皆さんも駅で汽車を待っている時、貨物列車が大きい音を立てて発車した後継に遭遇した事があるでしょう。この音の発生源は『連結器』が主なものです。
 連結器とはいったいどんなものなのでしょうね。さあ、勉強してみましょう。
連結器とは
 英語でCoupler(カプラー)と呼ばれるもので、車輛同士を連結し、引張力や推進力を車体間に伝える装置を言います。
 連結器には力の伝達が確実に行われなければならないほか、勾配や曲線といった場所において加わる大きな力に耐えなければなりません。また、上下左右あらゆる方向に追随する機能も備える必要があります。そして、確実に連結が行われ、容易に解放(切り離し)が行われる構造が必須となります。

①連結器の周りにある装置

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胴受け(写真左)・・・連結器を支えるもので、上下の振動を吸収するほか、左右の移動を案内します。
復心装置(写真中央)・・・連結器の位置を中央に維持する装置で、連結器左右にバネを配置して保持しています。お互いの中心を維持しないと連結が出来ない上、誤ってぶつかってしまうと破損してしまいます。連結する事が少ない場合(救援を目的としたものなど)などの連結器には設けられておらず、揺れなどで動いて偏っている姿も見られます。(写真右)

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緩衝(かんしょう)装置・・・連結器は力の伝達が任務の一つですが、衝撃や動揺をそのまま伝えると乗客や貨物、車体には好ましくありません。発車や停車、加減速時などに発生する引張力や圧縮力、車輛の前後動に発生する力を和らげる役目としています。
 緩衝装置には様々な種類があり、金属コイルばねを用いた『単純ばね式』、くさびの摩擦力で発生するエネルギーを解放させる『引張摩擦装置』、軽量でありながら大きな力に耐えられる輪ばねを用いた『輪ばね式』、油圧を利用した『油圧緩衝装置』、シリコンを用いた『シリコン緩衝装置』があります。

連結器のいろいろ

リンク式連結器

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連結にリンク(鎖)を用いる連結器を言います。鉄道が産声を上げた時から使用されている連結器で、リンクを相手車体に設置されたフックに引っ掛けるだけのもの。リンクは引張力の伝達には使えますが、推進力やブレーキをかけた時の圧縮力には対応していないため、バッファーをはじめとする緩衝装置を必要とします。この緩衝装置は車輛同士の衝突を防ぐ役目も兼ねています。
 リンク式連結器は構造は単純であるものの、強度が低いため長大編成化が難しい欠点があります。また。連結、解放時にリンクを持ち上げなければなりませんが、日本のものでは20kgと相当重いため、重労働となります。
①ねじ式連結器

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 車輛に付いたフック同士をねじで締結する機構をもったリンクで連結するものです。螺旋(らせん)連結器とも言います。相手方にリンクを引っ掛けた後、ねじを締めるというものです。このねじはターンバックルと同じで右ねじと左ねじを組み合わせた構造です。
ねじが付いていない、ただのリンクは『連環(れんかん)連結器』と言います。日本ではこのねじ式連結器と連環連結器の2種類がありました。
②ピン・リンク式連結器

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 リンクとピンを用いて連結をする連結器です。先端に穴が開いており、この穴にリンクを差し込み、落とし込みピンを入れて連結するというものです。構造は至極単純ですが、ピン挿入の手間がかかる事や強度が低く、簡易な用途にしか向きません。主に軽便鉄道などで用いられていました。
★リンク式連結器から自動連結器へ。
 日本に鉄道が誕生した際、その技術はイギリスからのものでした。連結器もリンク式が採用されていました。(北海道はアメリカからの技術を導入したため、自動連結器が採用されていました。)
 ねじ式連結器、連環連結器の2種類があり、連結・解放には手間や時間がかかる問題がありました。なぜ、連結器が2種類あるのでしょう。そこに答えがあります。
 明治33年より鉄道建設規定で、列車分離事故など連結器のリンクが破断するなどの事故を考えて、安全性を高めるために螺旋連結器を掛け渡し、締めつけた後、その上に連環連結器を掛ける螺旋連環連結器にする事に決めました。
 このため、客車や貨車には一方に螺旋連結器、もう一方に連環連結器を装備させる事を意味します。このため、一方の連結器同士が向き合う形になると連結が出来ません。
 このような場合は車輛の向きを変えるか、連結器の交換が必要となりました。この連結器の交換は月に9万3千件を超える事もあったそうです。
 一方、作業員(連結手)の作業は連結を2度行わなければならない事に加え、日本の鉄道は狭軌であるが故に、バッファーの間隔が狭い場所で作業を行わなければなりませんでした。このため、車輛が動いた際に逃げ場のない場所のため、バッファーに挟まれる圧死や車輛に轢かれる轢死(れきし)が相次ぎました。大正5年ごろの調査では年間527名もの死傷者が出て、その多くが死亡であったそうです。
 このように多大な手間と時間を要し、危険な作業が付きまとうリンク式連結器はさらに輸送量増大の妨げともなり、当時の鉄道院はとうとう切れました。
 大正8年に全国の鉄道車輛の自動連結器化を計画します。連結器の交換をする練習や車輛の補強などを事前に準備し、全国を移動する貨車には自車の連結器を台枠下にぶら下げて、どこでも交換できるように等と綿密に計画を練り上げました。

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 大正14年7月初旬より、その計画が実行へと移される事になりました。まずは予備車や固定編成車輛の交換に始まり、本州では7月17日、九州地区では7月20日に一斉に交換が始まりました。機関車、客車はその日の終着駅で、貨車については24時間全面運休という特別措置を採って、総動員で交換しました。
 機関車約3200両、客車約9000両、貨車は約46000両、連結器の数では10万個以上の数を僅か半月の間に全て交換したのです。世界的に見ても歴史に名を残す偉業と言えましょう。北海道は先ほど話した通り、アメリカからの自動連結器を採用しており、高さを調整する工事に留まっています。これにより、青函連絡船を用いた直通運転が出来るようになり、北海道と本州が結ばれました。一方、四国地方は当時完全に孤立していたため、一斉交換の対象とはせず、大正15年から約1年かけて交換をしました。

自動連結器

連結器を接触させるだけで連結が出来、開放は解放てこを扱う事で、容易に連結、開放が出来る連結器です。世界各地で広く一般的に用いられており、日本でも機関車や客車、貨車などに用いられています。『自連(じれん)』とも言われています。
 この自動連結器は1868年(慶応4年~明治元年)にアメリカの発明家のイーライ・ジャニーが人の手と手を組み合わせた形をヒントに発明しました。当時、ピン・リンク式連結器と手ブレーキが使われていましたが、安全性を高めるために発明したものです。この自動連結器と自動空気ブレーキが採用され、各地で使用されるようになりました。この連結器は『ジャニー式』とも言われています。
●自動連結器の3作用

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自動連結器は本体、ナックル、ナックルピン、錠、解放てこで構成されています。

①錠揚げ位置

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解放てこを一番上まで持ち上げると、錠が外れて同時にナックルが開きます。同時にナックルピンも出てきます。一方又は両方がこの状態で当てると、ナックルが閉じて、少し遅れてピンが落ち、錠掛け位置となります。
②錠掛け位置

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錠が落ち、ナックルも閉じている状態です。つまり、連結している状態となります。

③錠控え位置
 連結状態において、解放てこを持ち上げると錠が引き抜かれます。この時、ナックルは自由になっており、車輛を引き離すと開きます。
●上作用式と下作用式

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 自動連結器では、開放てこや錠の位置によって呼び名が2つあります。写真左は『上作用式』と言い、機関車や貨車で多く見られるタイプです。写真中央は『下作用式』と言い、貫通路を持つ客車や気動車など、貨車では積荷が当たるなど理由で、解放てこと錠が連結器の上部に設置できない車輛に用いられています。多少の形の違いはありますが、もぐりこんでみてみると、写真右に見る配置となっています。

自動連結器のいろいろ

並形自動連結器

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 日本が本格的に自動連結器を採用した当初は輸入品でした。写真左はシャロン式、右はアイスランス式で、どちらもアメリカ製です。この2種類が主なものでした。鉄道省の技師である坂田栄吉がシャロン式を基に開発した坂田式、同じく鉄道技師であった柴田衛(まもる)がアイスランス式を改良した柴田式が2トップとして、標準型となりました。

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 機関車や一般形客車、貨車などで広く使われ、単に「自動連結器」と言えば、この並形自動連結器を言います。後に登場する密着自動連結器に対し、『並自連』と呼ばれる事もあります。
 並形連結器はお互いに連結をすると、少し隙間(これを遊びと言う。)があり、加減速時に衝撃及び衝撃音が発生する欠点があります。発車時や停車時に「ガシャガシャガッシャーン!!」と大きな音がしますね。この遊びは小さい牽引力で重量のある列車を牽き出すのに適した構造なのです。客車や貨車に使われる軸受は抵抗が大きく(転がりづらい)、一度に牽くためには大きな力が必要となります。非力な蒸気機関車や小型の機関車では無理なので、動き始める時に徐々に牽き出す(1両ずつ牽きだす感じ。)事で重い列車自体が動きます。(一度動いてしまえば、勢いがつきます。)
 1920年代に電車にも並形連結器が使用され始めましたが、加速や減速を繰り返す電車には不向きで、遊びによる衝撃や動揺が不評となり、急な加減速や高速運転に適し、密着度の高い密着連結器に代わる事になります。同様の理由で、私鉄でも連結器が変更となりました。しかし、現在でも私鉄の電車を中心に並形連結器を見る事が出来ます。これは、固定編成の両端の先頭車に見られ、救援を目的として使用するためです。

密着自動連結器

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 並形自動連結器の改良型です。連結時の遊びを無くしたもので、『密着自連』や『密自連』と呼ばれます。連結器本体横に尖ったツメを設け、ナックルピン横にそのツメを受ける枠を設けた事です。(写真左を見て下さい。)これにより、連結時にお互いがしっかり連結されます。垂直方向への動揺等の力は緩衝装置で吸収させます。 20系寝台特急形客車を最初に、12系以降の客車に装備されています。
 一方、この密着自動連結器は機関車や貨車にも採用されました。採用されたのは電磁自動空気ブレーキ(CLEブレーキ)を採用した10000系貨車で、この貨車を牽引するEF65形式500番代(F形)、EF66形式などの電気機関車にも装備されました。
 写真中央がその連結器で、連結器廻りに4つの穴の開いたパイプ状のものが見えますが、これは『空気管』です。ブレーキや空気ばねへ圧縮空気を送る空気管(直通(MR)・ブレーキ(BP))の接続を連結と同時に行い、作業の省力化を図る目的で設置されました。現在は10000系貨車が全廃となり、空気管は撤去されています。
 密着自動連結器と自動連結器は相互に連結ができます。(写真右 左が密着自動連結器、右が並形自動連結器です。)

小型密着自動連結器

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 主に気動車に使用される標準的な連結器です。構造や機能は密着自動連結器と同じですが、気動車や電車は動力分散方式の鉄道車輛であり、連結器に大きな引張力などの力がかからないため、連結器の肉厚を薄くして軽量化を図ったもので、全体的に小型になっています。
 写真中央をご覧下さい、外観は本体横にツメ(★)があり、このツメを受ける枠がナックルピンの横(●)にあります。横から見ると、よく判るでしょうか。写真右はお互いを連結している様子です。

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この連結器も並形自動連結器や密着自動連結器との連結は可能です。(並形自動連結器(左)と小型密着自動連結器(右))

簡易連結器

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 簡易連結器とは、自動連結器から『自動連結・解放の機能を省略した特殊な連結器です。自動連結器との使用を目的としつつ、その機能を持たないので自動連結器とは異なるものとして扱われる場合があります。見かけは自動連結器に似ていますが、自動連結器と連結が可能な範囲まで小さくし、自動連結機能が無いため、落とし込み式のピンでナックルを固定しています。
 なぜ、簡易連結器が誕生したのでしょう。この連結器が登場したのは1920年代末期。当時の内燃車エンジンの出力は貧弱そのもので、徹底した自重軽減が求められたため、日本車輛製造が開発しました。『日車式連結器』とも呼ばれるこの連結器(写真左)は、並形自動連結器が1両分で約0.5tに対し、簡易連結器はその1/3程度の重量でした。この重さは軽量化に大きな貢献を果たしましたが、連結強度は著しく弱くなってしまいました。
 この構造は大型気動車への適用は難しいため、日本車輛製造では自動連結器の機能を維持したままの軽量化に挑戦し、昭和6年に開発者の水津長吉の名を付けた『水津式自動連結器』(写真右)を開発しました。
 その後、気動車の大型化やエンジン性能の向上などの理由により、小型密着自動連結器などに代わられ、その歴史的役目を終えています。

密着連結器

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 JRの電車や私鉄で多く見られる連結器です。自動連結器と同じく、自動で連結しレバー操作で容易に増解結が可能です。自動連結器では連結時に隙間(遊び)が必要でしたが、この隙間を無くし、密着性を高めています。自動密着連結器と名前が似ていますが、全くの別なものなので混同しないように注意が必要です。
 密着連結器の原型は明治36年にドイツにて、カール・シャルフェンベルクが発明したシャルフェンベルク式連結器になります。これを基に様々な方式が開発されました。
 日本では鉄道院の技師である柴田衛によって改良された『柴田式密着連結器』が使用されており、『密連(みつれん)』の略称で呼ばれる事もあります。
 先ほども言いました通り、容易な操作で増解結が可能ですが、連結するほかにゴムパッキンを用いて気密性を高くし、ブレーキ用に用いられる各種空気管(ブレーキ管、直通管、元空気ダメ管)を自動で接続します。連結面に遊びが全く無いため、曲線や勾配において支障が出ないよう、連結器の根本には上下左右に動く自在継手が使用されているのも、この密着連結器の特徴です。
 密着連結器の欠点は、連結器の強度が弱い事。つまり、貨物列車のような重量のある列車や車輛には適さないという事になります。
●密着連結器の各名称

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写真を見ての通り、自動連結器とは全く形が異なるのがお解り頂けるでしょう。空気管はその車輛のブレーキ制御方式により、数が異なります。写真左は自動ブレーキ、電磁直通ブレーキ方式を採用した車輛。中央は電気指令式空気ブレーキを採用している車輛のもので、元空気ダメ管の1つしかありません。右は密着連結器を切り離す際に使われる解放ハンドルの様子です。
●密着連結器の連結と解放
①連結前、解放後

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密着連結器を上から見ると図のようになっています。案内は連結器の位置を修正するもので、少しのずれならば相手の案内を回転錠の方向へ導きます。回転錠は相手に向かって45度傾いた状態となっています。
②連結その1

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お互いに持っている案内はそれぞれの受け穴へを入っていきます。そこには回転錠があり、押される事で回転をして相手の回転錠と向き合います。この時、ばねで回転錠とつながっている解放ハンドルが外側に動きます。
②連結その2

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双方のもつ回転錠が一致、つまり連結をすると回転錠は45度にお互い回転し、これで連結が完了します。解放ハンドルを外側に持っていくと、回転錠が連結器に対して正対する状態を保持し、片方を引く抜くことで切り離しが出来ます。
最近では、この解放レバーに空気シリンダーを設け、運転台からスイッチ操作により切り離しが出来る装置もあります。

新幹線用密着連結器

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 昭和39年に開業した東海道新幹線に合わせて開発された新幹線車輛向けの密着連結器です。基本的な構造は柴田式密着連結器と同じですが、突起となる案内の部分が丸いのが特徴です。
 開業以来、新幹線の連結器は先頭車ではカバーに覆われており、救援時に使用する時にしか見られず、中間車も外幌によって見る機会はあまりありませんでしたが、ミニ新幹線(新在直通運転)が運転されると、途中の駅で増解結作業を見る事が出来、容易に連結器や作業の様子を見る事が出来ます。

トムリンソン式密着連結器

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米国にあるトムリンソン社が開発した密着連結器です。柴田式密着連結器より小型で、連結面の位置決めの突起や受け穴が特徴です。

バンドン式密着連結器

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米国にあるヴァン・ドーン社が開発した密着連結器です。柴田式密着連結器よりも薄く、ブレーキ用空気管が連結器内部に斜めに配置されているのが特徴です。阪神電気鉄道武庫川線に使用されている車輛に装備されている珍しい連結器です。

中間連結器

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※写真右 Tuboフォトオフィス様撮影

 皆さんの使う鉄道路線にはどんな連結器をもった車輛が走っているのでしょう。自動連結器をもった機関車と密着連結器をもった電車が混在している路線もありますね。
 そのような路線で車輛故障などで列車が動けなくなったらどうしましょう。おなじ連結器を持った車輛であれば、そのまま連結して救援が出来ますが、機関車と電車のように異なった連結器を持った車輛の場合は、駆けつけても連結が出来ないので無駄足になってしまいます。
 そのような場合に登場するのがこの中間連結器です。つまり、連結器のアダプターです。使い方は密着連結器を持つ車輛にセットし、後から自動連結器を持った車輛を連結します。異常時用の連結器であるため強度はやや落ちています。
 救援用のほかに、工場内で使用するためや特殊な連結器を持つ車輛との連結を目的とする場合があります。一般的には写真左のタイプが多く見られます。写真中央は棒連結器用の中間連結器、写真右はトムリンソン式の連結器をもった中間連結器です。

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※写真右 青い梅氏撮影

 写真は新造や改造した電車車輛を車輛基地へ回送する様子を撮影したものですが、機関車に合わせるため電車側連結器を簡易の自動連結器(ナックル機能がない。)に換装しています。写真中央はその車輛の連結器です。この連結器も中間連結器の一つと言えましょう。
○もう一つの中間連結器

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 主に機関車で見られるものですが、牽引力を伝えるために台車と台車を連結しているものがあります。この連結器の場合は、上のように救援や別の車種を連結する目的はありません。

双頭連結器

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 自動連結器と密着連結器の両方を持つ連結器で、使用する連結器を90度回転させる事で、使い分けが出来ます。自動連結器側はナックルが固定されており、錠に相当する部分がありません。このため、双頭連結器の自動連結器側同士、中間連結器の自動連結器側との連結は出来ません。また、密着連結器側も解放レバーが設けられていないのが特徴です。
 この連結器を装備し、有名であったのが信越本線横川駅~軽井沢駅間のEF63形式直流電気機関車です。(写真右 189系急行「妙高」号との連結シーン)現在では、JR東日本の電車の新製配置、工場入出場の配給や廃車車輛の回送で、先頭に立つEF64形式1000番代やEF81形式で見られるほか、JR九州のキハ183系1000番代特急形ディーゼルカーなどで見る事が出来ます。

永久連結器(棒連結器)

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 動力車(2両1ユニット方式の電車や2車体永久連結式の電気機関車など)や固定編成を組む車輛などで、車輛基地において整備などの理由により、編成を分解しない場合に用いられる連結器で、その見た目から棒連結器とも言います。永久連結器は連結器自体を外さないと編成を分割できない特徴があります。

半永久連結器

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 永久連結器と同じ理由で装備される連結器ですが、こちらは締結しているボルトやナットを外す事で分割が出来るようにしたものです。写真左は切り離した様子。中央は連結した様子です。写真右も連結した様子ですが、連結器左側は形が違いますね。この連結器は、列車が何かに衝突した際に、後方の車輛へ伝わる衝撃力を弱くするために自らを破壊して、エネルギーを拡散させるタイプのものです。

電気連結器

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 先頭車輛同士が連結した場合、連結器によって空気管が自動的に連結されます。しかし、電気的結合はジャンパ栓を連結掛が手作業で連結しなければならず、写真のように相手に連結をする必要がありました。狭い車輛間での危険な作業であるため、電気的結合を自動化する目的で電気連結器が登場しました。

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 非連結状態では何にある芯(電極)を保護するためカバーがされています。相手の車種により、1段のものと2段のものがあります。連結時に電気連結器にある棒(写真右の★印)が押される事により、カバーが開き電気連結器が密着連結器と共に連結されます。

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 自動連結器を先頭車の標準装備としてきた名古屋鉄道では、小型密着自動連結器と電気連結器を組み合わせた『M式自動解結装置』を装備しています。自動連結器と同時に連結すると破損する恐れがあるため、連結後に本体がせり出て連結する独特のものです。このM式自動連結器はJR東日本の在来線直通用新幹線車輛にも新幹線用密着連結器と組み合わせて採用されています。

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※Tuboフォトオフィス様撮影
電気連結器を装備しない車輛でも、密着連結器であれば連結ができます。
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 同じ鉄道会社(写真の例は西武鉄道です。)でも、車種によっては電気連結器の大きさが異なる場合があります。このような場合は電気連結器の蓋が開かないように(開いても何らかの方法で遮断する)なっています。

車端ダンパー

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 連結器の緩衝装置が隣り合う車輛の前後動を吸収する役目を持つのに対し、車体ダンパーは車体の回転する(ローリング)動きを抑える役目をする減衰器です。主に高速走行をする特急形車輛に設置されています。国鉄(現:JR)では昭和33年に登場した20系特急形寝台客車で初めて採用されました。
 仕組みはダンパー本体(写真の丸い部分)から左右に動く腕が上方向に出ており、腕に力が加わると、腕につながったダンパー内部のピストンによって油が移動します。その油が絞り弁(オリフィス)を通過する際に抵抗が発生し、その抵抗力が減衰力、つまり動きを抑える力となります。

車体間ヨーダンパ―

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 車体間緩衝装置の一つで、車端ダンパーが枕木方向に働くローリングを抑える役目に対して、車体間ダンパーはレール方向の力に対して、作用するヨーダンパーです。
 連結器の横に配置され、隣り合う車輛同士に発生する蛇行動(ヨーイング)を抑える事で高速走行時の車体の安定性と乗心地を向上させます。