日本小児科医会が2013年に公表した『スマホに子守りをさせないで!』に対しては、今でも賛否両論の意見が出ます。
スマホが普及したのは最近のことですから、はっきりとしたエビデンスを確認してというより、ゲームやテレビなどの他のメディアで得られた知見を活用して、警笛を鳴らすという趣旨で作られたポスターだと考えられます。例えば、テレビを見るにせよ、子どもが一人で2時間以上など長時間見ていると悪影響があるが、親と一緒に内容について話しながら見ていると良い影響があるなんていうことは確認されていますよね。
ただ、子育てのスマホ利用については実態としてとても便利だという側面があります。子どもに静かに、落ち着いておいて欲しい時にスマホを短時間見せる親は相当数いるはず。スマホ利用について全面的に否定しているようにもとらえかねないので、この点がこのポスターの批判される一つのポイントとなっています。
日本小児科医会ももう少しフォローすればいいのですが、少なくとも日本小児科医会のWebページにはそういう情報は確認できません。
話は変わりまして、先日、国立青少年教育振興機構が公表した『青少年の体験活動等に関する実態調査(平成 26 年度調査)』を眺めていて、以下のグラフに目が止まりました。
※赤枠は筆者
これは世帯収入別の小学生による携帯電話・スマホ所有率へのアンケート結果です。ご覧のとおり、世帯収入200万円未満での所有率の高さが目立ちます。
この調査では、自己肯定感が高い子どもほどスマホへの熱中度が低いことが確認されています。所得が低いほど自己肯定感が低いことも他の調査では確認されていますので、恐らく、この世帯収入200万円未満の世帯の小学生はスマホ熱中度が高いんじゃないかと推測します。一方で、世帯収入1200万円以上の小学生は、保有率は高くても、熱中度はそれほど高くない可能性が考えられる。
この表を見て、世帯収入200万円未満の世帯では、スマホ抜きでの子育てが成立しにくい背景があるのではないかと思いを巡らせていました。特に、この年収層にはシングルマザーが多い。物理的にも精神的にも親が子守りをする余裕がなく、スマホを子どもに渡している可能性があるんじゃないかと思いました。親は当然として誰かが子どもを見る時間が少ない。安全を考えてスマホを渡している可能性もありそう。
自分が子どもの頃、子どもの相手をしない/できない親の家庭の子どもほどゲーム環境が整っていたことを思い出します。昨年話題になった山本さほさんの『岡崎に捧ぐ』を最近たまたま読んでいたので、自分の中では、色んなところが繋がる感じはあります。
※私にも岡崎みたいな友達はいました。その友達のおかげでゲーム好きになった。
短時間の用途に限らず、その他の選択肢が分からないためスマホでがっつり子守りをしている家庭がある所得層の世帯に多いとしたら、スマホでの子守りを一律に否定するという啓蒙だけではなく、その他の選択肢があることを示すほうが親には優しい。例えば、あのポスターに「子育てで悩んでいるときは自治体へ」という文言を付けておくとか。そういう配慮がないと、自分の子育てを否定されたという気持ちで終わってしまうことになります。
どうしようもないことをどうにかしろと言っても問題は解決しません。