今さら聞けないオートマの種類「DCT・CVT・AMTって何ですか?」
ATの種類は多いが目指すところは皆同じ
いまや日本で売られている新車の99%は2ペダルのオートマ車という状況になっているが、オートマ(正しくはオートマチックトランスミッション)は大きく4種類にわけられる。
■ステップAT
古くから使われているのがステップATと呼ばれるもので、エンジンとトランスミッションをつなぐ部分にトルクコンバーターといった流体によって力を伝達する装置を使うことがほとんどといえる状況だ。トルクコンバーター自体にも変速作用があり、1970年代にはホンダが、トルクコンバーター自体が有する変速機能を利用して部分的な無段変速機能を実装した「スターレンジを持つホンダマチック」を生み出している。また、ホンダのステップATは長らく平行軸式といってMT(マニュアルトランスミッション)に似た、変速段ごとに独立したギアセットを持つ歯車となっていたが、それ以外のほとんどのメーカーは、遊星歯車機構(プラネタリーギア)を複数組み合わせることで変速段を生み出している。
■CVT
国産モデルを中心に増えてきたのが、CVT(連続可変トランスミッション・Continuously Variable Transmission)だ。基本的な構造は、向かい合った2つの可変プーリーをベルトやチェーンでつなぎ、エンジンの力を受ける側とタイヤに伝える側のプーリーの幅を変えることで、変速比を無断階に連続可変する。ただし、その構造から変速比を変えていくときには、ベルトとプーリーが滑っている必要があり、伝達効率では他のトランスミッションに対して劣ってしまう。また、変速比を大きくとるにはプーリー経を拡大する必要があり、変速比幅を広げるのが難しい。一方で、シフトショックがなくスムースな走りが可能になることや、とくに小排気量の効率的なゾーンが狭いエンジンにおいて、高効率な変速を可能にしやすいというメリットを持つ。エンジンの動力を伝達するクラッチ部分にはステップAT同様、トルクコンバーターが使われていることが多い。
■DCT
DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)は、エンジンからの動力伝達装置に2組の摩擦クラッチを使い、トランスミッション内は奇数・偶数それぞれに独立したギアセットを持っているのが特徴。摩擦クラッチによって、奇数弾と偶数段のどちらにつなぐかをコントロールするため、あらかじめギアはつないでおいた状態にでき、変速スピードが速いというメリットがある。欠点としてはトルクコンバーターが持つクリープ現象がないため微低速での移動時にスムースを欠くというネガもある。また、このギアセットの構造からMTの中身を構造が同じという誤解も招いているが、奇数・偶数のギアセットごとに独立した軸を持っているため、MTにデュアルクラッチをつけたからといってDCTにはならない。
■AMT/RMT
MTの構造そのままに、シフトレバーとクラッチ操作をアクチュエーターなどの機械任せにした2ペダルはAMT(オートマチックマニュアルトランスミッション)、RMT(ロボタイズマニュアルトランスミッション)などと呼ばれている。構造的にシンプルかつ軽量で、伝達効率に優れていることから、小型車から大型トラックまで幅広く使われている技術で、じつは歴史が長い。
こうして複数の方式が使われているのは、それぞれに利点があるからに他ならない。あくまで、現時点での技術レベルとATに求められる機能で順位付けをすると次のようなイメージになる。
●伝達効率:AMT≒DCT>ステップAT>CVT
●変速スピード:DCT>AMT≒ステップAT
※CVTにもマニュアルモードはあるが、基本的には変速スピードを競うものではない
●ショックの少なさ:CVT>ステップAT>DCT>AMT
●変速比幅の広さ:ステップAT>DCT>CVT>AMT
●ユニットの軽さ:AMT>ステップAT>CVT>DCT
このランキングにおけるAMTの位置づけは、ほぼMTに通じるが、それを含めても一長一短。そして、現在のトランスミッションには、ドライバビリティと燃費性能の両立が求められる。そのため、変速比幅(ローとハイのギア比の幅)を広く、また細かく区切る(多段化)ようになっている。さらに車両重量を軽くするためのユニット軽量化や、トランスミッションの基本となる伝達効率の高さなども重要だ。
つまり、トランスミッションには様々な構造があるが、いずれも目指しているところは同じ。アプローチとして、車格や価格に応じた判断がなされているというわけだ。さらに、副変速機ギアを持つCVTやDCTにトルクコンバーターを内蔵したシステムが登場しているように、トランスミッションのハイブリッド化も進んでいる。
(文:山本晋也)