海底の「ゆっくり地震」観測 京都大グループ初成功、予測に期待
地震の揺れを感知できないほどゆっくりとプレートがずれるスロースリップ(SSE)を海底で詳細に観測することに、京都大防災研究所の伊藤喜宏准教授らが初めて成功した。海底にあるプレート境界でのSSE発生も初めて検出。津波を起こす地震の予測につながるという。米科学誌サイエンスに6日、発表した。
2014年5月~15年6月、ニュージーランド北島の東海岸沖約100キロにある「ヒクランギトラフ」周辺を観測した。同トラフは、西側のオーストラリアプレートに、東から太平洋プレートが沈み込む境界にある。トラフ底は水深約3500メートルと比較的浅い。
グループは水深500~3500メートルの15カ所に圧力計などを設置し地殻変動を調べた。14年9月の約20日間、SSEで海底が1・5~5・4センチ隆起したデータを検出。解析の結果、一部が海底のプレート境界まで及んだことを突き止めた。
震度の大きさを超える津波を引き起こす「津波地震」はプレート境界付近で発生するとされる。SSEと津波地震の震源域が一部重なっていることから、発生予測の手法確立に期待できる。
また、同トラフ近くの海底にある山の周辺では、プレートのすべりが抑制されることも分かった。地震と海山の関わりを考える上で貴重な発見という。
伊藤准教授は「南海トラフ周辺でも、津波地震が発生する可能性はある。SSEを検出することで、予測に結びつけられるかもしれない」と話す。
【 2016年05月06日 13時10分 】