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【歴史戦 南京が顕彰した男(下)】朝日記事「万人坑」はなかった…「中国の主張を代弁しただけ」 虚偽拡大 慰安婦問題と同根

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朝日記事「万人坑」はなかった…「中国の主張を代弁しただけ」 虚偽拡大 慰安婦問題と同根

歴史戦 南京が顕彰した男(下)更新

 「私はまだ、ナチがやったアウシュビッツ殺人工場の現場を見たことはない。だからこの万人坑のような恐ろしい光景は、生涯で初めてだった」

 白骨死体の写真も朝日の紙面に掲載された。

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 「万人坑」に強い疑問を抱いた田辺は調査を始めた。旧撫順炭坑、旧南満鉱業の関係者らにアンケートを送付。回答した約60人と面会するなどしたところ、全調査対象者が次のように答えた。

 「万人坑を見たことがない」「万人坑という言葉も知らなかった」

 田辺は平成2年、雑誌「正論」(8月号)で「万人坑はなかった」とする調査結果を発表した。これに本多は「少数のアンケートで断定するのはおかしい」と反論した。

 双方の主張の食い違いを受け、旧撫順炭坑関係者らでつくる東京撫順会は約1000人の全会員にアンケートを送付した。469人から得た回答を精査し、同会は「強制労働による犠牲者の“人捨て場”としての万人坑がなかったことははっきりした」と結論づけた。

 旧南満鉱業の幹部らは連載当時に朝日に「万人坑は事実無根だ」と記事取り消しを求めていた。だが、「門前払い」だったという。

 本多にも撫順炭坑で電気技師をしていた久野健太郎が手紙を送って抗議した。本多は昭和61年3月、久野にこんな返信を寄せた。

 「私は中国側の言うのをそのまま代弁しただけですから、抗議をするのであれば、中国側に直接やっていただけませんでしょうか」

 連載当時は多くの人が存命だったはずだが、本多や朝日が日本側関係者を取材した形跡は見当たらない。

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 田辺の問題提起をきっかけに「万人坑」は改めて関心を集める。元朝日新聞記者、本多勝一による「中国の旅」連載から約20年後のことだった。中国人労働者を使い捨て、死なせたとの汚名を着せられた当時の関係者らも再び動き出した。

 平成3年4月、東京撫順会は朝日新聞に記事の取り消しを申し入れた。

 「万人坑は作り話、あるいは著しく事実と相違したものを、事実であるかのように記述してある」