北朝鮮の党大会 個人崇拝では道開けぬ
36年ぶりとなる北朝鮮の朝鮮労働党大会で金正恩(キムジョンウン)第1書記が「党の最高位」に推挙されるという。
金第1書記は、個人崇拝を強化して権力基盤をさらに固めようとしている。国際社会からの圧力が強まっても体制を維持できるようにと考えているようだが、それは国際的な孤立を深める道でしかない。
党大会は北朝鮮の実質的な最高意思決定機関だが、経済難などの影響もあって金正日(キムジョンイル)政権下では一度も開かれなかった。今回の大会は、経済面でも一定の落ち着きを取り戻したとして、新たな「金正恩時代」の幕開けを宣言しようとするものだ。
個人崇拝のモデルとなっているのは祖父の故金日成(キムイルソン)主席である。
北朝鮮では金第1書記を「21世紀の偉大な太陽」と呼び始めている。抗日ゲリラ出身のカリスマ的指導者で「民族の太陽」とたたえられる祖父と同格だというアピールだ。金第1書記はスーツ姿で開会の辞を読んだが、これもスーツを着ることの多かった祖父を意識したのだろう。
金第1書記の功績は米国に対抗する核戦力の実用化だとされる。
先月末に公表された北朝鮮の「政府・政党・団体連合声明」は、小型核弾頭とさまざまなミサイルの開発に成功したとして「手にすべきものは全て手にした」と主張した。党大会開幕日の労働新聞は、金第1書記の卓越した指導によって「不敗の核強国」になったと書いている。
だが、現実は厳しい。
祖父の時代である1980年の前回大会には100カ国以上の政府や党の代表団が並んだが、今回は外国代表団は皆無のようだ。
金第1書記は開会の辞で、この間に「世界の社会主義体制が崩壊」して孤立を強いられたと認めた。そして北朝鮮に「過酷な試練と難関が幾重にも折り重なり、戦争以上の苦痛と苦難が襲いかかった」と述べた。
北朝鮮が最も輝いていたとされる祖父の時代は社会主義圏からの手厚い支援に支えられていた。冷戦終結で支援を得られなくなったことが、多くの餓死者を出した90年代後半の「苦難の行軍」と呼ばれる経済難につながっている。
それが分かっていて、なぜ核・ミサイル開発に固執して孤立を続けるのか。今年初めの核実験と長距離弾道ミサイル発射を受けた制裁強化で、北朝鮮が再び苦境に陥ることは目に見えている。
北朝鮮でも近年は外部世界の情報が広く知られるようになってきた。経済難が深刻化すれば、国民の不満は20年前とは比べものにならないほど大きくなるだろう。
個人崇拝をまねたところで、祖父の時代とは環境が違いすぎる。金第1書記は現実を直視すべきである。