中川ダービー制覇地元・熊本にエール 競輪日本選手権 【静岡】
静岡競輪で6日間にわたり激戦を繰り広げてきたG1「第70回日本選手権」(平成28年熊本地震被災地支援競輪、ダービー)は5日、最終11Rで決勝戦が行われ、リオ五輪・スプリント競技に出場する中川誠一郎(熊本・85期)が、G1初制覇。2着は吉田敏洋(愛知・85期)、3着に渡辺晴智(静岡・73期)が入り、3連単(4)(7)(1)は4万8950円(149番人気)での決着となった。優勝した中川は賞金6500万円と、初出場となる年末のグランプリ(GP、12月30日=立川)の出場権を獲得した。6日間の売上額は153億2196万円で、目標額(148億円)を上回った。
■ヒーロー
富士山の眼下で行われた頂上決戦は、被災地の思いをパワーに変えた中川誠一郎(36)=熊本・85期・S1=が、HS9番手から会心の一撃。見事に頂上へ駆け上がった。
「ワンチャンスあると思っていたので、そこだけに集中していた」。地元の渡辺晴智を連れた新田祐大が、赤板1半から思い切った突っ張り先行で熱戦のゴング。やられた深谷知広も、愛知の先輩2車が後ろでは引き下がれない。鐘3半から強引に反撃のカウンターパンチを仕掛けた。
中川は、この時を待っていた。「チャンスを絶対に逃しちゃいけない」。G1はまだ2度目の優出だが、自転車競技ではロンドン五輪の代表で、200メートル(スタンディング9秒702)と1000メートル(1分0秒017)の日本記録も持つスーパースターだ。「自分の力を、これまでやってきた戦法を信じて走るしかない」。ありったけのダッシュで前団をのみ込むと、独走でゴールに飛び込んだ。「新田君や吉田君が追い掛けてくると思ってましたから、最後はしびれました。今開催は(熊本地震)被災地支援競輪という大会にしてくださったこともあったし、何だか不思議な力を感じていた。このうれしさを被災地の皆さんに伝えたい」
ぐちゃぐちゃになりながらも持ちこたえた自宅(熊本市中央区)や、いまだ苦しい生活を余儀なくされる方々のことは気になる。だが五輪へ向けた戦いがすぐに始まる。「自分にできることは走ることだけ。3カ月間も競輪から離れるので優勝賞金の全額(寄付)とはいきませんが、できる限りのことをやりたいと思います。そしてリオ五輪で頑張って、帰ってきます。また競輪場で会いましょう!」
2度目となる五輪はスプリントに出場予定。8月、地球の裏側で肥後のスピードエースが激走する姿を心待ちにしたい。 (森川)
◆中川誠一郎(なかがわ・せいいちろう)1979年6月7日生まれ36歳。熊本市出身、真和高卒、85期。2000年8月デビュー。通算成績は1231走で351勝、優勝37回(うちG11回)。通算取得賞金は4億7068万2655円。師匠は従兄で選手の瀬口慶一郎(77期)。妹はガールズ選手の中川諒子(102期)。自転車競技ではロンドン五輪(2012年)に出場し、スプリント9位、チームスプリント(新田祐大、渡辺一成)8位。174センチ、78キロ、AB型。
=2016/05/06付 西日本スポーツ=