■子どもと貧困

 昨年10月、大阪府内のアパートの一室。弁護士の男性(36)がドアを開けると、室内は薄暗かった。電気はつかず、カーテンのない窓から街灯の光が差し込み、ごみに埋もれた部屋を照らす。床には、携帯電話を充電するための乾電池が50個以上転がっていた。

 住んでいたのは高校3年で18歳の少年と、無職で17歳の妹。一緒に暮らしていた父親は3週間ほど前に失踪した。家財道具は炊飯器と洗濯機と毛布1枚で、所持金は110円。ハムスターだけがえさを与えられ元気だった。弁護士は「このままでは死ぬ」と感じた。

 児童福祉法の「児童」は18歳未満をさす。児童養護施設への入所は児童に限られ、2人がすぐに入れる施設は見つからなかった。

 弁護士は親から引き離し2人を独立させようと家を探したが、20歳未満のため親権者の同意がないと契約もままならない。生活保護の受給も渋られた。「みんなが少しずつ泣いてこの子らを助けませんか」と説得して回った。

 事情をくんだ大家が部屋を貸してくれ、生活保護を受けて布団も買った。「布団なんて3年ぶりやな」。少年は言った。