ドイツ発の新産業革命「インダストリー4.0」の波に乗ろうとする中国企業と、動きが鈍い日本企業
ハノーファー・メッセでVRグラスを試すオバマと主催国のメルケル Kevin Lamarque-REUTERS
ドイツの産業見本市「ハノーファー・メッセ」が4月25日から29日まで開催されました。同メッセでは毎回パートナー国が指定されますが、今年はアメリカがパートナー国だったため、開催式にはオバマ大統領が駆けつけ、ドイツのメルケル首相とともに挨拶する様子がニュースでも流れました。
さて、ハノーファー・メッセは日本の新聞では「産業見本市」と形容されますが、より正確にいえば産業用機器に特化した展示会です。ハノーファー・メッセが世界的注目を集めているのは、ドイツ政府が2013年に「インダストリー4.0」、すなわち「第4の産業革命」を推進するという構想をぶち上げたことに由来します。ドイツが何やら新奇なことを始めようとしているらしいが、ハノーファー・メッセを見学すればそれが何かわかるかもしれない。そんな淡い期待を持って門外漢の私までのこのこ見に行きました。
第4の産業革命とは
私が理解したところでは、インダストリー4.0とはモノのインターネット(IoT)を活用し、製造やサービスの自動化・無人化を推進することです。重要なポイントは、個別の状況や客に応じて製品やサービスをカスタマイズするという、従来は人がやっていたことをも自動化してしまうところにあります。わかりやすい例がドイツの産業用ロボット大手Kukaが実演したCoffee4.0で、客が自分のスマホに好みのコーヒーのタイプ、砂糖やミルクの加減などを入力すると、バリスタ・ロボットが作ってくれます。
ユーザーの好みに応じたコーヒーを作ってくれるロボット Tomoo Marukawa
さて、ハノーファー・メッセでの私のもう一つの関心事は、中国企業がインダストリー4.0にどのように関わっているのかということでした。これについては期待にたがわず、中国企業はドイツ企業に次ぐ存在感を示していました。実際、メッセのウェブサイトで出展者を国籍別に検索すると、全部で5392の企業や機関が出展したなかで、地元ドイツが2340社・機関で最も多いのですが、中国はそれに次ぐ718社・機関で、今回のパートナー国であるアメリカの415社・機関を上回っています。
中国の大手企業ではファーウェイ(華為技術有限公司)が大きな展示をしていました。ドイツではスマホメーカーとしてのイメージが強いファーウェイですが、今回のメッセではドイツ企業Q-Cloudと共同で開発した、工場内の機械や空調などをIoTで結んでパソコンなどで管理したり操作することを可能にするシステムや、あちこちを走っているトラックがどのように稼働しているかを本社に伝えるシステムなどを展示し、まさにインダストリー4.0の核心を担う力があることをアピールしていました。
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