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G7と財政出動 首相提案は無理がある

 今月下旬の主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で議長を務める安倍晋三首相が、会議を前に訪欧し、世界経済浮揚のためG7が財政出動で協調する必要性を、各国首脳に訴えた。イタリア、フランスとは方向が一致したが、独英の首脳は慎重な姿勢を示した模様だ。

     政府は、サミットで「機動的な財政出動」への強いメッセージを発信するため、溝を埋める外交努力を重ねるものとみられる。ただ、G7の中で国の借金が突出して重く、財政の悪化に最も慎重であるべき日本が、歳出拡大を呼びかけることを、他国はどう受け止めるだろうか。

     首相がなぜ「財政出動」を強調し始めたのか、背景を考えてみたい。

     安倍首相の経済政策、アベノミクスの「三本の矢」のうち、これまで最も注目されたのが1本目の金融緩和だ。日銀が「2年間で物価上昇率2%達成」の目標を掲げ、大規模な量的緩和を断行すれば、円安・株高となり、デフレから脱却し、日本経済は安定的な成長軌道に乗る、という筋書きだった。

     ところが、3年経過したというのに、筋書きにあった世界は実現していない。金融緩和依存は主要国共通の現象だが、限界が市場などで認識されるようになっている。これ以上の追加措置はむしろ通貨安競争などの弊害を招くといった問題意識も主要国間で共有されるようになった。

     そこで再び脚光を浴び始めたのが2本目の矢、財政出動である。これほど金融を緩和しても、民間の買い物、つまり個人消費や企業の設備投資が顕著に増えないのなら、政府の買い物である歳出で成長をけん引するしかない。そんな考えなのだろう。

     だが、健全財政へのこだわりが特に強いドイツが日本と共同歩調を取ることは考えにくい。歳出削減を熱心に進めてきたキャメロン英首相が、協調行動をとるのも困難だろう。特に、欧州連合(EU)残留の是非を問う国民投票が間近に控えている。英国の政策が介入を受けないことを、EU残留の条件としているキャメロン首相に政策の自由度が下がる合意はしづらい。

     そんな中、日本が財政出動で旗振り役を担おうとする真の動機はどこにあるのか。積極財政の推進で国際的な機運を高め、「その足を引っ張る」として、消費増税を先送りしようというのか。参院選を意識した景気刺激か。財源も気になる。日銀による追加的な国債購入をあてにしているのだとすれば、一段と財政規律が緩む恐れがある。

     将来の需要を先食いするだけで持続性に乏しく、子孫に負担を回す政策の旗を振る−−。責任ある議長国の姿とは言い難い。

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