【石坂浩二 終わりなき夢】(19)モデラー歴70年の楽しみ方とは
プラモデルは船舶から戦車や飛行機、いろんなモノを作ってきたが、今は第2次大戦で活躍した欧州の飛行機を製作している。年に12機が限界だ。模型作りのキャリアは70年近くなるが、大学時に舞台の楽屋で大空眞弓さんと出会ったのもプラモデルを作っている最中だった。もし、模型をやっていなければ、今の自分はなかったかもしれない。
模型との出会いは小学生の頃で、木を削って作るソリッドモデルの作り方を近所の兄さんに教わっていた。中学に進学して興味が文学や演劇にいってお休みしていたが、高校の時に百貨店で初めてプラモデルを目にしたのが転機だ。ビニールの袋に入っているキットを調べると、戦闘機の風防ガラスが透明ではないか。ソリッドで透明な部品は無理で、びっくりしたのと同時に昔の血が騒いだ、作ってみたい―。そのうちに(大手模型メーカーの)タミヤが戦車を発売する。戦車は自ら動く画期的な模型で早速作って動かすと、いろんな障害物を乗り越えていく姿に感激した。
昔から戦車や飛行機には興味があり、資料を取り寄せて勉強していた。実際に役に立ったのは朝鮮戦争などのニュース映像だ。当時、渋谷の東急文化会館(今の渋谷ヒカリエ)の1階にニュースシアターなる映画館があった。入場料10円で、毎日新聞や共同通信など内外のニュース映像を延々と流すだけだが、世界の動きがリアルタイムで見られるのでよく通っていた。本物を見ておくと作るときに役立つのだ。
模型作りには私なりの楽しみ方がある。まずキットを購入して中身を取り出して眺める。模型は本物を縮尺するからどこかを省略するしかない、それをどう工夫しているか。さらに細かくて再現できない部分や削除する箇所が出てくるので、その処理具合と組み立てにズレがでないようにする工夫をしているかのチェック。この確認作業で1週間ぐらい楽しめる。そして設計図通りに組み立てるのだが、自分の見立てたような内容になっているかを確かめながら仕上げていく。自分が気づかなかった部分に工夫があると「やるな」とうなることも。キット制作者と作り手の会話を楽しむのだ。
私のようなモデラーは意外に多い。09年に「ろうがんず」というプラモデル好きの集団を立ち上げた。一昨年から私が50万円のポケットマネーを出して「ろうがんず杯」【※】をスタートさせたが、年々参加者は増えている。5月14日から静岡ツインメッセで「ホビーショー」が行われるが、私も出品するため6機の飛行機を製作中だ。
ちなみに好きな飛行機は〈1〉ハインケルHe219ウーフー〈2〉ドルニエDo335〈3〉スピットファイアーMK9C。(構成 特別編集委員・国分 敦)
女優・大空眞弓(舞台「黒蜥蜴(くろとかげ)」、ドラマ「ありがとう」で共演)「初めて会ったのは、石坂さんがまだ慶応大学の学生だった頃。背筋が真っすぐで男前でした。将来有望だと思って、私が石井(ふく子)先生に紹介したのが、石坂さんが本格的に俳優デビューするきっかけです。最近はテレビで拝見してますが、いい年の取り方をしてますね」
◆ろうがんず杯 今年は10月に開催予定。参加要項が決まり次第、HP(http://www.rowguanes.co.jp)に随時掲載。