選挙演説では、中国やメキシコとともに日本に触れ、「米国民の雇用を奪っている」と批判してきた。日米が主導し、日本経済の起爆剤に期待されるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)にも反対している。「日本にとっては憂慮すべき選挙戦(=本選)になるかもしれない」(住友商事グローバルリサーチの足立正彦シニアアナリスト)という指摘もある。
安倍首相は、夕刊フジGW特別号(2日発行)のインタビューで、米大統領選について触れ、「私も関心を持って、情勢をフォローしている。なぜなら、日米同盟は、日本の外交・安全保障政策の基軸であり、米国は世界の平和と安定に大きな責任を負っているからだ。次期米大統領が誰になるにせよ、日本にとって米国の重要性は変わらないし、米国にとっても日本の重要性は変わらない」と語った。
政府高官は「政府内にトランプ陣営とのパイプを持つ人がいない」として、外務省などに情報の収集と分析、人脈づくりを指示している。
トランプ大統領の誕生は、日本をはじめ、東アジアを激震させるのか。
米国政治に精通する徳島文理大学の八幡和郎教授は「現時点では、ヒラリー氏が有利だが、(1)トランプ氏が発言のトーンを抑えるなど変身する(2)副大統領候補に、マルコ・ルビオ上院議員など、共和党主流が納得する人物にする(3)ヒラリー氏の自滅−などで逆転の可能性はある」といい、続けた。
「トランプ氏が大統領になれば、韓国は最も困るだろう。韓国をあれほど軽視する人物はいない。世界中に兵士を送り出して歓心を買うぐらいしか手が無くなる。日中は微妙だが、(安全保障法制を成立させた)安倍首相は、トランプ氏とうまく関係を築ける可能性がある。トランプ氏と安倍首相、ロシアのプーチン大統領で『日米ロ連携』という道もある。トランプ氏は中国は大嫌いだが、ディールの相手と見るだろう。安倍政権は『中国は、米国をたたき落としてナンバーワンを狙っている。極めて危険だ』と、トランプ氏周辺に説明すべきだ」