの方法を取り入れる工夫をすることができます。
トゥレット症候群(TS:Tourette's Syndrome)は、多種類の運動チック(突然に起こる素早い運動の繰り返し)と1つ以上の音声チック(運動チックと同様の特徴を持つ発声)が1年以上にわたり続く重症なチック障害で、このような運動や発声を、本人はそうするつもりがないのに行ってしまうのが特徴です。
Eさんの例
Eさんは授業中、自分の意思に反して突然大きな声をあげたり、首を何度も振る動作をしてしまいます。そのため学校の友達には「落ち着きがなく迷惑なクラスメート」と言われてしまいます。こういった症状が出てしまうことが、障害によるものであることを、みんなに理解してもらいたいと思っています。
吃音(Stuttering)とは、音の繰り返し、ひき伸ばし、言葉を出せずに間があいてしまうなど、一般に「どもる」と言われる話し方の障害です。幼児・児童期に出始めるタイプ(発達性吃音)がほとんどで、大半は自然に症状が消失したり軽くなったりします。しかし、青年・成人期まで持続したり、青年期から目立つようになる人や、自分の名前が言えなかったり、電話で話せなくて悩む人もいます。
Fくんの例
Fくんは会話をしていると、「きききききのう・・・」と単語の一部を何度も繰り返したり、つっかえてすぐに返事ができないことがあるので、友人から笑われます。「ゆっくり話しなさい」と言われて、そうしようとするとますます話せなくなります。これが障害によるものであることを、みんなに理解してもらえるといいなとは思いますが、恥ずかしいので言えません。
4月2日は「世界自閉症啓発デー」です。
2007年12月の国連総会において、全世界の人々に自閉症を理解してもらう取組を進めるため、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」(World Autism Awareness Day)とすることが決議されました。
日本でも、毎年、世界自閉症啓発デーの4月2日から8日までの1週間を「発達障害啓発週間」として、自閉症をはじめとする発達障害について広く啓発する活動を行っています。
週間中は、シンポジウムの開催や全国のランドマークのブルーライトアップなどの活動を行っています。
皆さんも、世界自閉症啓発デー・発達障害啓発週間をきっかけに、自閉症をはじめとする発達障害についての知識・理解を深めてみませんか。
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「世界自閉症啓発デー」日本実行委員公式サイト