高齢者の腰痛には様々な要因がありますが、骨が潰れる圧迫骨折は特に注意が必要です。直後は急性の痛みがありますが、骨が固まると痛みが消えることもあり、気付かずにいて、腰椎の圧迫骨折が進み、背骨全体が変形してしまうことがよくあるからです。本人はもちろん、家族など周囲の人も、日常の姿勢などに注意しましょう。
高齢者に多い腰椎の圧迫骨折の原因や症状、治療についてお伝えします。
圧迫骨折と骨粗しょう症
加齢により、骨の中のミネラル量が減り、骨がもろくなった状態である骨粗しょう症が、ほとんどの場合圧迫骨折の原因です。骨粗しょう症で弱くなった腰椎に負担がかかると、骨が押しつぶされ、腰痛などの症状が現れます。ちょっと尻もちをついたり、重いものを持ったりしただけでも起こるので、注意が必要です。
治療
圧迫骨折は、骨全体がもろくなっているため、一度起こすと、再発しやすくなるので、初期の段階で発見し、しっかり治療することが大切です。特に高齢者は骨折に気づかにいる事も多いので、周りの人が姿勢などを注意することも大事。
改善には、圧迫骨折の主な原因である骨粗しょう症と腰痛、それぞれの治療を行ないます。
骨粗しょう症を治す
もともとの原因の骨粗しょう症を、薬物療法、食事、運動で骨をできるだけ強くして、圧迫骨折の再発を予防することが重要です。
【薬物療法】
- ビスホスホネート製剤: 骨の吸収を抑える
- 副甲状腺ホルモン薬: 骨の形成を促す
- 活性型ビタミンD3製剤: カルシウムを骨に取り込むときに必要
などを用います。
骨は毎日形成と吸収(破壊)を繰り返しているので、吸収が形成よりも過剰になると骨が弱くなります。薬物療法で骨の強度を高めます。
【食物療法】
食事療法で骨の材料であるカルシウムや、ビタミンDの含まれている食品を十分摂取することも大切です。
【運動】
身体を動かすと骨に負担がかかり、それが骨の形成を促進し、筋肉が鍛えられて骨折のきっかけになる転倒の予防に繋がります。週に2~3回続けられる運動が望ましい。オススメはウオーキングです。
前傾姿勢にならないように、上体を起こし、顎を引いて歩くと腰への負担が軽くなります。
杖やシルバーカーは上体を起こして歩く手助けになりますが、杖の長さや持ち手の高さなどにも注意しましょう。
長さ: 身体の横に手を垂らした時の、手首の高さ
持ち手: 持った時に肘が軽く曲がる高さ
シルバーカーに体重をかけ過ぎると転倒の危険があるので注意が必要です。
腰痛治療
骨粗しょう症の治療と併行しながら、腰痛に対する治療も行ないます。保存療法、手術療法があります。保存療法は薬物療法が中心で、急な強い痛みをやわらげます。装具の装着、ギブスなども用います。装具は医療機関で処方されるものを利用するのが良いです。
- 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)などで痛みを和らげる
- カルシトニン製剤の注射で鎮痛作用(骨粗しょう症の薬)骨の吸収を抑える
保存療法で痛みが収まったら、ウオーキングなどの運動を行ないます。
手術
保存療法では改善できず、日常生活に支障が出ている場合は、手術を検討します。経皮的椎体形成術は、潰れた骨の部分に骨セメントを注入し、腰椎を安定させる手術です。30分~1時間程度で手術は終わり、数日の入院が必要です。退院後はすぐに日常生活に戻れます。
骨粗しょう症が重い方は、他の部位に圧迫骨折が起こる可能性もあります。術後も、骨粗しょう症の治療を継続することが重要。
圧迫骨折の原因と症状
圧迫骨折は、骨が潰れるので強い痛みが起きるのですが、やがて骨が固まってしまうと、多くの場合、痛みが消えます。しかし、潰れた形のまま骨が固まるので、痛みが消えても、背中全体が曲がってしまうのです。
背骨の変形
おなか側の骨が潰れることが多く、前かがみの状態で背中が曲がることになります。その結果、歩行など日常動作で腰や背なかに大きな負担がかかり、慢性的な腰痛が現れます。
- 前かがみになり、その姿勢がつらい
- 仰向けに寝ることができない
- 身長が急に3cm以上縮んだ
などは、圧迫骨折の疑いで現れる症状です。早めに医療機関で検査を受けることをおすすめします。
まとめ
高齢者の圧迫骨折は、骨が固まってしまうと痛みが消え、気づかないこともあるので家族など、周囲の注意が必要です。腰痛の治療だけでなく、骨粗しょう症の治療も行うことが腰痛の改善、再発や予防につながります。閉経前後の女性も骨粗しょう症になりやすいので、圧迫骨折に気を付けたいですね。
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