「…行きたくない」
「行きたくないじゃわからない。学校に行かない理由を言いなさい!」
子供が不登校になり、こんな会話が繰り返されたご家庭も少なくないと思いますが、私は不登校には大きく次のふたつがあります。
1.イジメや家庭環境にあきらかな理由があるケース
2.理由が全く分からないケース
前者は理由が明確ですから、その問題に対して対策を考え、具体的に行動することができます。片や後者のケースは親はもちろん、本人も「学校に行けない」また「行きたくない」理由がわかりません。もし理由を言ったとしても、それは曖昧なことがほとんどですから、対策を考えようもありません。
そのため、冒頭のようなやりとりに終始することになりますが、こんな質問は子供を追い詰めることになります。そのため、子供たちは身を守るため、「だって友達が…」とか「死にたい…」など思いつきの適当な返事をすることになります。
こんなやりとりが続き、「落ち着くまで様子を見るしかないな・・・」と、何の手も打てずに不登校が続いているというご家族は少なくないでしょう。
なお、この不登校の特徴とは、私の約20年のカウンセリング経験で子供たちから得たものです。(※この記事内容は経験談に基づくため、医学的根拠はありません。)
この記事を読めば、あなたのお子さんが学校に行きたくない理由。行こうとしても行けない理由。今までわからなかった不登校の原因が、その特徴から必ずご理解いただけることでしょう。ぜひご参考にしてください。
1.不登校の原因
不登校の原因は、「脳の栄養状態」と「体調不良」にあると私は考えています。これは、私がご紹介してきたアプローチで、すでに300名以上の子供たちが元気に登校するようになっている事実から確信していていることです。
この不登校の原因を理解する上で、脳の働きについての理解が必要ですのでまずはそこからご説明します。
脳の働きはとても複雑です。その一方で、脳をつくっている細胞はわずかふたつととてもシンプルです。神経細胞とグリア細胞。脳の細胞は、このふたつしかありません。あとは、血管があるだけです。
そんな脳の主役は千数百億もある神経細胞で、これがお互い手をとりあって複雑なネットワークをつくっています。しかし、この神経細胞は自力で生きることができません。それを助けているのがグリア細胞です。
グリア細胞が栄養を与えることで、神経細胞は成長して枝葉(軸索)を伸ばすことで、どんどん複雑なネットワークを構成することができます。このグリア細胞は、神経細胞のおおよそ10倍以上もの数で存在しています。
千数百億もある神経細胞ひとつひとつに栄養が必要である。そしてそこに栄養を与えるグリア細胞というお守役は、なんとその10倍もある。そう考えると、脳がいかに栄養を必要としているのか想像できることでしょう。
また、脳の感情物質や酵素など、その主成分はアミノ酸です。このアミノ酸とビタミンやミネラルが力を合わせて働くことで、私たちは活動ができます。こういったことからアミノ酸やビタミンB群、ビタミンC、カルシウム、マグネシウムなどを中心に、幅広く栄養をとらなければいけません。
そのため、もし栄養が不足したなら、脳は「栄養をしっかりとれ!」と自律神経を介して次のような指令を体に下します。
1)胃や腸への血液の流れを抑える
2)交感神経が働き、心臓の拍動を高め、活動に備える
3)活動をするため、筋肉に血液が集められる
4)栄養状態の悪化によるストレスに対抗するため、副腎からアドレナリン(不安・恐怖)とノルアドレナリン(怒り・イライラ)が分泌される
脳が栄養不足に陥れば、この反応は誰にでも起こります。誰にでも起こる一方、必要な栄養が満たされれば、この反応は治ります。不登校の子供たちは、身体に必要な栄養素が足りていないことでこの反応がずっと続いているのです。
この前提を理解していただき、次のような不登校の特徴をもとに、不登校の原因について考えてみましょう。
1.朝、登校前に頭痛や腹痛、吐き気がおきる
2.首や肩、背中のこったり疲れやすい
3.感情の起伏が激しい
4.登校しようとすると、足がすくむ
5.寝相が悪かったり寝言が多かったりする
6.不登校の理由があいまい
なお、この不登校の特徴とは、私の 約20年のカウンセリング経験で子供たちから得たものです。これらを元に、不登校の6つの原因についてご説明します。
1‐1.朝、登校前に腹痛や吐き気がおきるのは?
梅干しを見たときはもちろん、「梅干し」と聞いただけで私たちは口のなかに唾がたまります。このように、食事と消化液の分泌は自律神経(副交感神経)により自動的に調節されています。つまり、食事をとると、胃や腸は働こう(動こう)とします。
しかし、先ほどの説明の通り、栄養不足がおきれば胃や腸への血液の流れが抑えられることになります。胃腸もまた、血液からブドウ糖をガソリンとして酸素とビタミンからエネルギーをつくり働いていますから、血流が抑えられ栄養が不足すればエネルギーがつくれません。そのため、血流が抑えられるとこわばる(動きが悪く)なります。
緊張して顔がひきつっているとき、無理やり自然な笑顔などできません。また、足などがつった(こむら返り)とき、すぐに自然に歩けるようになりません。同じように、こわばった胃腸が動こうとしたとき、どうしてもうまく動けません。これが、不登校の子供たちの腹痛や吐き気の原因です。
なお、この胃腸の働きが悪くなったとき、ゲップやシャックリ、ガスがたまる(お腹がガスで張る)、口臭などの症状がでることがあります。また、便秘や下痢など排便にも影響がありますし、トイレに長くこもる傾向が強くなります。腹痛や吐き気などに限らず、胃腸症状は子供からSOSであることを忘れないでください。
1‐2.首や肩、背中がこったり疲れやすいのは?
栄養が不足すると、活動(狩りをしろ)という指令が体に下されます。このとき、筋肉に血液が送られることになります。そして、これが続くと筋肉にコリが生じることになるのですが、それは次のようなことがおきるからです。
筋肉はガソリンとしてブドウ糖を使い、ビタミンB1を利用してエネルギーをつくっています。このとき、その廃棄物(代謝産物)として必ず乳酸がでます。そしてこれが溜まると筋肉にコリが生じ、血流が悪化することでますますコリがひどくなります。
不登校の子供たちはみな、首や肩、背中などのコリを訴えます。もし、そういった訴えがなければ自覚していないだけですから、肩や背中を押してみてください。必ず「痛い!」と口にするはずです。
このコリは全身の筋肉でおこりえます。横隔膜がコルと呼吸が浅くなりますから、ため息が増えます。また、そのコリがひどくなれば息苦しさや酸欠感を訴えます。さらに、舌がコレば滑舌が悪くなります。
また、ふくらはぎがコルと、転びやすくなります。野球やサッカーなどスポーツをする子供なら、ねん挫などケガを頻繁に繰り返すことになります。これもまた、子供からのSOSであることを忘れないでください。
1‐3.些細なことで落ち込んだりイライラする!無気力。元気がない。
ストレスに対抗するため、アドレナリン(不安・恐怖)とノルアドレナリン(怒り・イライラ)が出続けている。そのため、五感からの情報、家族の表情や言葉にこれら不安やイライラが上書きされますから、すぐにカチンと反応したり落ち込んだりします。
こういった反応は、家族なら気を使わずにすみますからなおさらですが、言葉や態度、表情などがイヤでイライラしているのではありません。ネコに睨まれたネズミも、限界になれば窮鼠猫を噛むように、いつも不安だからこそ、その恐怖から逃げ出したい一心で過敏に反応することになります。
また、こういった反応をしたとき体の緊張はさらにひどくなります。このとき、よりアドレナリン(不安・恐怖)とノルアドレナリン(怒り・イライラ)の分泌が増えます。
ストレスを強く与える実験では、とくに強く交感神経が緊張したときアドレナリン(不安・恐怖)がでることがわかっています。そんなとき、無気力になったり元気がなくなるのは自然なことでしょう。
1‐4.登校しようとすると、足がすくむのは?
不意に「バンッ!」と大きな音がすれば、誰もが一瞬体が硬直します。このとき、大きな音という情報により、「いつでも逃げることができる」ように、また「いつでも戦うことができる」よう体に指令が下されます。
これが、ストレスに対抗する体の反応であることはすでにご紹介しました。また、1‐3で不登校の子供たちは〝いつも″不安であること、つまりいつも緊張していることもご紹介しています。これは、例えるならサスペンス映画を見ているようなもの。
サスペンス映画を見ているとき、「ワッ!」と大きな声をかけられたら誰もがひどく驚きます。そして、このサスペンス映画が終わったとき、誰もが「ふぅ~」と息を吐きだすことからも、映画を見ているとき緊張していることが想像できることでしょう。
サスペンス映画を見て緊張しているからこそ、大きな声でひどく驚いてしまう。同じように、不登校の子供たちはみな、ふだんから緊張しています。また、はじめから不安を抱えていますから、学校の情報がそこに上書きされたとき体はさらに緊張します。足がすくんで動けなくなるのはこういった理由からなのです。
1‐5.睡眠中の寝言や寝相、夢、昼夜逆転は?
自律神経には活動を担当する交感神経と、休息(食事や睡眠)などリラックスを担当する副交感神経のふたつがあります。このことから、日中は主に交感神経が働き、睡眠中は主に副交感神経が働くことが想像できると思います。
しかし、すでに繰り返し説明しているように、栄養が不足しているのならそれが満たされるまで交感神経が働くことになります。そして、寝ているときに交感神経が必要以上に働くと睡眠の質は悪くなります。
寝相なら、90度や180度回転したり、隣のヒトに乗っかって寝ていたりします。その一方で、緊張がひどければ横になって縮こまって寝ていたりします。また、会話のような寝言を口にするケースもあります。中には、夢遊病者のようにムックリ起き上がって歩いたりする子供もいます。
また、交感神経が必要以上に働くと夢もはっきり見ます。さらに、アドレナリン(不安・恐怖)とノルアドレナリン(怒り・イライラ)が夢に影響を与えますから、怖い夢や嫌な夢を見る傾向が強くなります。そのため、寝ているときにうなされる子供も少なくありません。
さらに、今までご説明してきたような反応とは、すべて本能的な働きの結果です。ならば、自然と暗闇を警戒することは自然なことですから、昼夜逆転になることも何も不思議なことではありません。また、事実として、栄養状態と体の不調が改善された子供たちはみな、自ら昼夜逆転を改善しています。
1‐6.学校に行かない。学校に行けない理由を言えない
「友達が自分の口を言っている。」ような気がする
「仲間外れにされる。」ような気がする
「先生が自分ばかり怒る。」ような気がする
「みんなに嫌われている。」ような気がする
アドレナリン(不安・恐怖)とノルアドレナリン(怒り・イライラ)がでると、五感からの情報に限らず、記憶や思考にも「不安」を感じることになります。何事にも不安になりますから疑心暗鬼になります。「〇〇のような(気がする)」のはこれらが原因であり、そのため情緒が不安定になります。
これは厚生労働省による調査ですが、どちらも情緒の混乱を不登校のきっかけとする回答が小中学生とも第一位です。また、すでにご紹介しましたが、混乱していれば無気力になりますし、対人関係に問題がでることも明らかです。
2.不登校の子供にすべき対策。その3つのポイント
私は次のような流れで不登校への対策をしていただけるようアドバイスしています。
2‐1.まずは十分に休ませること
情緒不安定なとき、もっとも問題になることは記憶です。「9.11」と聞けば誰もがあのジェット機がビルに突っ込む映像が思い浮かぶように、情緒が不安定なとき、ムリに登校することでそれが強く「苦手」とか「怖い」と記憶されることになります。
こういったことから、まずは、ゆっくり休ませることは最優先となります。
2‐2.十分に栄養をとらせる
ほうれん草は冬、キャベツは春と冬のはじめ、ニンジンは秋と、それぞれの野菜には旬の時期があります。しかし、栽培技術や輸入などにより、今ではほとんどの野菜が一年中手に入るようになりました。しかし、これが私たちの栄養摂取に大きな影響を与えています。
実は、野菜を旬の時期とそうでない季節外れの時期を比べると、その栄養価は2倍~それ以上の違いがあります。これはほうれん草やニンジンに限らず、他の野菜でも同じ調査結果が出ているそうです。また、野菜の栽培方法により、食材の栄養価が落ちているという調査結果もあります。
昔は自然と旬のものを食べていましたが、上記のようなことも栄養が十分にとれない理由のひとつです。また、パン食やパスタ、ラーメン、冷凍食品、コンビニ食などを利用しているのならそれはなおさらです。
その意味で食生活を改善することは必要です。肉や魚、卵、貝類など良質なたんぱく質をまんべんなくとりましょう。とくにビタミンB1を多く含んでいる豚肉はお勧めです。また、味噌や漬物、納豆などの発酵食品も毎日食べていきたい食材です。
その一方で、食生活の改善は必要条件ですが十分条件ではありません。すでに不登校になっているわけですから、ストレスも加わり栄養の消費は計り知れません。このとき、とても大きな問題であるのに、一般に知られていないことのひとつに「栄養の消費量が増える」という事実があります。
また、次のようにビタミンB群やC、たんぱく質の欠乏によりさまざまな問題がおこります。
重要なのは、これは一例にすぎないことです。アミノ酸やビタミン、ミネラルなどはお互い助け合って働いています。これは例えるなら歯車のようなもの。たったひとつの歯車(栄養素)が欠ければ、歯車全体の働きが止まります。
こういったことから、不登校の子供にはサプリなどを利用して幅広く十分に栄養をとらせてあげましょう。偏食のお子さんならば、それはなおさらです。
なお、どういった栄養をとったらいいのかは、ビタミン剤やサプリメントを販売している薬局の薬剤師さんのアドバイスを参考にしていただけるといいでしょう。
※ ここでご紹介しているアミノ酸とは、アミノ〇〇などの清涼飲料水やゼリージュースのことではありません。カン違いなさらないようにご注意ください。
2‐3.体調不良の改善も重要ポイントのひとつ!
不登校における体調不良とは自律神経の乱れによります。ですから、東洋医学である漢方や鍼灸など、全身へのアプローチがポイントになります。
なお、整体やストレッチ、カイロプラクティックなど、体の歪みを改善するアプローチも有効です。
※ 起立性調節障害(朝が起きれない)や側弯症、緘黙(かんもく)と診断された方で以下に思い当たるものがあるのなら、とくに漢方を試すようお勧めします。
・ひどい寝相:90度や180度回転、隣のヒトに乗っかって寝ているなど
・丸まって寝ている(動かない)
・起きているかのような寝言
・鼻血
3.不登校で注意すべき対応と対策
不登校において、他ではあまり語られて以下の注意点をここでご説明します。
3‐1.登校を促してはいけないときがある
私は「学校に行くように促したほうがいいですか?」と聞かれたら、基本的には必要がないと答えています。ですが、登校を促してはいけないタイミングは確実にあります。そのサインは、子供たちの表情や言葉遣い、睡眠などにあらわれています。
混乱中 | 改善すると… |
ずっとゲームやスマホ | ゲームなどの時間が少なくなり、本を読んだり家族と同じ空間でコミュニケーションをとるようになる。 |
昼夜逆転 | 夜、眠気を訴えるようになり、勝手にふつうのリズムで眠るようになる。朝起きも楽になる。 |
話しかけてこない | 話しかけてくるようになる |
話しかけても返事は単語 | 返事が文章になる。より改善すると、文章の質に厚みがでる。 |
険しい(乏しい)目や顔 | 笑顔が増える |
言葉が乱暴 | 穏やかな言葉になる |
学校などの話をすると部屋にこもったり、口をつぐんでしまう。(緘黙) |
第一段階:学校の話から逃げなくなる 第二段階:学校のことを口にするようになる - このとき「ヒマ」を口にするようになる 第三段階:学校の話を自分からするようになる |
ボーっとしている | ボーっとしている時間が短くなる |
すでにご紹介したように、情緒が不安定であればあるほど、そのときの記憶は強く脳に刻まれることになります。その意味で、左欄の「混乱中」での刺激は避けることが必要です。
一方で、右欄のような精神状態なら、聞く耳がでていますから登校刺激をしてもさほど問題はないでしょう。ですが、私の経験では、調子が戻ると勝手に子供たちが「学校に行く」と口にするようになりますから、あせらずに子供の体調面の改善に努めていただきたいと思っています。
なお、登校をはじめたとき保健室登校や別室登校などにするのか、それともすぐに教室に通うようにするのか本人の気持ちを優先してあげてください。栄養状態と体調不良が改善していれば、見える景色が必ず変わっています。あとは、時計の針が進むのを待つだけです。
3‐2.とりすぎは注意!できるだけ控えなければいけない飲食物とは?
アルコールをとるとビタミンB1など、ビタミンB群が欠乏することは知られています。同じように、甘いもののとりすぎもまた、ビタミンB群が欠乏する原因になります。中でも、とくに注意してほしいのが炭酸ジュースなどのジュース類やアイスなどです。
すでに説明したように、エネルギーをつくるときビタミンB群、とくにビタミンB1が必ず必要です。もし不足したのなら、エネルギーが不足し脳の働きは必ず悪くなります。くれぐれも、炭酸ジュースなどを毎日とるような生活はやめてください。
また、ポテトチップスやスーパーなどで売られている揚げ物などはできるだけ避けてください。酸化が進んだ食材は、情緒を不安定にする大きな原因となります。
3‐3.昼夜逆転にはどう対応すればいいのか?
「早く寝ないから朝起きれない」と、ほとんどの方が思われているようですが、それはまちがいです。彼らは情緒が不安定だからこそ、無意識に夜を警戒しています。また、眠りが浅くなり、疲れがとれず起きれません。
逆に、栄養状態と体調不良が改善したのなら、自然に寝起きは改善します。また、その後、布団にはやく入るようになります。
このように、昼夜逆転は本能的な行動であるため、「言い聞かせる」ことができないとお考えください。
4.まとめ
不登校原因は曖昧である。その理由がお解りいただけたことと思います。また、そこに不登校の原因があったこと。また、不登校の特徴から、その原因が体の本能的な働きの結果であることもご理解いただけたと思います。
不登校への対策とは、子供の栄養状態と体調不良という、ごく当たり前の対処をすることにつきます。もちろん、今まで周知されてきた「こころのケア」とは違うため、戸惑う方も少なくないでしょう。
しかし、このアプローチをお試しいただいた上で、先ほどご紹介した「混乱」→「改善」のチャートで子供さんを観察してあげてください。見違えるように明るく元気になっていく姿に、きっと、ご家族の方は驚かれると思います。