『甲鉄城のカバネリ』。「荒木哲郎監督の最新作」ということで見ているのだが、「今まで荒木哲郎監督が手がけてきた全ての作品に似ている部分があるが、でもどの作品とも違う」という印象を受ける。「ゾンビ物」という点では『ハイスクールオブザデッド』だが、人類が怪物に蹂躙される恐ろしさやグロテスクではあるがどこかで生命の儚さを感じさせる雰囲気は『進撃の巨人』っぽくもある。主人公達カバネリはウィルスにより誕生した存在である事から『ギルティクラウン』っぽさもあるのだが、作品全体を支配する空気感はどの作品とも違っていて異質なものだ。
物語自体はゾンビ物の王道とも言えるストーリーではあるものの、拠点が「甲鉄の汽車」という事もあって運命共同体のような趣きが強く出ている。「この汽車をとにかく守らなければならない」というのは分かりやすいけど、反面シチュエーション面で飽きやすくなるので、この辺をどうクリアしてくるのだろう。荒木哲郎監督だから、何らかのアイデアがあるとは思うのだが、四話まで見た感じだとまだわからないな。
あと出来ればこの作品は「一作品」で終わってほしくない。「ゾンビによって危機に陥った蒸気文明」というだけで面白いし、「甲鉄城」のような汽車の存在もある。主人公達の乗る甲鉄城以外の汽車にスポットを当てた外伝とかあってもいいんじゃないかなぁ。
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ピアノの優しいタッチとヴァイオリンの美しい旋律がきらびやかでピュアな印象を与える「ドラマチックLOVE」に男と男の激しい戦いを盛り上げた「EZ DO DANCE-K.O.P REMIX-」などの劇中楽曲が収録されたオリジナル・サウンドトラックが発売されても、ファンの熱も勢いも衰えることなく、ソフト発売や9月のイベント、仁科カヅキの誕生日もあってむしろ高まっている『KING OF PRISM』。
公開当初は監督ですら予想しておらず、今現在も全国劇場にて公開中と異例のロングランヒット作品となったわけだが、『KING OF PRISM』はなぜここまでのロングランヒットになったのだろうか。
考えられる要因としては『KING OF PRISM』の名物として、既に各種メディアなどでも特集が組まれるほど大きく取り上げられている「応援上映会」が挙げられるだろう。菱田正和監督の手がけた作品としては三度目(プリリズ・プリパラ関連作品としては四度目)の開催となる応援上映会は「コスプレOK!声援OK!サイリウムOK!」と従来の映画の鑑賞スタイルからは大きくかけ離れた上映会で、『ずっと前から好きでした。』や『遊戯王』などでも開催が決定するなど、一作品だけに留まらない広がりを徐々にではあるが見せつつある。
しかしながら、個人的にはこの応援上映会の盛り上がりだけが『KING OF PRISM』のロングランヒットに繋がっているわけではないように思う。もちろん作品自体が素晴らしい出来である事や、「応援上映会」というオンリーワンの体験を生み出す企画がヒットの要因であることは間違いない。しかしそれだけでは話題がここまで長続きすることはないと思うのだ。
では作品そのものや応援上映会以外の何が『KING OF PRISM』をここまでのロングランする作品にしたのだろうか。
その答えは、4月27日にロフトプラスワンにて開催された「プリズムエリートの2次会」にて、エイベックスの西浩子プロデューサーが発言した「何もない週末を作ってはいけない」という言葉が全てを物語っている。
公開初日から追い続けてきた身として断言するが、確かに『KING OF PRISM』の公開初日から今日に至るまで「何もない週末」というものはなかった。
公開第一週から第三週までは菱田正和監督と西浩子プロデューサーが全国行脚する舞台挨拶が開催されていたし、舞台挨拶がない劇場でも入場者特典として週替りでクリアファイルや複製ミニサイン色紙、生フィルム風栞などの様々なグッズをもらう事ができた。
また公開第三週目突入となる1月23日には新宿ブルク7で「朝まで寝かせない!グンナイ♡トキメキオールナイト上映」と称されたオールナイト上映会が開催。オールナイト上映会としては恐ろしい数の座席数が用意されたのにも関わらず完売した事で、大きな話題を呼んだ。
第四週目突入となる1月30日にはユナイテッドシネマ豊洲にてトークショー付き上映会として「エーデルローズ新入生の集い~アンコール~」が開催され、二月に突入してからは公開劇場も拡大。14日には「愛をいっぱい届けてね!オーバー・ザ・バレンタイン上映会」として「本編上映開始前に一条シンからファンへのメッセージが送られる」というこの日限定の特別な上映会が、2月28日・29日には一条シンと如月ルヰの誕生日を記念した「一条シン&如月ルヰ 生誕上映会」が全国で開催。劇場にはメッセージボードが設置され、ファンが直接愛を届けられる熱い上映会となった(生誕上映会から少し前後するが、2月26日からは全国各地の劇場で「今夜は寝かせちゃう!グンナイ♡全国4都市トキメキ一挙上映ツアー」が開催されており、北海道では菱田監督が突如飛び入り参加するサプライズが行われた)。
3月に突入してからは一時は公開が打ち切られ、上映劇場が減るほどの事態になった作品とは思えないほど次々とイベントが開催されていく。
まず9日に公開から三ヶ月突入を記念して「公開3ヶ月突入! サンキュー♡上映会」が開催。13日・14日には「愛をいっぱいありがとう!ホワイトデー上映会」で神浜コウジがファンにメッセージを届け、21日にはサウンドトラック発売記念イベントが開催された。
4月1日~3日にかけては「新年度応援!エイプリル上映会」が開催され、上映開始前のメッセージには大和アレクサンダーがまさかの登場。裏声かつ女装でファンの前に姿を現すなど大和アレクサンダーファン(なおアレクの女性ファンは「アレクの女」と称される事が多い)にとってはもちろん、ここまで応援してきたファンにとっても「衝撃」の応援上映会となった。
以降は9日と10日レジェンド上映会や27日のプリズムエリートの二次会、29日・30日の「キンプリファン感謝祭」と続いていく(なおこれらは「公式側が仕掛けたイベント」であり、全国劇場では通常の応援上映会が開催されていた事を付記しておく)
以上のように『KING OF PRISM』には「何もない週」というものが存在しなかった。毎週のように新しい情報が投入され、話題が途切れる事がなかったのだ。それはつまり本作を見た人達の熱や勢い(プリリズシリーズ的に言い換えれば「煌めき」である)が失われる時間が全く無かったという事でもある。
毎週のように「見に行く理由」が生まれ、そして何度見ても楽しめる面白さが作品にはあり、定期開催されている応援上映会では、その時その瞬間に居合わせた観客達の生の反応まで作品の鑑賞体験に加わるのだ。これで盛り上がらないわけがない。今日の人気は、「公式側が何もない週末を作らないようにしていた」という事実を鑑みれば「必然」だと言えよう。今の人気は決して「偶然の産物」ではないのである。
とはいえ、最初の動きは「バレンタイン上映会すら不可能だったのでは?」と思えるようなものであったことは間違いない。バレンタイン上映会へと繋がったのは、多くのファンの応援があったからこそだ。
そんなファンの声援に応えんばかりに「様々な上映会を企画し、実行する」。そしてファンはその上映会に参加し、一生懸命「応援する」。そういうサイクルを構築することができたからこそ「今の『KING OF PRISM』」が生まれ、そのサイクルが次のステージを作り出していく。
9月11日。東京国際フォーラム。
そのステージで何が生まれるのか。一ファンとして見届けたいところだ。
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