スーパーいわちゃんねる!
岩崎真実さん

海と震災ボランティア 〜4年経っても見つかるもの〜

 最高気温17度を記録した3月28日。宮城県南三陸町歌津地区の長須賀海水浴場で海岸清掃ボランティアが行われた。2団体70名以上を受け入れたのは、同町を中心に復興支援活動を行う「一般社団法人 つながり」だ。

 参加者はガラスや瓦の破片、流木など、満潮時に海底から波で漂着したゴミを集めた。朝10時から始まり、2時間ほどで終了した。参加した仙台市在住の30代男性は「砂浜に眠る細かいゴミは機械で取り除けない。時間と手間がかかる作業だが、人間の手でやるしかないと実感した」と話す。

 

【参加者の中には、北海道から訪れた春休み中の中学生28名もいた】

 

 きっかけは、代表理事の勝又三成さん(34)と子どもたちが、支援のお礼を伝えるため沖縄県恩納村を訪れた時のこと。ある子どもの「沖縄の海は綺麗だけど、やっぱり南三陸の海で泳ぎたい」という報告書を皮切りに、チーム「南三陸シーモンキー」を結成。子どもたちが部活動や習い事が終わる毎週土曜日14時から約1時間、ゴミ拾いを始めた。コンセプトに共感した大人たちは、彼らがいない時間帯に協力するようになる。努力が実を結び、翌年13年7月には海開きができるまで回復した。

 

【活動の最後、ボランティアが砂浜から見つかったがれきなどを運び出す様子】

 

 団体は11年3月23日から南三陸町に入り、現在はダイバーによる海中潜水捜索活動や、地元で漁を再開した人たちの船のスクリューに絡まった漂着物を取り除く作業、獲れた海産物を加工する作業場へボランティアを派遣するコーディネーターも担う。4年以上密着することで、住民からの信頼も徐々に得られるようになったが、全てを継続することは容易ではない。特に海中捜索では船代や酸素ボンベ代などが高額になってしまう、ダイバーの安全を確保するために十分な休憩時間を取らなければならない、天候によっては活動できない日もあるなど、費用の捻出と安定した活動が難しいことが課題だ。
 それでも捜索活動はやめられない。警視庁発表によると、宮城県内で現在も1244人が行方不明だからだ(15年4月10日付)。スタッフの石田寛道さん(42)は「見つかった遺留物は警察や地元の人に届け、できるだけ遺族へ返せるように努めます。地上のがれきは取り除かれましたが、海中は今も手付かずのまま。定期的な活動が大切です」と言う。遺留物は見つかった場所によってどの辺りから流れてきたかが予測できるため、遺族が行方不明者へ「思いを馳せる方向」がわかり、感謝されることが多いという。

 

【14年夏頃、同団体が行った海底捜索ボランティアの様子。水深30メートルまで潜って作業することもあるという(団体提供)】

 「被災者の間で様々な格差が広がる中、これからは今まで以上に心のケアのニーズが増えるだろう」と、勝又さんは語る。既存の活動に加えて、仮設住宅へ住む人とボランティア希望者を文通でつなぐ支援、全国で講演活動や西宮さくらFMのラジオ番組「ハートリッスンつながり」の1コーナーを担当するなど、被災地への理解を深める活動を増やす予定だ。

 東日本大震災から4年。ボランティアニーズは発災直後と比べて細分化かつ多様化している。需要を的確に把握する現地団体との「つながり」が、復興の鍵になると感じる。

 

●団体連絡先

宮城県本吉郡南三陸町歌津大沼218-85

090-9222-2229(代表:勝又携帯)

info@tsunagari-project.com

http://www.tsunagari-project.com/

 

※この記事は大阪ボランティア協会発行「Volo 2015年4・5月号」に掲載されました。