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例えば、あなたが戦略コンサルティングカンパニーに入社し、とあるメーカーの赤字経営を改善するプロジェクトの担当になったとする。
あなたは、市場分析ならび一次情報調査を実施し、赤字の原因が、市場規模に見合わないレベルまで肥大化した半導体部門にあることが判明した。
あなたは社長に
「貴社は半導体部門に多くの研究開発費を注力しているが、競合が多く、技術の改新スパンが非常に短い半導体市場は、会社の生存をかけるには危険すぎるマーケットだ。また、半導体部門と親和性のある他部門も存在しない。しかし貴社の半導体部門が持つ技術には希少性がある。部門を丸ごと買い取ってくれる会社を探すのがよいでしょう。」
そう提言した。
社長は、半導体部門を売りに出すことを決め、あなたの尽力もあり、部門は無事、ほかの会社に売りに出された。
さて、赤字を垂れ流す部門は消えた。
会社は多額のお金を手に入れることができた。
数日後、社長はあなたにこう相談した。
「さて、つぎはどの部門を売りに出せばよいのかね?」
わたしが伝えたいことは、
「1番目の問題を解決すると、2番目の問題が浮上する」ということだ。
問題社員をクビにすると、次の問題社員が現れるように。
わずらわしい人間関係をすべて断ち切ると、孤独に悩むように。
安定を確保すると、刺激がほしくなるように。
問題の解決と、次の問題の発生は表裏一体なのだ。
問題解決のパラドックスは次のような前提をもとにしている。
(前提1) 最も深刻な問題を解決すると、2番目に深刻な問題が最も深刻な問題に昇格する。
(前提2) 最も深刻な問題は解決しなければならない。
2つの前提により、次の結論が導ける。
(結論) 最も深刻な問題は、無くならない。
問題は解決できるが、問題そのものをなくすことはできない。
我々は「すべての問題を解決する」という幻想をあきらめなければいけない。
このことをわかっていない完璧主義がウツになる。
さて、あなたが問題と向き合うにあたって必要なこと。
それは、「その問題が、どれだけ深刻な問題であるか」だ。
問題は解決できない。しかし、問題を解決すると、その問題がもたらす悪影響をなくすことはできる。問題解決という行為は、次の問題を招く代わりに、「問題の深刻さ」の種類を書き換えることができる。
問題解決に優先順位をつける必要性が叫ばれているのは、問題を解決するためではない。「なぜ、ほかの問題を招くとわかっていても、その問題を解決しなければいけないのか」を考えろ、ということだ。
問題の深刻さは次3点で判断すればよい
上から順に重要な指標である。
- 緊急度
- 問題の影響範囲
- 己の信条
これら3項目を10点満点で評価し、
それぞれを掛けてやればよい。
例)アイスクリームが食べたい
緊急度:4
問題の影響範囲:1
己の信条:54(緊急度)×1(問題の影響範囲)×5(己の信条)=20
問題解決のアプローチに感情は必ずついてくる。どれだけしょうもない悩みでも、その悩みがあなたの大きなストレスになることもある。
この計算式の良さは、自分の価値観、感情を含め、物事の深刻さを定量化できるところにある。「7つの習慣」で紹介されているタイムマネジメント術を私なりに改良したものであり、問題の分析結果に納得感と明確さを得られるため気に入っている。ぜひ活用してほしい。
問題はなくならない。しかし、アドラーが「すべての悩みは人間関係である」と言い切るように、我々は自身の人生から「問題を解く行為」を切り離せない。人間は悩み、問題を抱えることで、自我を育て、維持する生き物だ。我々は、泳ぎ続けないと死んでしまうマグロを皮肉れない。
最も重要な決定とは、
何をするかではなく、
何をしないかを決めることだ。スティーブ・ジョブズ