「なりたい仕事ランキング」というキーワードで検索すると上記のようなサイトが出てきた。そのなかで「大工」という職業は31位と振るわない。
かつて、男子がなりたい仕事で常に上位にあった大工職だけど、今はこんなにも順位を下げているのかと思うと建築業界の先行きが少し心配になって来る。
未来の建築業界はどれだけ暗黒なのか想像したけど心配し過ぎですか?
ランキングの中でも建築家は20位と流石に上位に食い込んでいるのが救いだけどそれでも前回より順位を落としている様だった。
建築家はテレビの影響もあってまだまだ人気の職業のようだけど、建築士自体は飽和状態で2級建築士を持っているくらいでは、たいして需要は無い。
1級建築士も既に資格ホルダーが多すぎて、よっぽど才能がないと稼げないということも聞いている。
また、大工という職業も実に大変な仕事で、昔に比べるとそんなに稼げなくなっている。厚生労働省のソースだと1日に稼げる金額は13,830円とたいして多くない。
個人事業主のような仕事をしていると「一人工15000円」最低無いなら、仕事しない方がいい。
個人事業主は会社員と違ってそこから経費や保険料、税金を払わなければならないので15000円という金額設定はギリギリの金額。
これを下回るようならはっきり言って赤字なのだ。
そもそも、職人になる人というのは会社員になって固定給でカツカツの生活をするより頑張ったら頑張っただけ稼げるからそういう仕事を選んだのであって、一日働いてフリーターが稼ぐ程度のお金にしかならないような仕事は受けたがらない。
職人という仕事はやり方によっては日当を大きく増やす事が出来るのが魅力の仕事で僕の周りには日当で3万以上稼いでいる職人はごろごろいる。
最近ではローコスト住宅と銘打って、安く家を建てようとする住宅サプライヤーが多いのもあって、職人単価を極限まで下げようとするところが多い。
会社員でもがんばれば稼げるような金額で仕事を請け負わせようとするから、職人も弟子を雇う余裕が無くなってきている。
弟子がいないと職人はどんどん高齢化して業界にいなくなってしまうので、建築業界は自分の首を自分で締めている訳だ。
そうならない為にも職人さんには儲けさせてあげるべきだと思う。
とは言いつつも、単発の仕事なら儲かる仕事は結構ある。安価なマンションの内装工事でさえ一人で200万持って帰った大工も知っている。どれだけ無茶な働き方をしたのかと聞いたら、7時30分に現場入り、5時には道具を片付けたというから驚きだ。
大工などの技能工は今時、なり手が少ないので、繁忙期に入ると圧倒的に不足する。そういう時は職人の奪い合いが始まり、最終的には工期を守る為に職人確保目的で金額が釣り上って、破格の値段を提示するところもある。
そういう話は珍しい話ではないので、稼ぎ方を知っている職人ならまだまだ稼げる業界だとも思う。
戸建てのマイホームを建てる人はここ最近で随分減ってしまった。
空家問題という言葉を耳にすることも多くなった。今や日本の住宅の7件に1件は「空家」と言われており、家が余っている。
100万戸以上毎年建っていた戸建ての新築も減少傾向で、今後増えるのは古い家をリノベーションする中古市場だろう。
国土交通省は2020年までに中古市場の規模を今の倍以上の20兆円にする目標を立てている。
しかし、リフォーム工事というのは結構な汚れ仕事。テレビの「大改造!!劇的ビフォーアフター」でやっているような感じを想像してはいけない。あれはテレビ用。
実際のリフォーム現場はもっと汚い仕事が多く、雨漏りしていて、打ち捨てられたような家をリフォームする時など解体時尋常じゃない位、臭い匂いがする。
現場管理者として見ていても「大変だな」と職人さんには感心する。
しかし、こういったリフォーム現場は、こどもが憧れるような大工の仕事ではないだろうなと思ってしまう。
こどもがイメージして憧れるのは新築の家を大工さんが作っている様だろう。
新築棟数が減ると、それに伴って「なりたい仕事ランキング」の大工さんのランキングも下がるだろう当いう事は容易に想像できる。
そうなると、業界の職人不足は加速していく。競争力の弱い所は職人を育成できなくなり、業界自体の衰退を加速させるのではないかと心配だ。
リフォームというのは、一般的に新築より高い技能を要求される。質の高い工事をして貰う為にも、大工などの技能工になりたいと思える環境が欲しい所だ。
(おわり)