本が自分を支えてくれた
16歳の頃、通っていた高校を自主退学し、4ヵ月ほど浪人していました。女の子に恋したり友達と遊んだりという普通の高校生活とは違い、社会的にも精神的にも孤絶しましたね。その頃、集中して本を読んだんです。
勉強の合間に近所の古本屋で100円以下の安いものを買って読み漁る。頭の中にすいすい内容が入り、分厚い本もあっという間。川端康成の全集なども読破しました。
「本ってこんなに面白いのか!」と気付いたのがこの頃です。今も海外のジャングルでのロケなどで孤絶した状況になると本に没頭する。ある意味、幸せですよね。
高校までは、父(劇作家の唐十郎)の影響も大きかったですね。本棚に漫画があり、手に取ったのが、つげ義春さんの本。
実はつげさんの妻の藤原マキさん(故人)は父の状況劇場の初期メンバーとして舞台に立っていた人。つげさんは作品に僕らの家族をパロディ化して登場させたり、父は芝居のセリフをつげさんの本から取り入れたりしていて縁があったんです。
『無能の人』は子供ながらに怖いと思った作品。大人になると、こんなにも虚無的な日々を送ることになるのかと戦慄しました。今、平日昼間に自宅で執筆などをしていて、2階の窓から近所の奥さんが子供連れで歩いているのを見たりすると、「僕もつげさんっぽくなっちゃったな」と思う時もあります(笑)。
父から「これ面白いぞ」と薦められたのがツルゲーネフの『はつ恋』です。
少年が年上の女の人に惚れ、ゴミのように捨てられる。思春期の男子にとってはお約束のような物語ですが、やはり憧れますよね。
僕も高校の時に女子大生と付き合いましたが、自分にお金がなさ過ぎて、全然面白くなかった。待ち合わせ場所の青山までの電車賃もないぐらいだったし。
その後、和光学園に転入したんですが、担任の先生から「義丹みたいな人間こそ読んだ方がいい」と渡されたのが、和光大学の人気教授、岸田秀先生の『ものぐさ精神分析』でした。精神分析など、心理学の世界に初めて触れたことで、自分を知るきっかけになりました。