【ベルリン=山口啓一】欧州歴訪中の安倍晋三首相は4日午後(日本時間5日未明)、ドイツのメルケル首相とベルリン郊外で会談した。世界経済への対応に関し、安倍首相は機動的な財政出動の必要性を強調。5月末の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向けて議論を継続することで一致した。両首脳は為替相場の安定が重要との認識も共有した。
会談は夕食会も合わせ約2時間40分に及んだ。安倍首相は世界経済について、原油価格の下落やテロ、難民問題などによる新興国経済への影響に触れ「予見しがたいリスクを抱えている」と指摘。危機回避に向け「G7(主要7カ国)には機動的な財政出動が求められている。サミットで一段と強いメッセージを出したい」と訴えた。
メルケル氏は財政出動について「私は決してフロントランナーではないが、構造改革、金融政策に加えて財政出動の3つを一緒にやっていかなければならない」と言及。同時に、デジタル分野などで民間投資増のための環境整備が必要だと強調した。安倍首相も「構造改革と財政出動のバランスを取ることが非常に重要だ」と述べた。
財政出動を巡っては、ドイツに先立ち会談したイタリア、フランス両国の首脳と「必要だ」との認識で一致した。ただ財政規律を重視するメルケル氏は歳出拡大に慎重な姿勢を崩しておらず、サミットで取りまとめるG7の首脳宣言にどこまで政策協調を反映できるかが今後の焦点になる。
安倍首相は難民問題を巡るドイツの貢献に敬意を示し、サミットで議論する考えを表明。メルケル氏は「難民の増加で(国内の)消費が伸びている面もある。需要が結構大きい」と説明した。
日独関係では安全保障分野での協力加速を確認。外務・防衛当局者による協議を6月に開くほか、サイバー攻撃への対処で連携する事務レベル協議の年内立ち上げでも一致した。安倍首相はガウク独大統領を日本に招待する意向も示した。
メルケル氏は来年春にドイツで開く欧州最大のIT(情報技術)見本市「CeBIT」に安倍首相を招待。安倍首相は「事情が許せばぜひ訪問したい」と応じた。
日米欧が経済制裁を続けるロシアへの対応を巡っても協議した。ウクライナやシリアの問題について「ロシアの建設的な関与が不可欠」との認識を共有。ロシアとの対話を継続する重要性を確認した。
メルケル氏との会談は2015年11月以来。ドイツが迎賓館として使用するベルリン郊外のメーゼベルク城で開いた。日本の首相が同所に招待されたのは初めて。